XDを運営するプレイドが、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2020年6月8日から11日の放送では、原宿のスニーカー専門店「WORM TOKYO」を紹介した。人気の最新モデルはもちろん、世界的にも入手が困難なスニーカーやオールドスニーカーなど、1000足以上のスニーカーを展示、販売しているWORM TOKYO。国内だけではなく、海外からも多くの観光客が訪れているという。
放送では、WORM TOKYOが掲げるコンセプトや店舗体験を通してお客様と向き合っているのか、その背景にある思いについて店長の近藤直輝氏に話を伺った。
本記事では、放送内容をまとめ紹介していく。
世界基準のスニーカーカルチャーを世界中に広めたい
――WORM TOKYOはどのようなコンセプトをもとに始められたのでしょうか。
世界基準のスニーカーカルチャーを日本に、ひいては世界中に広めていきたい。これが他のスニーカー店にはない、一番のコンセプトだと思います。お客様のうち半分ぐらいは海外からいらっしゃる方で、旅行の目的が「WORM TOKYOに来ること」という人も多いです。そういう意味では、このコンセプトが世界中に広まりつつあると感じています。
――店舗では、1000足ほどのスニーカーが展示されていると聞きました。在庫はどのくらいを保持しているのでしょうか。
目安ですが、恐らく4000から5000足、もしかしたらもう少しあるかもしれないですね。スニーカーカルチャーが発展するとともにジャンルもかなり幅広くなってきているので、商品を充実させることは大事だと思っています。
最近は、「WORM TOKYOになら自分の探している1足が見つかるかもしれない」とお客様に信頼して通っていただいたり、お客様同士のコミュニティで「WORM TOKYOならあのスニーカーあるよ」と口コミを広げてくれたりすることも多くて。商品の幅を増やしたことで、スニーカーを探すときの第一候補に当店を選んでいただくことが増えています。
消費するだけではない、ストーリーも含めて商品を販売
――商品の仕入れは、どのようなルートで行われているのでしょうか。
ベースはお客様からの買い取りと、コレクターさんからの仕入れです。基本的に、年月が経って古くなったスニーカーは値段がつけられません。しかし私たちは、ベースが生きていたり、デザイン性が優れていたりすれば、なるべく買い取りするように心がけています。
また、普通の店舗では10足まとめてとか、ダンボールの中全部でいくらといった値づけをするところも多いかもしれません。当店の方針は、1足1足の価値をしっかり見極めること。お客様が大事にしてきた背景も踏まえ、なるべく丁寧に仕入れるようにしています。
お客様の中には、学生の頃に買って大事に持っていたけれど、しばらく履いていなくて……といったストーリーのある商品を譲ってくださる方も結構いるんです。そういう商品を安易に買い取るのではなく、なるべく希望に添える形で大切に扱いたいと思っています。
――スニーカーのトレンドは、移り変わりが早くなっているように感じます。変化が激しい中で、WORM TOKYOとして大切にされている点は何でしょうか。
流行に乗りすぎないというか、古くても私たちがカッコいいと思ったものや、「あまり注目されていないけれど履いたらいい感じだよね」と思える商品を、トレンドとは少し違った視点でチョイスして、お客様に提案することを大切にしています。
また、他のお店ではあまり見かけないような、ビンテージモデルや希少なモデルを取り扱うことによって、スニーカーカルチャーが学べる空間作りも心がけています。
私は、スニーカーはカルチャーありきだと考えていて。単純に消費されるスニーカーではなく、そのスニーカーから学べる背景や、どういう人が履いて、どういう変遷をたどって人気が出たのかも、しっかり伝えていけるようにしたいと思っていますね。
購入だけではない、体験型の店舗デザインに込めた思い
――WORM TOKYOは、2018年8月に中目黒から原宿に店舗を移転されました。店舗のデザインの観点で変えた点や工夫されたことがあれば教えてください。
お店を作る際に一番こだわった点が、店内に入って最初に見える部分の展示です。
スニーカーカルチャーで一番人気の「AIR JORDAN 1(エア ジョーダン 1)」のオリジナルモデルをラックに展示して、スニーカーの壁のように陳列しています。
WORM TOKYOは、最新の商品だけではなく、古いものや、スニーカーカルチャーのベースといえるものも大事にしています。そのため、AIR JORDAN 1のオリジナルモデルの良さを、お客様に見ていただくというのはかなり意識して作りましたね。
また、購入する場としてだけではなく、博物館じゃないですけど、あまり見ることができないレアなスニーカーを展示して、手に取って見ていただけるようにもしました。スニーカーのことをあまり知らない方にも魅力を届けられる店舗にできたらと思っています。
――博物館のように手に取って見ることができる楽しみも提供しているのが、お客様の満足度につながっていそうです。他にも、来店することで得られる体験はあるのでしょうか。
新品以外にも、ビンテージのデッドストックコーナーを設けています。このコーナーにある商品は箱にすべて閉まっている状態です。箱を開けて、中身を確認して、ようやくどういうスニーカーが入っているかわかる。この開けて初めてわかる感覚が、掘り出し物の古着やレコードを見つけたときの感覚にすごく似ていると思っていて。
以前、2000年生まれの高校生のお客様が訪れたとき、1980年代に出たスニーカーを見つけて、「今出ているモデルよりカッコよくて、探して良かった」といった声をいただいたんです。その時は「このコーナーを設けて良かった」と思いましたね。
カルチャーとリンクするという点で、スニーカーを広めたい
――新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、現在は開催予定がないものの、WORM TOKYOはイベントも多く主催されていたのが特徴的でした。なぜスニーカーショップが、イベントを手がけることになったのでしょうか。
スニーカーは単体よりも、それを取り巻くファッションカルチャーであったり、音楽の文化が重なり合ったりして、良いものが生まれると考えています。そのため、WORM TOKYOとしても店舗単体で成立させるのではなく、いろいろなカルチャーが混ざり合うようにイベントを開催することで、ようやく生まれる何かがあるかなと思っているのです。
今は難しいですが、落ち着いたらイベントをやりたいなと。今まで関わらなかった人たちとコミュニケーションをとることで、いずれ他の事業なんかにも進出できたら嬉しいです。
――最後にWORM TOKYOが考えるスニーカーカルチャーの楽しみ方を教えてください。
ファッションカルチャー全体の入り口というか、憧れの人と同じ商品を履いていれば同じ気持ちになれるという、一番手軽なツールにスニーカーがなれると思っています。
憧れの人が来ているブランドもの服だと、若いお客様がマネをして購入するには金額的に難しいこともあるでしょう。しかし、白の「Air Force 1(エアフォース1)」であれば、恐らく1万円程度か、もう少し安い金額でも手に入れられるでしょう。
もちろん購入いただけるのは嬉しいのですが、私たちとしては売る買うだけではなく、好きなアーティストがあのスニーカーを履いていたから、あの商品を調べてみようとか。カッコいいスニーカーを履いているアーティストを見つけたことを入り口に好きな音楽と出会うなど、カルチャーとリンクするという点でスニーカーを広めていけたらと思っていますね。
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