XDを運営するプレイドが、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2021年2月8日から11日の放送では、健康的な消費体験を提案するアパレルブランド「foufou(フーフー)」を紹介した。同ブランドは、新型コロナの影響でアパレル業界の苦戦が報じられる中、2020年2~5月の売り上げは、前の年に比べて200%になったという。
放送では、foufouが多くの人々をひきつける理由を、提供する体験価値と紐付けながら、デザイナー兼代表を務めるマール・コウサカ氏に話を伺った。
本記事では、放送内容をまとめ紹介していく。
ブランドとして一番大切にしたいお客様との関係を守るため
――foufouではセールを行わないそうですね。最初に、その理由を教えて下さい。
誰のためにセールをやっているかを考えたときに、ブランドとして一番大切にしたい「定価で購入してくださったお客様」のためになっていないのではないかと考えていました。
たとえば、「30%オフ」「50%オフ」と値下がりしていくと、一番損しているのは定価で購入した方です。たしかに、セールで欲しい商品を安く買えることは嬉しいですが、これによってお客様との関係性が健康的でなくなってしまっていると思っていたんです。
また、セールのために、値下げする前提の価格設定にしたり、原価を落としたりしなければならない。生地代は一定のため、人件費や工場にお支払いする工賃などが結果的に下がってしまうのも不健康だなと。アパレル業界で当たり前になっているセールをやらないブランドがあることで、業界に対してプラスのイメージを持ってもらえたらと考えています。
――セールをしないことが、顧客満足度を高める要素の一つともなっているそうですね。
はい。セールをしないことで、物が古くならず、来年も同じ物を再販できます。自分が2年前に買った洋服が普通に定価で売られているところを見た、という体験は単純に嬉しいですよね。何年後でも定価で販売することで、長期的な関係をお客様と築けることができ、結果的にブランドへの顧客満足度を高めることにつながっていると思います。
便利さではなく「不合理な体験」を楽しんでもらいたい
――洋服のデザインをするうえで大切にしていることを教えてください。
ブランドの裏側を知らなくても、foufouの洋服を見ただけで「かわいい、絶対に着たい」と思ってもらえるようなものを作っていきたいと思っています。その次の次の次ぐらいに、購入後にタグを見たら日本製だと気づいてもらったり、セールをしないんだと知ってもらえたりするなど、ブランドの姿勢などを評価してもらえるぐらいでいいですね。
――ブランドの代表的なデザインの一つに、5メートルものデニムを使ったAラインのスカートがありますよね。かなりインパクトのあるデザインですが、なぜこうしたデザインを取り入れようと思ったのか教えてください。
人生で色濃く記憶に残っていることは、不合理なことだったり、ハプニングが起こったりしたことだったりしますよね。「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ」という、チャップリンの言葉もあります。そういう意味で、着心地や便利さだけではなく、着づらいけれど、かわいいから着てしまうという体験を届けていきたいです。
5メートルの布を使ったスカートやワンピースは、着ると肩にずっしりくる。重いんだけれど、そのぶん生地に厚みがあってしっかりしているので、すごい高見えするんです。
――この不合理な体験には、どのような反応や声が届いているのでしょうか?
foufouの洋服は、布量もあり、重い。かつ、タックという折ってある仕様が多いんです。お客様が服をクリーニング屋さんに出すと、すごく驚かれて「これはうちで対応できない」と言われるというメッセージを結構な頻度でいただきます。
ただ、このような体験をしていたとしても、お客様は洋服に対してすごい愛着を持っていただいています。手がかかるからこそ愛おしいと感じてもらっているような気がします。
お客様の声でなく、デザイナーの偏愛から良い商品を生む
――新作の発表は、マール・コウサカさんご自身がSNSのライブ配信で洋服を紹介していると伺いました。その際、アイテムのデメリットも伝えるそうですが、なぜでしょうか?
理由は二つあります。一つは、生配信などでは編集が入らないので、ちょっとした嘘や迷いが全てお客様にばれてしまうからです。だからこそ、全てを自然体で伝えることが一番だと思っています。デメリットをしっかり購入前に伝えることで、購入した服が自分の持っていたイメージと違ったという事態も避けられます。
二つ目は、お客様にとって正直でいたいと思うからです。自分の好きなブランドの店や、お気に入りのレストランに行くときは、絶対得してやろうと思わないですよね。そう考えたときに、こちら側も損得を一度忘れて、デメリットをちゃんと伝える。でも、このデメリットがあるから、メリットが際だっているということを正直に伝えたいと思っています。
――独自の世界観を追求しながら、日常の洋服として選ばれるfoufou。その世界観の想像主であるマール・コウサカさんのデザインの原点についても教えてください。
デザインに関して、僕自身がお客様の要望を聞くことはしていないです。今は世の中に、安くて品質の良い100点の商品がいっぱいあります。だから僕らはお客様に満足してもらうために、その先の150点を出したものを提供しなけれならない。
だからこそ、お客様の声をそのままデザインに反映するのはなく、僕らの偏愛や、もっとお客様が潜在的に求めることをデザインして、「こんなのがあるんだ」と思わせなければならいと考えています。一方で、お店の運営の仕方や販売の方法の面では、お客様の意見をたくさん聞いて、改善点や良いと思ったものは取り入れていっています。
地方のお客様に会いにいく「試着会」で新しい体験の提供を
――店舗を持たないfoufouでは、地方にいるお客様に向けた「試着会」も開催されています。試着会はどのような経緯で始められたのでしょうか?
現在は新型コロナウイルスの影響で開催されていませんが、1カ月に1回、抽選で当たった人だけに住所が知らされる形で、試着会を開催していました。なかには、運営を手伝ってくださっていたお客様もいて、その御礼にfoufouの服をプレゼントしていましたね。
試着会を始めた理由は二つあります。一つは、僕らはインターネットがメイン販路のブランドなので、地方にも多くのお客様がいらっしゃいます。そのため、売上が伸びたときに、その方々に恩返しをするため、ちゃんと会いに行こうと考えたからです。
もう一つは、インターネットというパブリックな場所で販売をしているので、自分たちだけのクローズドな空間も作って、foufouならではの体験を提供したいと思ったからです。
――ありがとうございます。最後に、今後のビジョンについて教えて下さい。
長くブランドを続けることを、すごく大事に捉えています。サステナビリティやエシカルという言葉を最近よく耳にしますが、自分たちが長く続けていることが、一番サステナビリティだなと。そのために、世の中の荒波をサバイブして、つど自分の変えてはいけないものを変えないために、変わり続けながらやっていければいいなと考えています。
また、デザイナーとしては、foufouの洋服を見たときに「かわいい、着たい」とお客様が感じてくれることに命をかけているので、そう思ってもらえるよう頑張りたいです。
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