11月24日に行われたJリーグ33節の「清水エスパルスvsヴィッセル神戸」戦。4分だったはずのアディショナルタイムが18分を超えてしまうという“異常事態”が発生したことはご存知だろうか。
終わりそうで終わらない試合は、ラフプレーによる負傷者や乱闘騒ぎを引き起こし、退場者まで出してしまう事態を招いてしまったことで、審判には多くの批判が寄せれらた。一体ピッチでは何が起こっていたのか。
この日のジャッジについて、サポーターやメディアから様々な見解が述べられる中、この騒動に正面から向き合うJリーグの取り組みが話題となった。
審判はなぜ判断を間違ったのか?
試合から3日後の11月27日、JリーグのYouTubeの公式チャンネルに「清水vs神戸 なぜ後半アディショナルタイムは18分を超えたのか?原博実&上川徹がJリーグの気になるジャッジを徹底解説!」というタイトルの動画が公開された。その動画がこちら。
これは「Jリーグジャッジリプレイ」というタイトルで今年の6月からはじまった番組で、今回で10回目になる。毎試合、Twitterのハッシュタグ「#Jリーグジャッジリプレイで取り上げて」で気になるジャッジを募集し、Jリーグの副理事長である原博実氏とJFAトップレフェリーグループシニアマネジャーの上川徹氏により、気になるジャッジを解説してくれるというものだ。
誤審に関しても明確に断言しながら、主審にどのような判断ミスがあったのかなどを丁寧に解説する番組となっている。
清水vs神戸戦に関しても、原氏は「これを取り上げなかったらこの番組の意味はない」と冒頭に述べ、アディショナルタイムで起こった一連の出来事に対して解説が行われた。
上川氏は「審判の判断に間違いがあった」と誤審があったという見解を示した上で、審判がどのような判断をしていたのかを一つ一つ丁寧に説明した。
18分50秒までアディショナルタイムが膨らんでしまったのは、負傷や乱闘騒ぎによるロスが9分程度あったうえで、主審の勘違いによる時間の加算があったということだった。
また、アディショナルタイムに負傷者や退場者を出してしまったことに関しても、危険なプレーを連続して流してしまうなど、試合をコントロールできていなかった審判にも一因があったという考えを示した。
2017年からメディア向けに行なっていた取り組み
実はJFAは、今回のYouTube番組と同様の取り組みを2017年から「JFAレフェリーブリーフィング」としてメディアなどを対象に実施している。
Jリーグは2017年から判定に関する異義があった場合、試合終了後に審判アセッサー(審判の評価などを行う人)とクラブの代表者が意見交換を行う取り組みを開始しており、ここであげられた事例の中から代表的な事例を「JFAレフェリーブリーフィング」で解説している形だ。
この取り組み自体はすばらしく、審判への評価の透明性の確保とメディアの理解度の向上につながっていることは間違いないだろう。
しかし、サッカーファンにはこの取り組みで示された見解が伝わることは少なく、疑惑の判定がどのような決着を見せたかまでを知ることができるのはごくごく一部なのではないだろうか。
直接、観客に届ける重要性
JリーグのYouTube公式チャンネルという、誰にでも見ることができる形でこの番組が配信されることに大きな価値がある。直接伝えるからこそ、その姿勢がしっかりと伝わるからだ。
「審判の判断は絶対」というサッカーのルールがあるため、試合中に判定が覆ることは基本的にあり得ないものだ。その性質によってミスがミスとして処理されず、おざなりにされてしまう感覚を持つのがファンの心情ではないだろうか。
今回のように、しっかりと見直しが行われていることが伝われば、サポーターの納得感を生み出し、観戦者の満足度を高める取り組みにつながるだろう。
また、正確にルールを把握してもらうことで、間違った認識による批判の防止や、誤審が生まれてしまう背景への理解を促すことにも繋がる。
企業が問題と真摯に向き合っていたとしても、それが表面に現れていなければ顧客に伝わることはない。公の場で問題に対して議論されることで、不満や不信感の解消に繋げることができ、信頼を得ることに繋がるだろう。
Jリーグの顧客に直接声を届ける姿勢、どのような企業でも参考にできるところがあるのではないか。