XDを運営するプレイドが、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2020年12月21日から24日の放送では、環境に配慮したシューズやアパレルを作る「Allbirds」のCXを紹介した。Allbirdsは2016年に米国サンフランシスコやニュージーランドでオンラインストアをスタート。米国のTIME誌で「世界一履き心地がいい靴」と評されたのが大きな話題となり、現在は世界規模でファンを獲得している。
放送では、Allbirdsマーケティングディレクター蓑輪光浩氏に、ブランドコンセプトやサステナブルな商品への取り組み、日本の原宿店で体験できることなどを語ってもらった。
本記事では、放送内容をまとめ紹介していく。
Allbirdsが戦うのは、メーカーではなく地球環境
――はじめに、Allbirdsのブランドコンセプトを教えてください。
孫の世代まで誇れる仕事をすること、を大切な言葉として掲げています。世界中では年間200億足もの靴が廃棄されています。廃棄する際にも土に返るわけではないので、燃やしてそのごみを埋め立てる必要があるのです。このようにファッション業界が地球に与えている負荷は非常に大きい。そこでサステナビリティを軸として、シンプルなデザインや快適さを追求したシューズ作らなければいけないということから、Allbirdsは始まりました。
――Allbirdsのシューズは、どのように環境に優しいのでしょうか?
代表的な商品は、メリノウールから作られる「Wool Runners」というシューズです。ウールならではの暖かさや柔らかさ、通気性、保温性を兼ね備えています。羊の毛はあまり匂いがないのも特徴です。ソールには、石油由来のEVAの代わりにサトウキビを使用しています。
サトウキビは生育する段階で光合成を行います。二酸化炭素を吸収して酸素を放出します。サトウキビでソールを生産する際には工場にて二酸化炭素を排出します。排出する二酸化炭素と酸素の量を比較すると、サトウキビを使えば環境負荷が低くなります。このサトウキビ由来のソールはオープンプラットフォームにしているので、いろんな会社に自由に使っていただいています。最近ではTimberlandやUGGの製品にも同様の技術が使われています。
我々が戦うのは、競合メーカーではなく地球の環境です。製造ノウハウをオープンソースにすれば、需要も増えるし、研究開発費も上がっていくはず。そうすると世界全体でイノベーションが起きて、サステナブルの裾野が広がり、環境への負荷も低くなっていくと考えています。それが最終的にAllbirdsにとっても大きなメリットになります。
また、ペットボトル由来の100%再生ポリエステルを使用したシューレースやヒマシ油を使ったインソールなど、なるべく天然由来で環境負荷が低い素材も使用していますね。
カーボンオフセットを見て、商品を買う文化を
――原宿の店舗では、環境に貢献する感覚が具体的な体験として得られるそうですね。
Allbirdsの各商品には「カーボンフットプリント」がついています。この数字は、商品を作る際に排出される温室効果ガスの量です。食品にはカロリー表示が記載されていますよね。カーボンフットプリントは、ファッションのカロリー表示と似たようなものと思ってください。
カロリーを気にする方が増えて食に対する意識は高まっていますが、着るものや履くものに対する意識はまだまだ低い。ファッションに対してどれだけの“カロリー”がかかっているのか表示することで、その数値の大小で購入物を選ぶような世の中になってほしいと考えています。
このカーボンオフセットは商品を購入される方に理解いただきたいのもありますが、他にも意味があります。社内において、「この靴は7.2kgの温室効果ガスを排出しているから、次のバージョンでは7.1kg以下に抑えよう」という意識を作る目的もあるんですよ。
――購入する方々は、こうした環境への取り組みを支持されているのでしょうか?
私たちの調査では、欧米だと「サステナビリティ」を購買の要因にする方が7割ほどいると分かっています。しかし、日本ではまだ35%ほど。ただAllbirdsを日本展開して約1年、徐々にサステナビリティへの意識が高まっていると感じます。
サステナビリティについて真摯に考えている方々は、20代中盤から40代前半に多く見られます。たとえば、本業以外にSDGsに関連した活動をしていたり、ボランティアでビーチクリーンや山岳ガイドをされたりなど、自然を守るムーブメントも起きていますよね。
サステナビリティがあるから人気なのではない
――原宿の店舗には、何をきっかけに来店される方が多いですか?
雑誌『TIME』に“世界一快適な靴”と紹介されているのを見聞きして、「どんな製品なのかな?」と、足を運んでくれている方が多いですね。そして実際に履いていただき、軽さや柔らかさ、シンプルなスタイルに好感を持っていただいています。
サステイナブルな商品性については、WebサイトやSNSなどの投稿を見て、すでに理解されているお客様が多いです。地球に良いことをすると、気持ちが良くなる感覚がありますよね。そういった体験も含めて、リピートしてくださるお客様も多いと感じます。
まずは自分用に1足買い、その後すぐに2~3足と買っていただいたり、ご家族やパートナーにプレゼントされたりしてくださる方も多いです。中には、環境問題に対してアクションを起こしている方が、率先してallbirdsを履いてくださっていることもありますね。
――商品のストーリーや履いたときの気持ちを誰かに共有したくなるプロダクトってステキですね。蓑輪さんはサステナビリティとプロダクトの関係をどう捉えていますか?
強調したいのは、サステナビリティがあるから人気が出るのではないということです。「デザイン」「価格」「履き心地」といった靴を購入する要因が担保されて、かつサステナビリティがある。そのストーリーに共感する方が多いのだと思います。
地球環境が蝕まれているのを多くの方が肌で実感しているので、何かアクションできないかと、多くの有名な経営者やレオナルド・ディカプリオ氏などハリウッドの方々が、早い段階でAllbirdsの靴を履いてくださいました。私たちが何かを仕掛けたのではなく、環境意識の高い方々が徐々に広めてくださり、今のAllbirdsがあるのだと考えています。
靴に限らない、アパレル商品のラインナップも
――フットウェアから始まったAllbirdsですが、最近はアパレル商品のラインナップも充実していますね。
シューズから始まって、今ではソックスや下着、Tシャツ、ニット、カーディガン、ジャケットといったラインナップも展開しています。Allbirdsの靴は洗濯できる点が非常に人気ですが、アパレルは普段から靴以上に洗濯しますよね。
しかし、洗濯機を回すと電力を消費するので、環境に与える負荷も少なからずあります。そこで私たちは、なるべく洗濯の回数を減らすことを意識し、汗をかいても臭いがこもらず、汗を放出するような素材を使っています。たとえば、Tシャツはメリノウールをベースに作っていますが、ズワイガニの殻から抽出したキトサンという成分を5%ほど入れています。このキトサンには消臭効果があるので、臭いがほとんど気になりません。
――ありがとうございます。最後に、今後のビジョンについて教えてください。
みなさんがファッションを楽しむ理由は、「feel good」「look good」だと思います。このうちlook goodは、カッティングやカラーなどで体験できますが、feel goodはプロダクトの触り心地、それからサステイナブルな商品を着用することによって体感できます。Allbirdsによって、地球環境に貢献している気持ちの良さを感じていただけたら嬉しいです。
3〜4年前には、サステナブルなプロダクト自体がほぼ存在していませんでした。しかし、世の中がダイナミックに変わり、現在のヨーロッパではサステナブルでないとビジネスの土俵にすら乗らないと聞きますし、日本も変わり始めています。ということは、さらに3〜4年後には、今とはまったく違うファッション業界になるのではないでしょうか。ぜひ他のブランドと手を取り合って、サステナブルな時代に進んでいきたいですね。
KARTE CX VOXの過去の配信は、Spotify、Apple Podcasts、Google Podcastsのほか、「ラジオクラウド」のアプリから聞くことができます。
ラジオクラウドはアプリをダウンロードの上、こちらのリンクもしくは、アプリ内で「KARTE CX VOX」と検索してください。