XDを運営するプレイドが、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2021年10月18日から10月21日の放送では、ゼブラが発売する筆記具「シャーボ シリーズ」が届けるCXを紹介した。シャーボはボールペンとシャープペンが1本のペンで使うことができる多機能ペンで、発売から40年以上、多くのユーザーに愛されるロングセラー筆記具だ。
放送では同社の鈴木由佳氏に、シャーボが誕生した背景やこれまでの歴史、また今後の展望について語ってもらった。
本記事では、放送内容をまとめ紹介していく。
名前を間違えられたことをきっかけに誕生した「シャーボ」
――「シャーボ」という名前にしたきっかけを教えてください。
シャープペンとボールペンが1本になっていることからシャーボと名付けているのですが、もともとは社長によって「シャボール」と命名されていました。それが自ら広告代理店に電話したところ、相手に「シャーボ」と聞き間違えられ、そのまま「シャーボ」をCMにして流したんだそうです。
昔のCMをご覧になった40〜50代の方にはシャーボは広く認知されています。その世代の方とお話をすると、「右に回すとシャープペン、左に回すとボールペン」というフレーズもよく話にあがりますね。
――シャーボはこれまでどのような歴史をたどってきたのでしょうか。
初代シャーボが誕生したのは1970年代後半。当時日本は高度経済成長期で、高性能で高級な商品への人気が高まっていました。そのためシャーボについても、当時の人々にとって憧れがある舶来品のように高級感のあるデザインを目指していました。初代では特に、無駄な装飾を省いてシンプルに仕上げています。
初代シャーボ発売以降は、シャーボと時計が一体になった「シャーボウォッチ」を開発したり、幅広い層が手に取っていただけるよう低価格で商品を出したりしました。2007年には創造性を高める筆記具として、リフィルをカスタマイズできる「シャーボX」を販売。高級感のあるデザインに加え、芯を切り替える際に滑らかに作動させるなど機能面でもこだわり、リブランディングを図りました。
現在は主に「シャーボX」と、2020年11月に発売された「シャーボNu」を取り扱っています。「Nu」はネクストアップという意味と「New」の意味を掛け合わせた造語で、「シャーボNu」はこれからの新しいシャーボとして位置づけています。
シャープペン需要が意外にも高いことから、数年かけてその機能を開発
――「シャーボNu」の開発経緯を教えてください。
多機能ペンを日常的に使っているユーザーにアンケートを実施したところ、約80%が週1回以上シャープペンを使用していました。想定以上にシャープペンの機能が使われていて、この結果には驚きましたね。
おかげで、これまでボールペンに着目しがちだったことに気がつきました。今度はシャープペンの機能をより進化させてみようと、「シャーボNu」を開発しました。
――従来から、具体的にどのように変わったのでしょうか?
シャープペンの芯の補充をスムーズにできるようにしました。従来の多機能ペンでは、ペンを分解して芯を補充しなければなりませんでした。そこでシャーボNuでは、ペンの中央にシャープメカを配置することで、ペンの頭から芯を補充するようにしています。構造を一から見直し、数年間かけて開発しました。
デザイン面でいうと、芯を補充しやすい形状にしています。また機能面では、中央にある透明な窓から「自分がどのペンを使っているのか」を分かるようにしました。くわえて、ゼブラ独自のエマルジョンインクというインクを採用したボールペンは、非常に滑らかな書き心地です。
当たり前になっているユーザーの不満に目を向ける
――シャーボを使ったユーザーからはどのような声がありますか?
特に若い社会人の方から好評をいただいていています。テレワークの際に、自宅のデスクで仕事をする方も多く、スペースが限られているなかで、1本でまとまるペンは大変重宝されているようです。
パソコンなどが仕事でのメインツールにはなっていますが、ビデオ会議中にメモを取ったり、アイデアを広く出したり、コミュニケーションを取るときなど、まだまだ筆記具を使う方もいらっしゃいます。そうした時に、「シャーボが1本あるだけで、さまざまなシーンに対応できます」という声をいただきます。
シャーボシリーズは、リフィルの色を変えられたり、シャープ芯を簡単に補充ができたりするところからも、満足度が高い商品として受け入れられているのだと思います。
――他にもユーザーのプロダクトに抱く不満から生まれたアイテムはあるのでしょうか。
シャープペンの「デルガード」という商品があります。芯がすぐに折れてしまう不満を改善し販売したところ、シャープペンとして非常にヒットしました。
当たり前になっていることは意外と気がつきにくいですが、今はたくさんのユーザーから話を聞いて、使っているのを観察することで、ユーザーの不満を見逃さないようにしています。
潜在的な不満を見つけて改良をすることで、みなさんの生活が便利になったり、豊かになったりする。筆記具の潜在的な不満というのは小さなものですが、その小さな点を改良することでみなさんの生活がより良い方向に変わるといいなと思います。
変化しながら、時代を超えて生活にフィットする筆記具を
――シャーボNuは、2021年上半期のヒット番付文房具部門で大賞に選ばれたそうですね。
ありがとうございます。ユーザーが使用後にSNSで書き込んでくれ、口コミで広がっていったのが大きかったと思います。販売している店舗ではお客様にお試しいただけるようなコーナーを設け、ディスプレーとしてしっかり飾らせていただいております。
最近は仕事に使うアイテムとして持ち歩きの需要が高まり、シャーボNuなど多機能文具、多機能ペンが注目されてきていると感じます。趣味でイラストを描く方も増えているので、そのような方々のために、カラフルなペンの発売しています。
――最後に今後の展望について教えてください。
重要なのは改善できないではなく、改善に努めるという姿勢。今後もユーザーの不満を見つけて改善しながら、よりクリエイティブな手助けをするシリーズも展開予定です。時代が変わるにつれ生活も変化するので、その時代に合わせた商品を提案できるよう、これからも改善に努める姿勢は持っていたいですね。
KARTE CX VOXの過去の配信は、Spotify、Apple Podcasts、Google Podcastsのほか、「ラジオクラウド」のアプリから聞くことができます。ラジオクラウドはアプリをダウンロードの上、こちらのリンクもしくは、アプリ内で「KARTE CX VOX」と検索してください。