XDを運営するプレイドが、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2021年3月22日から25日の放送では、多様化する現代において、バンダイが提供するカプセルトイ「ガシャポン」のCXを紹介。子どもから大人まで、多くの人を魅了するカプセルトイを一度は回した経験のある方も多いのではないだろうか。
放送では、ガシャポンの歴史に加えて、多種多様なニーズに合わせてモノづくりをするうえでの工夫や今後のビジョンなどを、ベンダー事業部の松原ダイスケ氏に伺った。
多種多様な中身と手頃な価格が、ガシャポンの強みに
――バンダイがカプセルトイ事業に参入した、その歴史について教えてください。
参入したのは1977年。当時20円のガシャポンと自販機が主流だった業界に、高単価な100円のキャラクター商材を導入し、業界に新しい風を吹かせたというのが最初でした。
最近では、ハイグレードな500円の大人向け商品を展開。2021年1月には、600円~2,500円までの商品を販売できる自販機を導入しています。コロナ禍では、ネットでガシャポンを購入できる「ガシャポンオンライン」も展開。常に時代の変化に対応し、進化させています。
――2022年で45周年をむかえるんですね。ショッピングセンターなどにはカプセルトイだけを集めた店舗もありますが、目にすると種類の多さに驚くことがあります。
そうですね。発売するアイテムが多いことが、ガシャポンの特徴といえます。バンダイだけで、月に50アイテム以上を発売。他の企業からも発売されているので、月に約300アイテムは出ているのではないでしょうか。非常にサイクルが短く、1か月も経つと店頭からなくなることも。そのため、気になるものを見つけた際は、ぜひすぐ回してみてくださいね。
ガシャポンの最大の強みは、中に入れるものは何でもありなのと、「このくらいなら買ってもいいかな」と思える金額感です。今の世の中は趣味や趣向が非常に細分化しているため、万人受けする商品を作ることが難しいです。だから、多種多様なニーズに対して「ガシャポンなら買ってもいい」と感じてくれる顧客層を狙うことが大事だと考えています。
現実的な場面で使えることを意識した「ミニチュアAED」
――過去に発売されたアイテムに「ガシャポン ミニチュアAED」があります。本物の約20分の1のスケールで再現されたそうですが、なぜAEDを商品化したのでしょうか?
たくさんの商品の中で、人気が出るのは「誰もが知っているのに触ったことがないもの」をミニチュアにした商品が多かったんです。そんな背景もあり、「AEDはよく見るけど、中身を見たことはないよね」と話が上がり、知育要素もあることから、企画を進めることにしました。
さっそくAEDの開発、製造をしている日本光電工業様に相談したところ、「大変良い話」とご意見をいただき、商品化に進みました。商品化するにあたり、お話を伺っていると非常に多種多様な形式があることがわかりました。同じような見た目でも、AEDを開けると液晶画面が付いていたり、中身も違う。それらを再現するのに、非常に苦労しました。
――商品化するうえで、こだわったポイントなどはありますか。
最初は、「AEDの中を見ること」にニーズがあると予測していました。しかし、開発する過程で「本物のAEDを使える人を増やすこと」が、ミニチュアを作る当社としても大事な話だと思ったのです。そこで、実際にAEDを使う場面があったときにしっかり対応できるよう、なるべく忠実に再現をすることに方向性を変えたという経緯があります。
特に、最近のガシャポンは購入した方がSNSで発信することも多いです。この商品もTwitterなどのSNSを中心に大きな盛り上がりを見せ、「中身はこうなってるんだ」「実際にAEDを使うときの参考になる」といったご意見をいただけたのは、非常に嬉しかったです。
老若男女の企画者で編成し、多種多様なニーズに応える
――豊富な商品を実現し、ユーザーを満足させていくためには、企画開発においてどのような点を大切にされているのでしょうか?
バンダイの根底には、おもちゃを提供する会社という思いがあります。そのため、前提として「安全」「安心」「遊びやすいこと」を意識して商品を開発しています。
その中でも、私が所属しているベンダー事業部には、企画開発者が大勢いますが、同じような年代、性別の企画開発者だけで商品を作ることはしていません。現在、日本のお客様は、ニーズが多様化、細分化しています。当社もこうした多種多様なニーズに対して価値提供をしていくため、老若男女の多彩な企画者で編成することを意識しました。
――多彩な企画者の編成から生まれたヒットアイテムを教えてください。
ガシャポン開発の面白さは、自分の趣味が商品に反映されることです。VTuber(バーチャルYouTuber)を好きな人が、自分の好きなものを具現化した商品を開発。世の中に出してみたら、非常に反響がありました。多様性を象徴する商品だったと思います。
当社が得意としているのは、ガンダムなどのテレビキャラクターをフィギュア化した商品です。今はVTuberもキャラクターの一つとして認められるなど、キャラクターという概念が広がってきています。以前のキャラクターといえば、テレビで流れているものでしたが、多種多様なものが商品になり得る時代です。アンテナを常に高く張り、お客様がどういう商品を求めてるのか常に素早くキャッチすることを現在は大切にしています。
再び子供が楽しめる「ヒットガシャポン」を創出したい
――これからのガシャポンには、どのような可能性があると感じていますか。
ライブなどのイベントと非常に相性が良いことを可能性に感じています。私がこの部署を担当してからは、特にイベントと連動するガシャポンに力を入れてきました。たとえば、アーティストのライブ会場でオリジナルのガシャポンを販売したり、私が担当したものだとプロ野球の球団とタイアップし、球場だけで購入できるオリジナルのガシャポンを作ったりしたことです。非常に多くのプロ野球の球団と一緒にコラボさせていただきましたね。
――コロナ禍で訪日外国人は減少しているものの、日本のカプセルトイは海外からの注目も高まっているそうですね。海外での人気については、どのように考えていますか?
日本に来た外国人が、お土産としてガシャポンを購入する機会が非常に増えています。海外の方にとって日本のガシャポンは、非常に独特な文化だと聞いています。
また、海外でもカプセル自販機が広まってきています。今までは現金のみの購入が一般的でしたが、最近は電子マネーで買えるカプセル自販機も登場しました。特に中国、アジアではQRコード決済が主流になっており、それらを生かしたカプセル自販機のビジネスが加速。当社としても、より世界に向けて強くアピールしていけたらと思っています。
――ありがとうございます。最後に今後のビジョンについて教えてください。
ガシャポン市場そのものは拡大している一方で、大人中心になりつつあります。本来のガシャポンは、子どもがお小遣いを握りしめて買ったり、親と一緒にスーパーに買い物に行ったときに1個買ったりしてもらえるようなもの。これが、ガシャポンの良さだと思っています。子どもにも再び楽しんでもらえるようなヒットガシャポンを創出していきたいです。
KARTE CX VOXの過去の配信は、Spotify、Apple Podcasts、Google Podcastsのほか、「ラジオクラウド」のアプリから聞くことができます。ラジオクラウドはアプリをダウンロードの上、こちらのリンクもしくは、アプリ内で「KARTE CX VOX」と検索してください。