「所有」から「利用」へ、“モノ”に対する価値観が変化しつつある。
車や家、家具、家電など、理由はそれぞれ異なるが「所有すること」よりも「シェアすること」の方が合理的になる場合も多い。今後の消費を牽引するミレニアル世代はシェアすることへの抵抗感も低いと言われている。
では、所有ではなくシェアすることで“モノ”を通した顧客体験はどう変わるのか。商品を提供する側の意識はどう変えなければいけないのか。「家電レンタル」のサービスにヒントがみえた。それは、レンタルした後のアフターフォローだ。手厚いアフターフォローを充実させることで、新品を買うよりも安心という付加価値を提供している。2つの事例を見てみよう。
国内外で注目を集める中長期の家電レンタル
2018年6月末、中国の家電レンタルプラットフォーム「淘租公(TaoZuGong)」は約2.9億円の資金調達をおこなった。同サービスは、ダイソンの掃除機やヘアドライヤー、Blueairの空気清浄機、ブラウンの髭剃りなど海外製家電のレンタル事業をおこなっている。レンタル期間は3ヶ月〜2年間と、中長期のレンタルを想定したサービスだ。
ユーザーは、ダイソンのヘアドライヤーを月129元(約2,150円)で借りられる。日本での定価が48,600円であることを考えると、2年間は割安で使い続けられる計算だ。レンタル期間中に新商品が発売されれば、新しいモノに借り換えることもできるだろう。
同社は2017年9月の設立でまだ1年経たないながら、2018年6月末時点で月間の申込数は3,000件にものぼる。サービス登録者数は50万人ほどいるという。
メーカー自身がレンタルするケースも出てきている。2018年1月にはダイソンが「Dyson Tecnology+」という月額課金サービスを開始。月額1,000円からダイソンの掃除機や空気清浄機、ドライヤーをレンタルできる。
最短2年で最新機種へ交換してくれるため、古くなってバッテリー性能が落ちたり、吸引力が低下したりした機種を使い続ける必要はない。
契約数等は公開していないものの、2018年7月現在受付プラン数の上限数に制限を設けるなど、想定を上回るニーズがあるように見える。
メンテナンスを通しカスタマーの満足度向上と継続的な関係構築へ
これまで家電レンタルサービスは初期コストの低減や、最新の商品を使い続けたいニーズ、引っ越しの手間を省きたいといったカスタマーのニーズを満たしてくれるという点で注目を集めていた。しかし、これからはアフターフォローがより注目するべきポイントになるのかもしれない。「メンテナンス」を通し顧客満足度が高まると同時に、企業側にとってもカスタマーとのリレーションが育まれるからだ。
淘租公では、空気清浄機や浄水器、エアコンなどの場合、フィルター交換や清掃といったメンテナンス・アフターサービスを全てレンタル費に含まれる。ダイソンも同様に、掃除機では点検とパーツ交換を実施。空気清浄機では交換用フィルターを提供してくれる。手間がかかり忘れがちなメンテナンスを事業者側が定期的に提供することで、カスタマーは最適なパフォーマンスを発揮できる状態で商品を利用できる。
製品が本来の機能を発揮できる状態で使い続けられることは、カスタマーの体験向上にも寄与する。メンテナンスを通し「適切な状態で使い続けてもらう」ことがその助けになるはずだ。
販売後、商品がどのような状態で使われているかをコントロールするのは難しい。使い方によって本来の性能を発揮できていなかったり、ついメンテナンスを怠ることもあるだろう。結果、性能を発揮できず顧客の満足度低下につながる可能性も否定できない。定期的なメンテナンス機会は、その損失を防ぐ役割を担っている。
加えて、顧客接点を持ち続けることが顧客ロイヤルティの向上にも貢献する。売り切りではなく、継続的に関係性を築くことは良い体験、良いブランドイメージを積み重ねることにもつながるはずだ。
シェアの時代にブランドとカスタマーはどのように関係性を築いていくいくのか。今後もさまざまな事例から学び取っていく必要があるだろう。