愛くるしいキャラクターたちとの触れ合いに、華やかなショーやパレード。カラフルな煌めきが散りばめられた会場の世界観——。夢と感動に溢れたテーマパークの体験は、日常から離れて日々のストレスを忘れさせてくれる、特別なひととき。中でもサンリオピューロランドでは、通常のパレードやアトラクションのみならず、音楽フェスやDJイベント、お笑いとのコラボレーションなどジャンルの垣根を越えたイベント企画が行われ、独自の広がりを見せている。そんなピューロランドの楽しみ方を、サンリオの世界に魅せられ、毎月のように通い詰めているという芸人の平井“ファラオ”光さんがご案内。「大人だからこそ魅了される、“優しさ”や“愛”を感じる場所」と話す、その心は?
(この記事は2023年7月20日(木)に発売された『XD MAGAZINE VOL.07』より転載しています)
サンリオピューロランド
ハローキティをはじめ、たくさんのサンリオのキャラクターに触れ合える屋内型テーマパーク。サンリオの世界観が表現されたさまざまなアトラクションやショーを楽しめる。
住所:東京都多摩市落合1-31 ※営業時間、休館日は公式ホームページにて
優しさに満ちたピューロランドに癒される
——「芸能界一サンリオに詳しい」とされるファラオさんですが、もともとはハードロックやメタルといった音楽ジャンルがお好きだったり、古代エジプトに詳しかったり、どちらかというと「男の子っぽい」趣味をお持ちだったんですよね。
平井“ファラオ”光「そうですね。でも、サンリオの楽しみ方も、他の趣味の場合とほとんど同じなんですよ。知識欲がとにかく強くて、音楽にしても歴史にしても、さかのぼって知りたくなる。同じようにサンリオでも“今”だけじゃなくて、歴史をたどってしまうんです。キャラクターが生まれた背景はもちろん、サンリオという企業についてもたくさん知りたくて、昔の資料とかも片っ端から集めてしまっています。凝り性なんですよね」
——それだけ深堀りしているファラオさんにピューロランドの楽しみ方を聞けるとあって、今日は楽しみです。
平井“ファラオ”光「芸人という言葉を扱って人に伝える職業をしていることもあり、せっかく自分が好きになったものは、その魅力をひとりでも多くの人に知ってほしくなる性分なんです。だから今回も精いっぱいお伝えさせていただきます」
——ありがとうございます。ちなみにファラオさんはピューロランドにどのくらいの頻度で行かれるのでしょうか。
平井“ファラオ”光「昔は月3回くらい行ってましたが、今は忙しくて少し減りましたね。それでも最低、月に一度は行きます」
——繰り返し遊びに行きたくなる魅力があるんですね。
平井“ファラオ”光「そうですね。シーズンごとにイベントが変わるので、それはサンリオファンとしては必ず観させていただきますし、好きなイベントは繰り返し観たくなります。あとはやっぱりキャラクターに会いに行きたくなるんですよね。ピューロランドではいろんなキャラクターと触れ合ったり、写真撮影ができる『グリーティング』というイベントがあって、キャラクターが日替わりで登場するんです。だから自分のお気に入りのキャラクターが登場する日は行きたくなります。でも、何気なく行くことも多いですよ。年間パスポートを持っているので、気が向いたらふらっと行ってしまう。ピューロランドの空気を感じるだけで満足なんです」
——ピューロランドの空気というと?
平井“ファラオ”光「サンリオの企業理念である『みんななかよく』という空気が、ピューロランドには満ちているんです。まずスタッフさんの対応がすごく丁寧で、めちゃくちゃ優しい。それに感化されて自分も優しくなれる気がするんですよ。実際、仕事の現場やプライベートでも、以前より人から話しかけてもらえることが増えたんです」
——ファラオさん自身も優しくなり、とっつきやすくなったということでしょうか。
平井“ファラオ”光「そうだと思います。以前はこの風貌ですし、癖のある芸風的にも警戒心を持たれやすいタイプだったんです。おまけにぼく自身、人見知りなのもあって、人と打ち解けるのが苦手でした。ピューロランドでスタッフさんの優しさに触れたり、グリーティングでキャラクターのぬくもりを知って、人との間に無意識に張っていたバリアが薄れたのかもしれません。あと、いろんな人に興味を持ってもらうために、サンリオのキャラクターグッズをファッションに取り入れているんですが、それをとっかかりに話しかけてくれる人も多いです」
——サンリオにハマって、良いことづくめですね! 他にもピューロランドの魅力があれば教えてください。
平井“ファラオ”光「休憩スペースが充実してるのはありがたいですね。ぼくは39歳なんですが、この年齢になると体力も落ちるので助かるんですよ(笑)。それに屋内型テーマパークなので、季節を問わず快適なのも嬉しい。なので、ピューロランドにふらっと行ったときはメイン広場の『知恵の木』周辺のベンチに座り、遠くから聞こえる音をBGMに、ゆっくりコーヒーを飲むんです。遠くの祭囃子を聞くような風情があるんですよ」
——大人ならではの楽しみ方ですね。ファラオさんはピューロランド初心者を案内する機会もあるかと思うのですが、初めて遊びに行く方はどんな心構えで行けばいいですか?
平井“ファラオ”光「まず、ピューロランドはいわゆる『ザ・遊園地』とは違うというのは知ってほしいです。絶叫マシンや観覧車はないので、分かりやすいスリルやスペクタクルを味わう場所ではない。では何を楽しむかといえば、『キャラクターとの触れ合い』です! キャラクターとお話したり写真を撮ったり、触れ合ったりできるグリーティングは毎日開催されているので、ピューロランドに行ってみたいなと思ったら、まず自分の好きなキャラクターを見つけてみてください。そのキャラクターがグリーティングしている日を狙って行けば、絶対楽しいですよ」
——“推し”に会いに行く感覚が味わえるんですね。今日のロケでは「レディキティハウス」でキティちゃんに会いましたが、今日はファラオさんが主役なのに、ぼくにまで手を振ってくれて嬉しかったです。
平井“ファラオ”光「生で会うキティちゃん、いいでしょう……! 他のキャラクターのグリーティングは日替わりですが、キティちゃんは『レディキティハウス』に行けばいつでも会えるんです。キティちゃんはあれだけ世界で活躍していて、知らない人はいない存在ですよね。それなのにいつでも会える身近な存在でもあり続けるのがすごい。ここに来てはいつもそのありがたみを噛みしめていますね。あそこまで有名になっても、鼻にかけないスタンスを尊敬してます」
キャラクターのボケっぷりに惹かれた
——そもそも、ファラオさんがサンリオにハマったきっかけはなんだったのでしょうか?
平井“ファラオ”光「きっかけは、後輩芸人のカズレーザー(メイプル超合金)に『ファラオさんがサンリオ好きだったら、ギャップがあって面白そう』と言われたことです。2018年、34歳のときですね。確かにおじさんでこの見た目の私がサンリオ好きだったら面白いかもなという下心もあって、なんとなくサンリオのホームページを覗いてみたんです。いろいろキャラクターを見ているうちに、その見た目のかわいさに惹かれて、気づいた頃には引き返せなくなっていました」
——最初はシンプルに見た目のかわいさに惹かれたんですね。
平井“ファラオ”光「そうですね。最初にガツンときた『バニー&マッティ』というキャラクターのせいで、ガラケーからスマートフォンに替えたんですよ」
——なぜスマートフォンに?
平井“ファラオ”光「バニー&マッティのLINEスタンプが欲しくなったんです。1974年デビューのキティちゃんより先に登場したキャラクターだったので、グッズが販売されていなかったんです。そんな中、唯一あったのがLINEスタンプで。それまでは『俺は最新の科学技術には染まらねぇ』と頑なにガラケーにこだわってましたが、LINEをインストールするために、スマホに替えたんです」
——長年の頑なさすら変えてしまう。サンリオマジックですね。
平井“ファラオ”光「今はもう『スマホって便利だな~』と思っています(笑)。あと、サンリオのキャラクターの魅力は、ユニークなキャラクター設定にもあって。例えば『ビッグチャレンジ』というワニのキャラクターがいるんですが、おとぼけ顔のゆるいタッチの絵柄なのに、すごいハードル高めの名付けをされている可笑しみがあって。しかもプロフィールには『笑っているように見えるね!』と書いてある。ということは、笑ってない可能性もあるわけですよ。芸人の琴線に触れるフックがたくさんある。サンリオのキャラクターは、そういう“ツッコミしろ”が多いんです。それが愛嬌でありかわいげになっている」
——ボケっぷりが見事なんですね。
平井“ファラオ”光「30〜40年前に生まれたキャラクターになると、当時制作に携わった人たちが、どこまで本気で設定したのかも分からなくて、面白みが増してくるんですよ。天然なのか、ツッコませるために、あえてボケたのか分からない。受け手にいろいろな想像をさせるのは、サンリオのキャラクターの大きな魅力ですね」
——ちなみに今いちばん好きなキャラクターはクロミさんとのことですが、なぜハマったんですか?
平井“ファラオ”光「クロミさんは他のキャラクターと比べると、明らかに異端なんですよ。他のキャラクターがパステルカラーで“ザ・カワイイ”を打ち出す一方で、クロミさんは黒を基調にしたカラーリングで、ドクロまであしらっている。そんなサンリオのはぐれ者感に惹かれて、彼女のデビュー作であるアニメ『おねがいマイメロディ』(2005年)を観たんです。それでクロミさんの全てを大好きになりましたね。クロミさんはマイメロディの自称“ライバル”なので、彼女に対してちょっかいやいたずらを仕掛けるんです。一見、サンリオの企業理念である『みんななかよく』に反するのかと思いきや、やっぱり根は優しい。ツンデレな二面性に惹かれましたね」
——そんな個性が光るキャラクターたちに会えるのが、ピューロランドなんですね。
平井“ファラオ”光「たまらない空間ですよ。サンリオのキャラクターは、それぞれ個性豊かな性格なので、実際に触れ合ってコミュニケーションを取ると癒やされるんです」
キャラクターとの触れ合いで無償の愛に気づく
——ピューロランドで会えるキャラクターがたくさんいる中で、ファラオさんが初めてグリーティングで出会ったのはどなたでしたか?
平井“ファラオ”光「シナモロールのお友達『エスプレッソ』でした。彼のことは何も知らず、とりあえずグリーティングの列に並んだのですが、当時のぼくはひどい人見知りで……。いざ、キャラクターを前にすると、緊張して動けなくなってしまったんです。そうしたらエスプレッソの方から走り寄って、ハグしてくれた。あの瞬間、ぼくの心の頑な部分が決壊しました。『これが無償の愛か』と気づかされましたね」
——素敵な思い出ですね……!
平井“ファラオ”光「ここ数年、コロナ禍でハグができなかったんですが、5月から復活したんですよ! 要注意キャラクターはマイメロディですね。彼女はめちゃくちゃ彼女感を出してくる。『俺ら付き合ってたっけ?』って勘違いするほど。普段クロミさん推しのぼくでも、グリーティングのときはメロディちゃんのピンクの魔力にやられてます」
——推しであるクロミさんのグリーティングはどうですか?
平井“ファラオ”光「ツンデレキャラなので、それがたまらないんですよ。例えば、メロディちゃんのぬいぐるみを持って会いに行くと、それを奪い取って端っこに置いて『アタイだけを見て!』と訴えてくる。そのいじらしさが、かわいいです。グリーティングにはキャラクターそれぞれの性格が出てくるので、推しキャラクターを見つけてから会いに行くと断然楽しいはず。あと、気に入ったグッズは惜しみなく買ってほしいですね。サンリオファンにとって、グッズ購入は筋トレですから」
——ストイックですね……。
平井“ファラオ”光「もちろん無理に買う必要はないですよ。でも、気になったグッズはためらわずに買ってほしい。ちゃんとお金を払うことで愛は増していきますから……」
——なるほど。今日もファラオさんは胸元にキャラクターのピンバッジを付けていて素敵です。
平井“ファラオ”光「ありがとうございます。さりげない形でも、ファッションに取り入れることができると伝えたくて実践しています。ピューロランドには全身キャラクターグッズを纏った方もたくさんいて素敵ですよね。音楽のライブやフェスに行って、バンドTシャツを着るような感覚でファッションでも楽しんでほしいですね」
エンターテイナーとして憧れるステージ
——ファラオさんがサンリオキャラクターとピューロランドにぞっこんなことが、とても伝わりました。一方で、読者の中にはまだそこまでキャラクターへの興味にたどり着けない方もいるように思います。そういった初心者の方々でも楽しめるプランはありますか?
平井“ファラオ”光「個人的には6月から約3年ぶりに再開された『Miracle Gift Parade』を観てほしいですね。自分自身、サンリオに興味を持った初めの頃にこのショーを見て、ピューロランドの凄さを知りました……! キャッチーな楽曲やアクロバティックなダンス、ドラマチックなストーリーなど、総合的なショーとしてのレベルが非常に高く、何よりハローキティという全国民が知っている伝説的なキャラクターの、その凄さの理由を垣間見れるショーです。あとはやっぱり、ピューロランドはどこを切り取っても写真映えするスポットばかりなので、写真を撮ったり、サンリオの世界観を体感しに行くだけでも楽しい。そういった観光地的な楽しみ方もあると思います」
——確かに、館内にはたくさんのフォトスポットがありますもんね。おすすめされたパレードはもちろん、ピューロランドではミュージシャンやアイドル、お笑いなどさまざまなジャンルの方々とのコラボレーションイベントも頻繁に行われていて、あらゆる層の方が楽しめる間口の広さも魅力に感じましたfig.1。「みんななかよく」という理念が、そうした部分にも表れているのかなと。
平井“ファラオ”光「そうですね。『Miracle Gift Parade』のテーマも、『かわいい』『なかよく』『思いやり』ですから。その精神性は、どのショーやイベントにも、通じているのだと思います」
——ファラオさん自身も2019年に芸人の生田いくさんや、俳優の増本健一さんとともに「芸能サンリオ部」としてイベントを開催されていました。演者として出演されてみて、いかがでしたか?
平井“ファラオ”光「あのときはお笑いはもちろん、お芝居や歌、ダンスまでやり、ピューロランドに出ても恥ずかしくないようなエンターテインメントをつくり上げようと頑張りましたね。何より自分たちが推すキャラクターたちと共演できたのは、かけがえのない体験でした」
——芸能サンリオ部がイベントを開催したのは「ディスカバリーシアター」でしたが、今日の撮影場所として希望されたのは「フェアリーランドシアター」でした。なぜここに来たかったんですか?
平井“ファラオ”光「エンタメに携わる者の端くれとして、個人的に『フェアリーランドシアター』には憧れを抱いてるんです。あそこに立つと、舞台人の箔がつく。そんなステージだと思います」
——森の奥にある劇場のようで、装飾も凝っていました。
平井“ファラオ”光「そうですね。ステージに大きな花があって、あそこからキャストが出てきたり、中央の木が喋ったり、丘の上から登場できたり、いろんな仕掛けがある。客席の間取りも独特で、舞台人としてはイマジネーションが駆り立てられて、血が騒ぐシアターですね。今日は撮影でステージに上る階段を一段上らせていただきましたが、それだけでも自分にとっては特別な瞬間でした」
——撮影中、少し緊張されている様子でしたが、そんな思いがあったんですね! ちなみに観客としてはピューロランドのショーはいかがですか。
平井“ファラオ”光「ひたすら心が洗われる体験ですね。ショーを観ていると、かわいらしいキャラクターが何かを一生懸命やっているその姿に毎回涙ぐんでしまうんです。子どもの学芸会を観る親の気持ちに近いのかもしれません。日常生活っていろんなしがらみがあって、息苦しいじゃないですか。だからこそ、キャラクターたちが力を合わせてひたむきに頑張るショーを観ると『世界がこんなふうに幸せになればいいのに』と願うと同時に、癒やされています」
——その場限りの楽しさで終わらず、心が洗われて日常に帰っていける空間なんですね。同時に、サンリオの企業理念「みんななかよく」を体感できる。
平井“ファラオ”光「やっぱりサンリオファンは『みんななかよく』という理念にリスペクトを持って行動してる人が多いと思います。サンリオとピューロランドが掲げる理念を体感して、それをファンも体現する。それってエンタメの理想ですよね。『みんななかよく』という願いを、発信側と受け手側で共有して、その価値観を広げていく。だからこそ、いろんなジャンルのエンタメも受け入れてコラボしていくし、お客さんも素直に楽しめるんだと思います。ぼくもエンタメの末席を汚す者として、ピューロランドには尊敬しかありません」
取材・文/安里和哲 写真/伊藤明日香
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