XDを運営するプレイドが、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2020年2月3日から6日の放送では、愛媛県今治市に本社を構え、今治タオルの製造や販売をするIKEUCHI ORGANICを紹介した。同社は、1953年に創業。大手企業のOEMを中心に製造を行ってきたが、1999年から自社ブランドを立ち上げた。
すべての商品にオーガニックコットンを使用し、風力発電の風でタオルを織るなど、地球環境に配慮し、商品を製造している。放送では、営業部部長でタオルソムリエの牟田口武志さんに、商品のこだわりや店舗設計などを伺った。
本記事では、放送内容をまとめ紹介していく。
新品と数年後の状態を比較できる、直営店の仕組み
――IKEUCHI ORGANICは、2014年に直営店の「IKEUCHI ORGANIC東京ストア」をオープンされました。その経緯と店舗ではどのような体験ができるかを教えてください。
もともとは、百貨店やセレクトショップなどでの販売が中心だったのですが、ブランドの想いを直接伝える場がなかなかなかったことから、直営店のオープンを決めました。
お客様の中には営業所まで来て「タオルを触らせてください」という方も多いことからわかるように、直接触らないと商品の良さがわからないんですよね。お客様がゆっくりタオルに触れ、本当にお気に入りのものを選べる場にしようと店舗設計を進めました。
そうして生まれたのが、タオルの“テイスティング”です。新品と200回〜300回洗濯した商品の質感を比べることができます。多くのお店では新品の状態しか触れませんが、大切なのはお客さんが使用した後。数年後の商品の状態をイメージできるようにしました。
――洗濯後の使用感が実際にわかるのは良いですね。お客様の反応はどうですか?
驚く方が多いですね。数年経ったタオルでも、ちゃんとメンテナンスをしていたら吸水性は落ちないので。実際に何年も使ったサンプルを触って、購入を決められる方が多くいます。
商品のストーリーを伝え、タオル=消耗品のイメージを覆す
――メンテナンスするのは、あまり一般的でないようにも感じます。
タオルは使った後、どのようにメンテナンスするかが大事です。その重要性を伝えるためにも、直営店ではタオルソムリエや洗濯好きな社員が常駐していて。その場でどのように洗濯すればいいか、どんな洗剤を使えばいいのかをお客様にアドバイスしています。
――タオルソムリエや洗濯好きな社員が常駐していることもそうだと思うのですが、ブランドの魅力をお客様に伝えるために工夫されている点は他にありますか?
店頭でもいただいた質問に対して可能な限り解消しますが、さらに深く知りたいお客様に向けて、Webサイトやnoteなどで情報を発信していることです。直接的なコミュニケーションを通して基礎的な部分を伝え、オンラインで深く知ってもらうことを心がけていますね。
――オンライン上でのコミュニケーションを通して、購入後もお客様とつながっているんですね。そうした積み重ねによって、お客様との関係性に何か変化はありましたか?
タオルは一般的に消耗品として見られがちです。ですが、店舗に足を運んで自ら選び、オンラインでストーリーを知ることで、商品への愛情がお客様の中に芽生えているように感じられます。大切な人への贈り物として、私たちの商品を選んでくださる方も増えていますね。
オーガニックを体現。池内タオルからIKEUCHI ORGANICへ
――直営店のオープンと同じ2014年に、社名の変更とリブランディングも行われました。ここにはどのような想いが込められているのでしょうか。
リニューアル前は社内に三つほどブランドがあり、お客様から見てもわかりにくかったので、一つのブランドにまとめようとしたのがきっかけでした。創業60周年を機に、社名も「池内タオル」から「IKEUCHI ORGANIC」に。タオルだけでなく、ベビーやベッドリネンなどテキスタイル全般に広げ、コットンは100%オーガニックのものだけを作るようにしたんです。
――若い世代により届けていくためにも、100%オーガニックにこだわったと。
はい。リブランディングをする際は、デザイナーでD&DEPARTMENT代表のナガオカケンメイさんに依頼しました。ロゴには陽だまりのような黄色の背景に、白く浮かび上がった「I」の文字が入っています。地球を暖かく照らす太陽がイメージされているんです。
このデザインには、商品に使用する素材だけでなく、地球環境、そしてブランドを取り巻くすべての人々に対して“オーガニック”な存在であり続けたいという意味を込めました。この姿勢を体現する商品の一つに、「コットンヌーボー」というタオルがあります。
お客様の日常に溶け込み、生活が少しでも豊かになる体験を
――コットンヌーボーとは、どのような商品なのですか?
その年に収穫したコットンだけを使用したタオルです。ボジョレヌーボーを想像するとわかりやすいと思うのですが、コットンも植物なので年度によって風合いが変わってきます。この毎年変化する素材の違いを「楽しんでもらいたい」という想いで生まれたのがコットンヌーボーです。年号も織り込まれているので、出産祝いや結婚祝いで喜ばれていますね。
また、コットンヌーボーはタンザニア産のコットンを使用しています。タンザニアはあまり水が豊富にとれない地域なので、売り上げの一部を井戸の設置費用として活用し、貧困状態にある人々の自立支援につなげています。コットンヌーボーを愛用してくださるお客様の中には、「生産者さんの支援をしたい」という目的で購入する方もいらっしゃるんです。
――商品の先に自分が共感できるストーリーがあるのは、購入する側も嬉しいですよね。最後に、IKEUCHI ORGANICが考える「顧客体験」について教えていただけますか?
オーガニックのタオルはどうしても他の製品より高くなるのですが、気を張らずに、日常に溶け込む形で使ってもらいたいと思っています。その思いから高円寺の小杉湯という銭湯でタオルを50円でレンタルできる取り組みなどを進めています。1週間に1枚でもいいので当社の商品を使ってもらうことで、お客様の生活が少しでも豊かになる体験をこれからも届けていきたいです。
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