XDを運営するプレイドが、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2020年5月11日から14日の放送では、ライフスタイルショップ「AKOMEYA TOKYO」を紹介した。お米を中心に、ごはんのお供やごはんをおいしく食べるための道具や器などの雑貨も販売するAKOMEYA TOKYO。都内を中心に14店舗を構え、和食レストランなども展開している。
放送では、サザビーリーグのAKOMEYA事業部で事業部長を務める高井伸夫氏に、商品のコンセプトやそこに込められた思い、店舗やWebショップでできる体験を伺った。
本記事では、放送内容をまとめ紹介していく。
自分たちが見た産地のすばらしさや生産者の努力も伝えたい
――最初に、AKOMEYA TOKYOのブランドコンセプトにある「お福分けのこころ」という言葉について聞かせてください。ここにはどのような思いが込められているのでしょうか。
AKOMEYA TOKYOは当初、「一杯の炊きたてのごはんから、つながり広がる幸せ」というコンセプトで、おいしいごはんを食べるためにはどうすればいいのかを模索するため、全国のお米を集めたり、炊き方を研究したりするところからスタートしました。そのうち、おいしいお米を食べるためには、土鍋などの道具やごはんのお供も大事だなと、取り扱う商品が広がっていったんですね。
そうやって、良いお米やおいしいごはんのお供を探しに産地を訪ねると、日本のすばらしい文化や技術、農家さんや漁港さんの努力、技というのがだんだんとわかってきました。そんな自分たちが産地で見たり聞いたりしたことをお客様にもお伝えしたい、お分けしたいという気持ちが、「お福分けのこころ」というブランドコンセプトに込められています。
――この「お福分けのこころ」を、AKOMEYA TOKYOではどのように実践していらっしゃいますか?
「お福分けのこころ」のモットーとして、食べ比べができるよう、全国の良質なお米を20種類以上揃えています。一つひとつのお米も、「○○県の誰々さんが作った」というふうに、生産者さんがわかるようにしています。さらに、精米したてで食べてもらうため、全国4店舗のお店には精米機を用意。売り場が小さい店舗の場合は、真空パックでのご用意をしています。
また、自社で運営しているレストランでは、土鍋や羽釜(はがま)で炊きたてのごはんを食べ比べしていただけるようにしました。AKOMEYA TOKYOで取り扱いのある食品を、その場で食べられる体験型としてのレストランを目指しています。このような形でお米にこだわり、「お福分けのこころ」を実践するようにしています。
あらゆるAKOMEYA TOKYOの体験ができる、神楽坂の旗艦店舗
――販売店でもレストランでも、お客様の体験を重視しているんですね。その他に、店舗で工夫されているポイントなどはありますか?
販売店だと、お米のミニおにぎりを毎回握って、お客様に食べていただくようにしています。私たちはお米の種類だけでなく、「もっちり」や「あっさり」など、それぞれが持つ特性にもこだわっています。一緒に合わせる具材も、その時々における旬なものであると同時に、それぞれのお米の特性に合わせた食材を体験いただけるようにしています。
もう一つは、AKOMEYA TOKYO一押しの出汁を使ったフリーズドライの味噌汁をお客様に飲んでいただくことです。ミニおにぎりもフリーズドライで作った味噌汁も、買ってご自宅で試す前に当店で食べていただけるよう、全店で提供しております*)。
*)編集部注釈:新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、当面の間、店頭での試食は休止しているそうです。
――その中でも、神楽坂にある「AKOMEYA TOKYO in la kagū」は、特に体験にフォーカスされた店舗だと聞きました。
はい。「AKOMEYA TOKYO in la kagū」はフラッグシップショップ、旗艦店舗と位置付けて、やりたいことをすべて詰め込みました。通常のお店よりも大きく、上下合わせて300坪弱ある店内には、レストランや食品の販売はもちろんのこと、雑貨や洋服、ファッショングッズまでが手に取れるといった、あらゆるAKOMEYA TOKYOの体験ができる施設となています。
中でも、新潮社様にお借りしている「soko」というスペースでは、「食べる」「飲む」「作る」「使う」「着る」など、ありとあらゆるテーマで体験型イベントをおこなっています。昨年は、秋田の曲げわっぱを作る教室や親子で椅子を作るワークショップを開催したり、屋外で農家さんのマルシェを催して野菜の即売会をしたりしました。私が個人的に一番大好きだったのは、熱燗教室でしたね。こだわって飲む方法を、みんなで教えてもらうというものでした。
「おいしいごはん」を求め続けて生まれたヒット商品とは
――20種類以上扱っているお米の中で、特に人気のある商品はありますか?
一番のヒット商品は、島根県の飯南町で作られたコシヒカリです。AKOMEYA TOKYOとして、「お福米」という称号をつけさせていただいています。飯南町は高い山の中にあり、広い田んぼがないので少量しか作れないのですが、非常に研ぎ澄まされたお米ができます。「どうしておいしいお米ができるのか」と聞いたところ、寒暖の差でお米が引き締まることと、良いお水で生産していることが理由でした。飯南町の皆さんと一緒に開発したのがこのお福米です。
完成後、あまりに嬉しくて近くの出雲大社様へご奉納をお願いしたところ、ご祈願くださったというエピソードもあり、引き出物や贈り物としても喜ばれるアイテムとなりました。
――ごはんのお供としてのヒット商品は、何になるのでしょうか。
「鰤と梅干しのカレー」「マトンと山椒のカレー」という2種類のレトルトカレーです。変わった味なんですけれども、お客様から非常に人気があります。日本人シェフのインド料理グループ「LOVE INDIA」の一員である「SPiCE Cafe」の店主、伊藤一城シェフが考案してくれたものです。通常のインドカレーではなく、「AKOMEYA TOKYOのお米に合うカレーを」と無茶なお願いをしたところ、研究を重ねて開発してくださいました。
日本のお米の特徴は、ずっしりとした重み。そのお米の上にどれほどカレーが残るかという「汁通り」と、ごはんとカレーがどれほど絡み合うかの「汁絡み」、そしてお米の一粒一粒が独立しており、食べたときに米粒が味わえること。伊藤シェフがおっしゃるには、この三つが重要になるということでした。カレー一つとっても、日本のごはんと合わせるために熱心に研究してくれる伊藤シェフのような方がいること。ごはんをおいしくする技というのは、限りなくあるということを感じましたね。お客様にも楽しんでいただけたらと思っています。
おいしくごはんを食べる方法を一つひとつ丁寧に表現する
――新型コロナウイルスの影響で、店舗では従来のような販売が難しくなりました。AKOMEYA TOKYOもWebショップを注力されていますが、どのような違いを感じていますか。
Webショップは、「試食ができない」「匂いも嗅げない」「直接お話ができない」といったマイナスな部分も多いです。ただ、逆に売り場ではなかなかできない「読む」ことができるので、商品の説明をするには店頭よりもWebのほうが優れていると感じています。
2018年からWebショップ上で「AKOMEYA通信」という読み物を掲載しています。主役はもちろん、産地や技術者、匠の方々。忙しくてなかなか丁寧に説明できない店頭よりも、ご家庭でゆっくりコンテンツを読んでいただいて、納得した上でご購入いただく。生産者とお客様を結ぶツールとしては、店頭販売よりもWebショップのほうがいいなと思ってます。
――最後に、AKOMEYA TOKYOがこれから目指していく未来について聞かせてください。
サザビーリーグのスピリットは「It’s a beautiful day」。何気ない日常に、かけがえのない、ささやかな幸せを、という発想です。簡単に言っているんですけど、晴れの舞台を演出するよりも人々の日常を変えるのは、非常に難しいことだなと思うんですね。
でも、そのヒントになることが先日、ありました。渋谷の東急プラザに「AKOMEYA食堂」というレストランをオープンして、そこでは朝早くから卵かけごはんを提供させていただいています。10分くらいという短い時間の中で、炊きたてのごはんで卵かけごはんを食べ、「さあ会社に行くぞ」と気分を変えたい方々にご利用してほしい。こうしたAKOMEYA TOKYOの思いは、朝ごはんの在り方、つまりは日常を変えているのではないかなと*)。
レストランだけでなく、家庭でも家族で食べる夕食や昼食、お弁当など、卵かけごはんのようなおいしくごはんを食べるちょっとした工夫がいっぱいあると思うんですね。それを一つひとつ、丁寧に表現すること。これがAKOMEYA TOKYOの唯一、最大の使命かなと考えています。
*)編集部注釈:新型コロナウイルス対応に伴う営業時間変更のため、当面の間、朝食メニューの提供を見合わせているそうです。
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