XDを運営するプレイドが、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2021年5月20日の放送では、歴史を面白く学べるポッドキャスト「COTEN RADIO」のCXを紹介した。2018年11月に始まり、今では再生数2,200万回以上、ユニークリスナーは約14万人を誇る。iTunesのポッドキャストランキングでは常に上位にいる人気ポッドキャストだ。
放送では、COTEN RADIOを手掛けるCOTEN代表の深井龍之介氏に、始めたきっかけや番組作りの工夫、今後の展開などについて語ってもらった。
本記事では、放送内容をまとめ紹介していく。
自分たちが勉強したいテーマを中心に番組を作る
――最初に、COTEN RADIOがどんなプログラムのラジオなのかを教えてください。
Webから無料で聞ける、歴史を面白く学ぶ番組です。3人のパーソナリティーが運営していて、二人が歴史にとても詳しく、残り一人が「歴史弱者」と言えるほど歴史を知らない。そんな知見に差がある3人が、歴史についてさまざまな話をしています。2019年、日本初の大規模ポッドキャストアワード「JAPAN PODCAST AWARDS」で大賞を取ったり、現在もiTunesのポッドキャストランキングで上位だったりと、有難い評価をいただいています。
――COTEN RADIOは何をきっかけに始まった番組なのでしょうか。
僕と中国人の楊(ヤン)、音楽制作やラジオの仕事をしている樋口がパーソナリティーなのですが、たまたま一緒になった飲み会の席で、僕と楊が歴史の話を熱く語っていたんです。そうしたら「面白いから、ラジオにしてみては」と言ってもらったのがきっかけでした。
――リスナーが歴史を面白く学べるように、制作ではどのような工夫をしていますか?
自分が今一番勉強したいと思う、テーマや時代から番組を作るようにしています。台本の作り方としては、僕があらすじを一通り考えて、次に楊が喋りたいことを補足し、作り上げています。基本的なスタンスとしては、喋りたいことを喋るので、リスナーに伝わりづらい内容になるときもあるんです。そんなときは、樋口さんが疑問に思ったことを、僕たちにどんどん突っこんで聞いていきます。僕と楊だけだったら、先走ってリスナーを置いてけぼりにしてしまい、ここまで聞いてもらえなかったのかなと。樋口さんがリスナー目線で質問してくれるので、誰が聞いても面白いものになっているのではないかなと思います。
聞いてもらうことで“今”を俯瞰するきっかけにしたい
――COTEN RADIOがきっかけで、歴史にはまる方も多いようですね。
学校教育の影響もあってか、歴史を学ぶ=暗記しなければいけないという意識を持っている方が、多いのではないかと思います。教科書どおりの勉強方法だと、太字になっている登場人物と功績だけを必死に覚える。ドラマで例えると、重要な登場人物の名前と、重大な出来事だけを紹介されているのと一緒で、面白くないですよね。紆余曲折があるから面白い。だから僕たちは、時代背景や人物の置かれた状況を番組の内容に入れるようにしています。難しい内容は噛み砕いて、自分たちが感覚で分かるレベルまで掘り下げるようにしています。
歴史と呼ばれるものは、実は扱う情報の範囲が広いものなんです。過去に起こった社会の情報、全てが歴史なんです。その情報の中には、さまざまなジャンルがあります。歴史もドラマや映画と一緒で、アクションやヒューマンドラマなどジャンルに分けることができる。でもそれが上手く伝わっていないと思っています。人それぞれ好きなものがジャンルで分かれるように、歴史にも何か一つは好きになれるジャンルがあると思っています。
――歴史という大枠で見るのではなく、興味のあるジャンルを学んでいければ楽しくなりそうですね。話はそれますが、よく言われる「歴史は繰り返す」って本当なのでしょうか。
繰り返す部分と、繰り返さない部分があるのではないでしょうか。歴史を見ても、人間の心理っていうのは全く変わっていないんですよね。2000年前に生きていた人も、現代に生きている人も、どういうときに不安を感じるのか、攻撃的になるのかなど、一緒だなと思います。ただ社会の情勢がどうなるかは、数百年単位で変わっていく傾向にあると思います。
歴史を勉強しても未来を読めるようにはならないのですが、今いる状況を歴史と照らし合わせることで、客観的に物事を見られるようになるというのは強調したいです。例えば、コロナ禍をペストが流行したときと比べてみる。重要なのは、ペストのときこうだったから、コロナのときもこうなるだろうということではなく、自分たちの状況を客観的に知り、理解するということです。自分たちの現状が客観的に見られると、心持ちがだいぶ変わって、ネガティブな感情が生まれないと思っています。自分たちの時代がどう変化しているかを客観視するために、歴史を勉強するというのはとても良いことだと思います。COTEN RADIOを聞きながら、そういうエッセンスを受け取ってもらえたらとても嬉しいですね。
現代に置き換えたり、比較しながら分かりやすい説明を
――COTEN RADIOで特に人気が高かったシリーズはありますか?
反響は、面白いことにばらつきがあるんです。聞いているリスナーさんの、今の人生の悩み事がなんなのか、何を重視する性格なのかによって、どのエピソードが好きか変わります。ばらつきがある中でも、比較的ガンジーや空海、最澄などが人気です。
ガンジーのときは、彼が提唱していた「非暴力」「不服従」というのを詳細に説明しました。ガンジーと聞いてイメージするであろう「ラブ・アンド・ピース」とは全く違うロジカルな哲学思想を紹介して、多くの反響をいただきました。最澄と空海のときは、パソコン環境に例えて話をして。リスナーの方から「とても分かりやすい」というお声を多数いただきましたね。リスナーの方になるべく感覚的に歴史を理解しようとしもらうためには、現代に置き換えたり、比較したりしながら学ぶのが一番分かりやすいかなと思っています。
――歴史は見る人によっては、見方が変わる場合もあります。この点についてはCOTEN RADIOでは、どう伝えているのでしょうか。
僕たちは歴史の研究者ではなく、あくまでも歴史を分かりやすくまとめているというスタンスを明確に出しています。学者の方が書いた書物を読んで、理解しやすい形にして、最後に僕たちの感想を喋っているということです。例えば、「桶狭間の戦い」がどんな戦いだったか、いまだにいろんな説があるわけです。このように諸説ある場合、僕たちは「いろんな説があること」をしっかり説明します。歴史を勉強したい人にとって、諸説あることを知るのは大切だと思っているので、「絶対こうです」みたいな伝え方はしていないですね。
データベースを作り、歴史を分析できるようにしたい
――音声メディアのこれからについて、どのように考えていますか。
以前は映像メディアもやっていたのですが、音声の方がリスナーに友達のような親近感を持っていただけると思っています。また、「ながら聞き」というニーズが増えてきているようにも感じます。例えば、家事や移動中の合間に、本で一般教養を勉強したいけど、面倒くさい。机に向かって勉強するのも気が進まない。そんなときに、何かしながら勉強できて、エンタメとしても楽しめる。音声メディアはそんな一石三鳥のメディアだと思っています。
――今後のCOTEN RADIO、COTENの展望を教えてください。
COTEN RADIOは、淡々と、ずっと続けていきたいなと思っています。ちょっとずつ、いろんな方に聞いてもらえるようになったら嬉しいです。COTENは世界史のデータベースを作るという、変わった事業に今取り組んでいます。例えば、歴史上で部下に殺された人だけを検索、その人たちの共通の経験や体験を見られるようにしたり、戦争や革命がどこで起こったりしたのか、誰がどこで生まれたかがひと目で分かるようにマッピングしたいなと。今、本格的に動き出したので、少しずつ作り込んでいきたいと思っています。
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