多言語対応するWEBサービスを自分も作っているが、周りの友人たちもグローバルに展開するアプリを作っているために、時々UI内のテキストについて話をすることがある。
この間話していて面白かった話が、UI上のテキストの「トーン」の話。UIデザインや文章にトーンがあるように、UI上のテキストでもトーンを意識すべきでは?という話である。
具体的に言うと、例えば間違ったパスワードを入力した場合。以下の2つの文言では、意味している内容が同じでも、受け取る印象が違う。
「パスワードが間違っています。再度入力し直してください」
「パスワードが違うみたいだよ!正しいパスワードをもう一度入力してね!」
些細な一文かもしれないが、これを積み重ねることでそれがそのサービスの「キャラクター」になる。だからこそ、トンマナをサービス全体やグローバルで揃えなければいけない。ユーザーは、繰り返しサービスと「対話」しているのだから、テキストの「トーン」はサービスへの愛着に影響する、という話だ。
わたしたちの生活の“相棒”はらぺこ君
サービスとの対話が愛着につながる、という話で言えば、私の中ではすぐに「ペコッター」の話が思い浮かぶ。
ペコッターは簡単に言えばオンラインの予約代行サービスだ。予約したい飲食店の情報と日時や人数を伝えると、はらぺこ君というキャラクターが自分の代わりに予約をとってくれる。
この“はらぺこ君”というキャラクターがとってもニクい。私の周りでもファンが多く、「はらぺこ君かわいいな〜」だとか「ペコッターだいすき!」という声をよく聞く。
勿論、予約サービス自体のホスピタリティが高いこともその理由に当たるだろう。日時が変更になっても献身的に予約を取り直してくれるし、もし予約が取れない場合も、それを伝えるだけではなく別のお店を検索・提案してくれる。とっても親切だ。
しかしさらにその「親切でうれしい!」を底上げしてくれているのは、はらぺこ君のキャラクターであると思う。基本的に語尾には「ぺこ」がつく。予約をお願いすれば「かしこまりぺこ!」と答えてくれるし、待ち時間が長い時は「今順番に案内しているからちょっと待っててぺこな!」と言ってくれる。無味乾燥なガイドに案内されるよりもずっと、「はらぺこ君頑張ってくれてうれしいな」と思ってしまう。そして気がつけばサービスのファンになっているのだ。ペコッターというサービスが好きだし、はらぺこ君との会話が好きなのである。
プログラムと“会話”するわたしたち
友人のエンジニアがLINEのチャットボットで“リマインくん”というbotを作っている。彼は度々チャットボットの開発について登壇していて、私も聞いたことがあるが、その中でボットに対して、ユーザーがあまりにも「友だちとして」話しかけてくるので驚いた、という話をよくしている。そしてだからこそ、実装は他のツールに比べてより「フレンドリーに」実装すべき、だとも。
実際にリマインくんについてTwitterで検索をかけてみると、まるで友だちのように扱っているツイートをよく見かける。リマインドアプリは他にも幾多もあるが、これだけユーザーが“友だち”のように親しんでいる例は少ないかもしれない。
(参考:リマインくんTwitter検索結果)
さらに最近の例でいうならば、Clovaをはじめとするスマートスピーカーも“友人らしい”コミュニケーションを私達ととっている例ではないだろうか。先日お子さんのいるお家で小さな子どもがスマートスピーカーと話している様子を見たが、それは“会話”とまでは言えないが“操作”を超えるコミュニケーションであったと思う。
VUI時代に加速する“可愛げ”の重要性
PCやスマホなど、この数十年間、わたしたちは数え切れないほどの“ディスプレイ”に囲まれるようになった。だが、これからはその“ディスプレイの操作”から開放される時代になっていくのではないかと思う。
チャットというテキスト上のコミュニケーションの延長線上に、ロボット、Vtuber、スマートスピーカーといったユーザーコミュニケーションが流行しつつある。VUI(ボイスユーザーインターフェース)という言葉も最近よく聞くようになった人も多いだろう。
そんな時代において、より一層サービスの“可愛げ”というキャラクターの“トーン”が重要になっていくのではないかと思う。私達はどんどん向き合っているサービスを「友人」として扱うだろうから。それならば当然のごとく、その友人の「人柄」は重要ではないだろうか。
私達は今までも、つくるモノの「使いやすさ」や「わかりやすさ」にこだわってきた。けれどもこれからはさらに、その「可愛げ」について研究すべきかもしれない。ミライの社会をよくするだけでなく、ミライのユーザーの「良き友人」をつくるために。