XDを運営するプレイドが、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2020年5月18日から21日の放送では、日本最大級のワークウエアの専門店チェーンを展開する、株式会社ワークマンを紹介した。作業着や作業用品など、1700を超える商品を取りそろえる「プロのための店」として、全国に800店以上を展開。最近では、商品の機能性が注目され、若者を中心に「新しいアパレルブランド」としての人気が高まっている。
放送では、「ポストファストファッション」ともいわれるワークマンの商品展開や消費者とのつながり方の工夫を、ワークマン東京本部 営業企画部の丸田純平氏に伺った。
本記事では、放送内容をまとめ紹介していく。
職人向けの商品が、生活者の隠れたニーズとマッチ
――いわゆる「プロのための店」だったワークマンが、アパレルブランドとして注目を集めるようになったのは、どのような経緯があったのでしょうか。
ワークマンは、職人さんや建設事業に携わっている方などに向けた商品作りが今でもメインとなっています。職人さんが使うのは、基本的には屋外で8時間もの長時間にわたって使うウエアです。消耗が激しいので、高機能でありながらも低価格という戦略をとってきましたが、一般のお客様のニーズにも合って支持を得ているのだと感じています。
一般のお客様の場合は、キャンプや登山などのアウトドア、スポーツをされている方が多い印象です。アウトドア用品などは、有名ブランドで一式そろえるとなると10万円ほどかかってしまいますが、ワークマンのウエアだったら同じくらい丈夫なものが低価格でそろえられると思ってもらえたのかなと。このような傾向が見られてからは、一般のお客様にも普段から使ってもらえるようなデザイン性を意識して、製品開発をしていますね。
――一般のお客様にも活用される商品展開は当初、想定されていなかったんですね。
いえ。日本全体の人口が減る中で、建設に携わる方々の人口も減っていくという懸念が以前からありました。そのため、今後も成長を続けるためには、顧客の幅を広げて一般のお客様の需要も取り組むべきと考え、PB(プライベートブランド)商品は開発していたんです。
PB商品が先程の理由から徐々に人気となる中で、次はこれまでワークマンに来ることの少なかった女性のお客様にも来てもらいたい――。そんな思いから、「WORKMAN Plus+(ワークマンプラス)」という新業態も立ち上げています。
時間によって照明や匂いまで変える、ダブルコンセプトストア
――現在200店舗近くあるWORKMAN Plus+では、どのような体験を提供していますか。
WORKMAN Plus+では、オープンした2018年の9月から、基本的にワークマンと同じ商品を扱っています。ただ、同じ中身でも見せ方を変えることには、こだわっていますね。今までワークマンでは、マネキンでコーディネートを提案することもありませんでしたし、姿見鏡もほとんどありませんでした。それらを改善し、なるべく一般のアパレルブランドと同じように、オシャレに見せることを大事にしています。
また、買い物のしやすさも追求しています。店内の右側に仕事で使う商品を、左側に一般のお客様でも着ることができる商品を並べています。ワークマンではすべてが混在しており、商品を発見しづらいため、WORKMAN Plus+ではお買い求めしやすい形にしました。
――一般的なアパレルブランドで体験できることを取り入れているのですね。さいたま市にあるWORKMAN Plus+は、店舗そのものに仕掛けがあると聞きました。
さいたま佐知川店は「ダブルスコンセプトストア」として、時間帯によってお店の看板がワークマンからWORKMAN Plus+に変わるんです。このお店で伝えたかったのは、ワークマンとWORKMAN Plus+で扱っている商品は同じものだということ。
職人さんが多くいらっしゃる朝と夕方は、ワークマンの看板。日中の一般のお客様が多いときは、WORKMAN Plus+の看板というように切り替えています。また、看板だけでなく、店内の照明や香りまでも変化させています。ワークマンの朝夕は蛍光灯の真っ白の照明で清涼感があるような香りにしていますが、WORKMAN Plus+のときは暖色系の照明と、ゆったりとお買物できるような柑橘系の香りで店内を演出しています。
ワークマンのときは、軍手や安全靴が売れるのに対して、日中のWORKMAN Plus+のときにはアウトドアウエアやTシャツがよく売れていますね。
オンラインで新しい顧客層とつながる「アンバサダー制度」
――実店舗での取り組み以外にも、何か新しい取り組みをされていますか。
以前からお客様が「#ワークマン」というハッシュタグをつけて投稿してくださっていたのですが、去年にようやくInstagramとTwitterの公式アカウントを設立しました。
そこで、新たに始めたのが「アンバサダー制度」です。ワークマンの商品を使ってくださっているお客様の中で、特に多く発信してくださっている方を中心に、ワークマン本部がコミュニケーションを取って、色んな試みを進めようという企画です。現在、およそ30名弱のワークマンアンバサダーの方がいらっしゃいますね。
――熱心なワークマンファンをアンバサダーとして認定していると。アンバサダーの方とは、具体的にどのような取り組みをおこなっているのでしょうか?
商品のサンプルをお渡ししたり、優先的に社内のイベントにお呼びしたりしながら、積極的に発信してもらうことを最近は特に注力しています。一部のアンバサダーの方々とは、一緒に商品開発をしたこともありました。そのアンバサダーさんだけが開発した商品について最初に発信することでファンがつき、人気商品が生まれたということもあります。
「高機能×低価格」で、さらにファンを増やしていく
――これまでの人気商品の中で、特に印象に残っているものはありますか。
一見、普通のデニムパンツが、レインウエアのように水を弾く「防水デニム」ですね。一般的なレインウエアだと、普通のデニムの上から雨がっぱを着るオーバーパンツが主流となっていますが、防水デニムは普通のデニム1枚でレインウエアになるというものです。
この商品について、お客様から「実際に雨の中で着ても全く染みなかった」というレビューをしてくださったのが、非常に嬉しかったですね。購入してくださった翌日には、もうレビューがアップされていたんです。職人さんだと仕事中に急な雨が降ってきても問題ないですし、一般のお客様でもバイクに乗る方を中心に好評をいただいております。
――最後に、ワークマンの今後の取り組みについて教えてください。
一番は、「高機能×低価格」の製品開発を追及することで、より多くのお客様にご利用いただける商品を目指して、今後も製品を開発すること。その他に、店舗の在庫を見える化して、欲しくなったらすぐに取り置きし、お買い求めいただける仕組みを作ろうとしています。大手通販サイトさんにも負けないような仕組みというのを構築していきたいですね。
SNSで始めたマーケティングも、継続していきます。SNSをチェックしていると、初めてワークマンを訪れてくださるお客様が非常に多くなっていると実感しています。これからも、アンバサダーの方々と一緒に多くのワークマンとの出会いを作っていきたいです。
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