XDを運営するプレイドが、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2021年7月5日から8日の放送では、ペンタブレット市場で圧倒的なシェアを誇る株式会社ワコム(以下、ワコム)のCXを紹介した。ワコムのペンタブレットは、デジタルなのにまるで紙に描いているような感覚で、数多くのクリエイターやアーティストに愛用されている。
放送では、代表取締役社長の井出信孝氏、クリエイティブビジネスユニットのバイスプレジデントの矢野幸治氏に、開発する上でのこだわり、教育現場やビジネスシーンのペンタブレット活用事例について伺った。
本記事では、放送内容をまとめ紹介していく。
すべての人のクリエイティビティを支える「道具屋」
――はじめにワコムでペンタブレットを製造することになったきっかけを教えてください。
井出氏:弊社にはもともとデジタルを使って「描く/書く」という技術がありました。その技術を用いて、どんな製品を作れば人の役に立てるのかを考えた結果、ペンタブレットが誕生しました。
最初に大手のお客様となったのはウォルト・ディズニー・アニメーションスタジオさんです。アニメ映画を初めてデジタル制作する際に、私たちの製品を使っていただきました。
――どんなこだわりをもってペンタブレットは作られているのでしょうか。
井出氏:私たちは、クリエイターやデザイナーを下支えする道具を提供する「道具屋」だと思っています。道具屋なので自分たちはでしゃばらず、使う人たちがいかに気持ちよく使っていただけるかを考え、用途に合わせた製品づくりをしています。「かく」と一言でいっても「draw(描く)」「write(書く)」の2つがあり、そのどちらにもこだわりをもって製品を作っています。私たちの道具が、クリエイターにとって我を忘れて創作へ没頭できる体験のサポート役になれればと思っています。
リアルタイム性のある液晶ペンタブレットで生産性をあげる
――現在はペンタブレットに加え、液晶画面に直接書き込む「液晶ペンタブレット」が人気だそうですね。
井出氏:人間は何万年も前から、道具を使って文字や絵を書きつける行為を続けています。書くときに使う道具がアナログであっても、デジタルであっても、人間の繊細な器官である指や手を使い、道具を操って何かを生み出している。手を使って書く行為はペンタブレットも液晶ペンタブレットでも変わりはありません。
2つのタブレットでの体験の違いは、リアルタイム性です。ペンタブレットは自分の手元は見ずに、画面を見ながら手元を動かし描く。一方液晶ペンタブレットは、画面に直接描いていくので、自分が作り出しているものを目の前にしながら、描き込んでいくという体験が可能になりました。
――クリエイターにとって、ペンタブレットを活用することでどんなメリットが生まれるのでしょうか。
井出氏:紙に直接描く作業とは違い、効率的な創作が可能になりました。例えば、髪型のイラストを保存しておいて、新たなイラストを描くときにそのファイルを転用すれば何度も髪型のイラストを描く必要がありません。生産性高くイラストを描けるようになったと思います。
私たちのペンタブレットを活用してもらうことで、漫画家の方だったらネームの時間が増えたり、アーティストの方だったらコンセプトを考える時間ができたりと、描くこと以外の創作活動にも良い影響を与えられる道具でありたいです。
リモート授業だけでなく普段の授業でも手書きのやりとりで活用
――ワコムのペンタブレットを使う方には漫画家やイラストレーター、アニメーターが多いそうですが、最近では中学校で導入もされているそうですね。
井出氏:もともと何かを作り出す創作意欲は、プロだけのものではないと考えています。イラストを学んでいる方や趣味でやっている方など創造性を持っている人はたくさんいるのではないでしょうか。
最近は様々な中学校とコラボレーションするプログラムを行っています。放課後のクラブ活動で、私たちの液晶ペンタブレットを使っていただいるんです。皆さんの創作を見せていただくとプロ並みに上手で、目を輝かせて一心不乱に描き続ける中学生がたくさんいる。その姿を見ると創作は、プロアマ関係なく、等しくあるものなんだなと思います。
弊社では初心者や絵を勉強している方向けにも幅広くラインナップを展開しているので、プロだけではなく様々な人に使っていただきたいです。
――去年はコロナ禍で多くの学校がリモート授業を始めました。そのなかでペンタブレットを導入されたケースも多くあったそうですが、反響はいかがでしたか。
井出氏:想定していた以上に学校教育の中でペンタブレットが普及しています。オンラインで先生と生徒が繋がるリモート教室などでは、黒板代わりに使っていただいているようです。
またリモート授業だけではなく、オフラインの授業でも活用いただくケースも増えました。生徒がペンタブレットで書き込んだ回答やメモに対して、先生が手書きのコメントを残すといった、手書きのやりとりにも使っていただいていています。授業の中に双方向の手書きコミュニケーションが加わることによって、教えや学びも生き生きしてくるなと感じています。
さらなる良い体験を作るためにクリエイターと実験的な取り組みを行うコミュニティを創設
――教育の場だけではなくビジネスの現場でも液晶ペンタブレットを導入される企業が増えているとお聞きしました。
矢野氏:コロナ禍でリモートワークが増える中、対面のコミュニケーションがオンラインへ移行していきました。例えば、今までは製図を行うデザイナー同士で修正のコミュニケーションを行う際、手渡しで図面をやりとりし、手書きでコメントを入れていました。それを液晶ペンタブレットに変更し、オンラインでインタラクティブにお互いの意見をやりとりしながら作業を進行している企業もあります。「以前より効率が良くなった」という声も増えました。
オンラインで「書く」ことを通したコミュニケーションが活発に行われることで、オフラインのように同じ場所や空間にいる感覚になる方もいるようです。
――ビジネスシーンでペンタブレットの活用はますます増えていきそうですね。
矢野氏:これからの仕事は一つのデバイスじゃなくて、複数のデバイスを活用しながら進めていくようになると思うんです。パソコンやスマートフォンを持ちながら、我々のペンタブレットを使っていつでもどこでも資料などに書き込みを加え、コミュニケーションの精度を上げていく。そんなデバイスの使い方が増えてくるんじゃないかなと考えています。
ビジネス用途でペンタブレット、液晶ペンタブレットが広く使われている背景の根底には、ビジネスにもクリエイティビティが求められていると感じて。我々のペンタブレットは、ビジネスの場面でも創造性を発揮するためのツールになれるんじゃないかと思っています。
――最後にワコムのペンタブレットの展望について教えてください。
井出氏:ペンタブレットや液晶ペンタブレットなど、書く道具の技術を磨き続けることは変わりません。さらに、ユーザー体験をより良くしていきたいです。
今はペンから出てくるデータに着目しているんです。ユーザーにとってどんな道具で書くかと合わせて、何を書くかも大事だと思っています。書かれた内容のデータと人工知能を組み合わせて、新しい体験を作ったり、空間に直接書き込みできるようにしたりと書かれたデータを活用し、新しいサービス体験を作っていきたいと考えています。
ただこの体験は、ワコムだけの力だけでは作れません。いろいろなコミュニティを作り、パートナーさんと連携しながらお客さんにより良い体験を作っていきたいと思っています。そのために、2021年に技術を持つ人やクリエイターと実験的な取り組みを行う「コネクテッド・インク・ビレッジ」を立ち上げました。このコミュニティに参加する人同士が交流し、創作に対するインスピレーションやヒントをもらったり、連携が生まれたりして、お客様の体験がどんどん磨かれていくような環境づくりを目指していきます。
KARTE CX VOXの過去の配信は、Spotify、Apple Podcasts、Google Podcastsのほか、「ラジオクラウド」のアプリから聞くことができます。ラジオクラウドはアプリをダウンロードの上、こちらのリンクもしくは、アプリ内で「KARTE CX VOX」と検索してください。