スターバックスならではのぬくもりのある体験は、デジタルにおいても大切にしていきたいー。
スターバックス コーヒー ジャパンとLINEは、デジタル領域におけるイノベーションの加速化を目的に包括的な業務提携を発表した。
冒頭の言葉は、スターバックス コーヒー ジャパン代表の水口氏が記者会見の登壇時に語ったものだ。LINEとの提携によりどのようなデジタル体験を想い描くのか。
デジタルはなくてはならないもの
「人々の心を豊かで活力あるものにするために—」これはスターバックスが銀座に日本1号店をオープンしてから、自分たちの存在意義として掲げているミッションだ。これは国内で1,415店舗、1週間の来店客数約500万人の規模になっても、23年間全く変わっていないものだという。
「来店したお客様が、ちょっとほっとして、ちょっと楽しくなって、ちょっと元気になってお店を出ること。」これを目指すことが、スターバックスのベースとなっており、この思想はデジタルにおいても例外ではない。
「これまでは商品・パートナー・店舗の体験の軸としてきたが、ここ5年でデジタルの体験を楽しむ時代になり、デジタルもなくてはならないものになった。」と水口氏は、デジタルも体験を構築する上で、重要な要素になっていると語る。
どのようなお客様とのつながりを作っていけるのかが重要
テクノロジーの導入により、利便性は増す。しかし、それによって“らしさ”が損なわれてしまうことも少なくない。
「デジタルのスターバックス体験を提供する中で、我々が大切にしてきたことが1つある。それは、スターバックスならではのぬくもりのあるデジタル体験を常に念頭におくこと。」(水口氏)
利便性を向上させるだけでなく、どうしたらワクワクするような体験を提供できるのか、どのような関係性を築けるのか、これをセットにして考えるのがスターバックスのこだわりだ。LINEとの提携は、これを両立できるという見通しから実現した。
1to1コミュニケーションを実現するためのLINE
今回の提携によって新たに3つの取り組みを開始する。「LINE スターバックス カード」の開始、「スターバックス公式アカウント」の開設、「LINE Pay」の全店対応の実施だ。
ここでのポイントは、間口を広げることと、1to1コミュニケーションの実現となる。
まず1つ目が、「LINE スターバックス カード」の開始だ。これは、LINE上から数タップで「スターバックス カード」を作れるようにするもので、このカードはスターバック店舗で“LINE上で表示して”利用できるプリペイドカードとなる。
企業カードとしては初めて「LINE Pay」からも入金できるようにしており、入金する際にはLINEポイントも付与される。スターバックスが他社のプラットフォームで決済機能を提供するのは世界でも初めてだという。2017年9月に開始したロイヤルティプログラム「STARBUCKS REWARDS」も利用できる。
スターバックスは自社の専用アプリを利用してもらうことは、ある程度の敷居があることを認識しており、月間ユーザーが7900万にいるLINEに間口を広げることで、 新たな顧客とのつながりを生み出せると見ている。
2つ目は「スターバックス公式アカウント」の開設だ。
今回、毎週来店する500万人以上の顧客に向けて一人ひとりにあった情報を届けるための選択肢の拡大として、「LINE公式アカウント」を開設した。
まずはおすすめ商品の情報を届けることからスタートし、今後は一人ひとりに合わせたメニューの提案や限定商品の購入や限定イベントへの招待など、1to1のコミュニケーションを実現することで、ブランドとのつながりを深めることを狙う。
アカウント開設とともに、お気に入りの一杯をさがせる「カスタマイズ」機能や「今週のおすすめ」機能を提供している。
3つ目は2018年末から一部店舗で導入を開始していた「LINE Pay」決済を段階的に全店舗への導入だ。これまでは、東京都内と福岡市内の一部店舗でテスト的に運用してきたが、これを全店舗に広げる。店舗の事情によ一部り対応できない可能性もあるとのことだが、原則的に全店舗を想定しているとのことだ。すでに3分の1以上がキャッシュレス決済だが、これをさらに進める。
最後に今年度の上期にもモバイルオーダーペイに対応する計画があることも明らかにしている。
今回のスターバックスの発表からは、デジタルツールの導入は目的ではなく、あくまで手段として考えられていることが伝わってくる。顧客に提供したい体験があって、それを実現するために、最適なツールを選択する、その順番を間違ってしまうと、体験を損ねてしまいかねない。
今後もスターバックスが目指すデジタル体験は注目だ。