XDを運営するプレイドが、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2020年2月10日から13日の放送では、アート・パフォーマンス・エンターテインメント「ブルーマン・グループ」(以下、ブルーマン)を紹介した。18ヵ国38都市を巡ったツアーでは3500万人が熱狂。国内では2007年にアジア初のロングラン公演を東京六本木でおこない、多くの人々に愛されるコンテンツとなった。2019年には大阪や名古屋でも開催されている。
放送では、ブルーマンを日本に招へいしたトリックスターエンターテインメント代表の新井勝久さんにその出会いやロングランでの公演にこだわった理由、舞台の未来などを伺った。
本記事では、放送内容をまとめ紹介していく。
素直な気持ちで「この瞬間が最高に楽しい」と思える体験を
――日本に招へいした“仕掛け人”ともいえる新井さんですが、ブルーマンとはどのようなきっかけで出会ったのでしょうか。
約20年前なのですが、ブロードウェイで行われているブルーマンのショーを見に行ったことが最初の出会いでしたね。見終わったとき、心臓をわしづかみにされている自分に気付いたんです。「これは絶対に日本にもっていきたい」と強く思いました。
当時はエンタメ業界でなく広告業界で働いていたのもあり、招へいまでのやり方が全く分からなくて。色んな人に力を借りながら、6年かけて実現できました。
――自身で体験したことがきっかけだったんですね。長い年月をかけてまで、新井さんがブルーマンを通して日本の方々に届けたかった体験はどのようなものだったのでしょうか。
大人になるとともに身に付けてきた常識やしがらみなどをショーを通じて取り払い、素直な気持ちで「この瞬間が最高に楽しい」という感動を体感してもらうことです。これはブルーマンがショーを通して伝えたいメッセージと同じです。エンタメにあまり触れてこなかった私も実際に見て本当に感動したので、日本の方々にもその体験を届けられたらと思っていました。
ブルーマンのショーは、お客様によって毎回雰囲気が異なる
――2007年から東京でのロングラン公演が始まりました。海外では人気コンテンツだったブルーマンですが、日本で受け入れられるか不安はなかったのでしょうか?
いろんなハードルを乗りこえて実現したので、不安よりも喜びの方が大きかったですね。エンタメ業界で働いた経験がなかったので、可能性があるかどうかも全然判断できなくて。ニューヨークで長く続いている世界的なショーであること、自分が見て感動したことから「ロングランでも大丈夫だろう」と、ある種の思い込みがありました。
――自分の直感と感動を信じるのは大切ですよね。そこから全1388公演で約80万人を動員するなど人気を博しましたが、国内では何か特徴的な取り組みはされたのでしょうか。
お客様を巻き込み、舞台に出演してもらうことです。例えば、公演の中にブルーマンとお客様が一緒にご飯を食べるシーンがあるのですが、それがノリの良いおばあちゃんだったりすると、会場の雰囲気はまた違った盛り上がり方をするんですよね。終演後には、おばあちゃんがロビーで囲まれてスターになっている光景が見られたりするんです。
私は1000回以上公演を見ていますが、お客様によって毎回雰囲気が異なるので、同じものを見ている感覚はありません。こうした要素がロングランでの成功につながったと思います。
熱狂的なファンやリピーター以外の方々にも体感してほしい
――ロングランでの公演にこだわった理由は何かありますか?
映画や美術館もそうなのですが、期間が短いと「見たい」と思っていても、タイミングを逃して終わっていることが結構ありますよね。ロングランの公演をすることで、熱狂的なファンやリピーター以外にも、いろんな層の方々に見ていただく機会を作りたかったんです。
あるとき、修学旅行の学生さんが100人ほどいらっしゃって。一人の男の子がトイレで私の存在を知らず、友達に「俺は今日、この日を一生忘れない」と言っていました。「ロングランに踏み切って良かった」と思いましたし、その光景が今でも印象に残っています。
――長く続けてきたからこそ見えた光景ですね。
はい。もう一つこだわった理由があって。日本は他の文化で育ったものをローカライズして発信するのが得意ですよね。たとえば、フレンチやイタリアン、中華などの食事も一つの例です。舞台も同じように、世界中の作品を日本向けにローカライズし、ロングランで行われる公演が増えると、より良い舞台の未来が見えてくると思っています。学生のエピソードにあったように、多様な人々にその存在が受け入れられるようになるかもしれません。
長期的な戦略を作れる人材を育てていくことが重要に
――ロングランでの公演を今後、日本で増やすためには何が必要になるのでしょうか。
もちろんコンテンツの強さはあるのですが、それを支えるスタッフの育成が重要になると思っています。まずはブルーマンのような実績のあるコンテンツで、長期的な戦略を作れる人材を育てていきたい。時間はかかると思いますが、ノウハウを身に付けた人材が新たなコンテンツを支える仕組みを作れたら、ロングランの作品は増えると思っています。
――最後に、新井さんが考える舞台の可能性について聞かせてください。
東京とニューヨークのブロードウェイで比較してみると、劇場の数はそこまで変わらないのですが、観客数だと年間で2倍ほどの差がついているというデータがありました。
何が違うかというと、施設やコンテンツが集積化されていることで、普段舞台を見に行かない人でも「ニューヨークに行ったら舞台を見よう」と想起させていること。東京は訪日外国人観光客が増えていますが、エンタメコンテンツを想起してもらえていません。この差を考え、魅力を増やせると日本における舞台の可能性はまだまだ拡大できると思っています。
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