XDを運営するプレイドが、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2020年12月14日から17日の放送では、藻の一種である微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)を活用し、食品や化粧品の販売、バイオ燃料の研究開発などを行っているユーグレナ社の顧客体験を紹介。わかめや昆布の仲間で、5億年前から存在するユーグレナ。そこに含まれている多くの栄養素に注目し、世界初の食用屋外大量培養に成功させ、食品としての販売を開始したのが、バイオベンチャーである同社だ。
放送では、ユーグレナ社の創業経緯やコーポレート・アイデンティティ「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」を通じた新規事業への取り組みなどを、広報マネージャーの北見裕介氏に伺った。
栄養失調の問題を解決したい、ユーグレナ社が生まれるまで
――微細藻類ユーグレナが食品になるという新しいイメージを作り上げるまでに、どのようなブランドストーリーがあったのでしょうか。
創業のきっかけは、社長の出雲が大学1年生のときに、バングラデシュで栄養失調の現実を目の当たりにしたことでした。当時のバングラデシュは、世界で最も貧しい国の一つ。出雲は、「お腹をすかせた人たちがたくさんいるのではないか」と思っていましたが、実際は違いました。米や豆などはたくさんあった一方で、野菜や肉、魚などの生鮮食品がなく、ビタミンやミネラル、鉄分などの栄養が不足していました。大人から子どもまで具合が悪い状態です。
栄養失調の問題をどうにか解決したい。日本に帰国して栄養豊富な素材を探し求めた結果、微細藻類ユーグレナにたどり着きました。当時、出雲が探していたのは、漫画のドラゴンボールに出てくる一粒で万能な「仙豆」のようなもの。それに近いものがなにかないのかと探し回わり、大学の友人に教えてもらったのが藻類ユーグレナでした。
――1粒食べると10日間は何も食べなくてもいい、仙豆をイメージされていたんですね。一方で、商品化までには、高いハードルがあったと伺いました。
それまでもさまざまな方がユーグレナの研究を進めていて、豊富な栄養素は確認されていました。しかし、大量培養ができないため、商品化というのは当時、夢のまた夢でした。そのような中で、当社の創業メンバーであり、出雲の大学時代の後輩である鈴木が石垣島で初めて培養を成功させました。
世界では「ユーグレナ」という名称で呼ばれており、ミドリムシは日本固有の呼び名です。東大発のベンチャーとして当社はスタートしていますが、ユーグレナで世界を救うという信念のもと、その藻類の名をそのままいただき、ユーグレナという社名に決めました。ユーグレナは、ラテン語が由来です。「ユー」が美しい、「グレナ」が瞳を表しています。すごくきれいな名前なので、私たちとしても皆さんにユーグレナという名前で親しんでいただければと思います。
サステナビリティ・ファーストで、健康と環境にアプローチ
――2020年8月、企業理念、ビジョン、スローガンを廃止し、ユーグレナ・フィロソフィーとして「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」に統一されました。なぜこのタイミングで刷新されたのでしょうか?
創業者の出雲の「栄養失調の問題を解決したい」という想いから、これまでもこれからもその悲願達成に向け、歩みを進めます。創業してから初めて商品化となった日本科学未来館で販売するクッキーはお土産物として今も人気です。食品・化粧品としての商品化、そしてバイオ燃料の供給開始など、少しずつですが会社としての成果を出してきました。
しかし、創業から15周年というタイミングで、創業の意図に立ち戻ってコーポレートアイデンティティーを見直す必要があると考えたんです。この15周年で実際に採用した言葉は、「サステナビリティ・ファースト」。これをすべての行動の基準として、事業を推進しています。
――新商品も発売したとお聞きしました。サステナビリティへのかかわりはどういったものなのでしょうか。
2020年の3月に「からだにユーグレナ」というブランドをスタートしました。ユーグレナはさまざまな魅力があるゆえに、良さが伝わりづらいという課題があります。そこで「つくる・はたらく・まもる」と分かりやすい言葉にして、商品をリニューアルしたんです。
もともと健康を気にするシニア層を中心に需要があった商品ですが、小さいお子さんがいらっしゃるご家庭でも喜んでもらえる商品であると考えています。そこで、健康が気になる世代とお子さんがいらっしゃる方の両方に手に取ってもらいやすいように、パッケージをわかりやすく緑色の水玉にしました。その結果、とてもありがたいことに多くの方に手にとっていただけるようになってきています。
「からだにユーグレナ」とサステナビリティの関わり方は大きく2つあります。一つは、健康寿命の延伸に寄与する商品をつくっていきたいということ、もう一つはペットボトルのパッケージを採用せず、環境負荷が比較的低いと言われている紙パックを採用していることです。今の日本は、健康寿命と実際の寿命の乖離が問題になっています。私たちは、新しいブランドを通して健康に過ごせる期間を1日でも延ばしたいと思っています。
ユーグレナ入りクッキーの配布で、バングラデシュに元気を
――コーポレート・アイデンティティの変更は、新しい事業展開にもつながったそうですね。
私たちは、「地球や社会の未来のためを考える事業以外はやらない」というスタンスで、2020年を駆け抜けてきました。そのため、今は「サステナビリティ・ファースト」という言葉が社内全員に浸透している状況です。実際に、一人ひとりの仕事や活動にも必ずサステナビリティに寄与しているかを、つど振り返りながら進行しています。食品の事業以外にも、バイオ燃料や遺伝子解析、化粧品など、さまざまな事業が「サステナビリティ・ファースト」を基本に展開しています。
――世界の栄養状況を改善するための取り組みも始められたと伺いました。
はい。当社の創業理由は、バングラデシュにおける栄養失調の問題を解決するためです。言い換えれば、栄養問題を解決するために作られた会社と言っても過言ではないのです。
創業時の思いを形にするために、現在はバングラデシュで「ユーグレナGENKIプログラム」を実施しています。「からだにユーグレナ」や化粧品など商品の売上の一部を活用して、バングラデシュの子どもたちに栄養豊富なユーグレナ入りクッキーを配るプログラムです。
2014年からスタートし、累計配布数は1000万食を突破しました。しかし、現在はバングラデシュも新型コロナウイルスの影響にさらされています。ロックダウンされていたので、「ユーグレナGENKIプログラム」の活動も制限せざるを得ませんでした。ただ、現地スタッフと連携して、地域限定で1軒1軒にクッキーを届けるなど、活動を続ける方法を模索し続けています。現在は日本のスタッフもバングラデシュに入り、衛生に配慮しながら活動を再開しました。
ユーグレナを使ったバイオ燃料で「飛行機」を飛ばしてみたい
――サステナビリティ・ファーストを基本とした新しい事業、バイオ燃料の製造にも取り組んでいる同社。既にユーグレナを原料に使用したバイオ燃料で車両が走っているそうですね。
植物が油分を持つように、ユーグレナも油の成分を持っています。これまでの研究のなかでその油が燃料に向いていることもわかっていて、当社としてのバイオ燃料事業へのチャレンジがスタートしました。バイオ燃料は、気候変動問題の解決に寄与できる可能性があります。ユーグレナは、温暖化で一番の原因とされている二酸化炭素を光合成で吸収するのと、他の植物よりも二酸化炭素の吸収率が高いことが分かっています。
現在、弊社のバイオ燃料は、車両・船舶への導入がスタートしました。ファミリーマートの配送車やセブンイレブンのペットボトル回収車など。また横浜・鶴見区を走る臨港バスや西東京市を走る西武バスにも導入されています。その特徴は、今ある車両にそのまま導入できること。そのため、昨日までディーゼルで走っていた車が、急にエコカーに変わることも可能なんです。
――最後に、ユーグレナの今後の展開について教えて下さい。
バイオ燃料を飛行機に導入することが目標です。国産のユーグレナバイオ燃料で飛行機を飛ばすことは、私たち社の仲間だけでなく、多くの方にとっても、すごく夢があることと思います。絶対に実現したい、その想いを胸に事業を進めています。
ユーグレナは食物連鎖の中で最も弱い立場にあります。だからこそ、従来は大量培養がすごく難しかったんです。すぐ食べられてしまうような藻類ですが、だからこそ栄養素や油分が豊富とも言えます。農業で使用する土にも肥料として使える可能性が分かっていますし、今後は代替プラスチックにも展開していきたい。これからもユーグレナの可能性はどんどん広がっていくと考えています。
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