XDを運営するプレイドが、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2021年3月15日から18日の放送では、「ロボティクスで、世界をユカイに」をテーマに、人気のコミュニケーション・ロボットを生み出しているユカイ工学のCXを紹介した。同社は社員の“妄想”から自由な発想で企画し、センセーショナルなプロダクトを開発している。
放送では、同社代表の青木悛介氏に、これまでが開発してきたプロダクトやこれからのロボットとの豊かな暮らし方、人間の生活をサポートする新たな試みについて語ってもらった。
本記事では、放送内容をまとめ紹介していく。
留守番中の子どもや高齢者を見守るロボット「BOCCO」
――最初に、ユカイ工学がこれまでどのようなロボットを開発してきたか教えてください。
個人向けの家庭で手軽に使えるようなロボット製品を開発してきました。私たちは、「ロボットが一家に1台当たり前にある世界」を目指しているんです。
設立した2007年は、スマホがない時代。そのため、パソコンにつないでメールやSNSのメッセージなどを通知する「ココナッチ」をはじめ、脳波を読み、リラックスしていると耳が垂れたり、緊張すると耳がぴんと立ったりする「猫耳型デバイス」などを開発してきました。
また、「BOCCO」は可愛らしく喋るのが特徴のコミュニケーションロボットです。スマートスピーカーのように家の中に置いて、離れた場所にいる家族をつないでくれます。
たとえば、外出している両親が、留守番をしているお子さんに伝言を送ったり、1人暮らしでスマホを持っていないお年寄りの方に、簡単にメッセージを送ったりすることができます。センサーが付属しているので、それを通して「うちの子が帰ってきたな」とか「おじいちゃん出かけたんだな」といったように、離れた場所にいても生活の様子を見守ることができるんです。
――BOCCOはユーザーにどのような使われ方をされることが多いのでしょうか。
もともとは鍵っ子の見守りや、コミュニケーションが簡単にできるという用途を想定していました。しかし発売してからしばらく立ち、今は高齢者向けのユーザーが多いですね。
BOCCOには忘れてしまいがちな予定をスケジュールとして入れておくと、その予定を喋ってくれる機能があります。「お薬飲むの忘れないでね」や「病院の時間だよ」など。家族が直接電話をして「薬飲んでね」と言うと、「うるさいわね」と角が立ってしまいがちです。しかし、かわいいロボットに言われると、素直に話を聞いてくれるようになるのだそうです。
もちろん、お子さんに対しても「もう寝る時間だよ」や「お風呂入りなさい」と、BOCCOから伝えることができます。中には、親の言うことを聞いてくれないときに、ロボットを経由したことで「ちゃんと聞いてくれるようになった」と話すユーザーもいらっしゃいました。
孤独に癒やしを与えてくれる。ペット代わりの「Qoobo」
――ユカイ工学で人気のセラピーロボット「Qoobo」はどのように生まれたのでしょうか?
Qooboは2017年に社内のアイデアコンテストで生まれました。ユカイ工学は、実際に「こういうのがあったらいいな」と“妄想”するところから企画がスタートすることが多いです。
Qooboに関しては北海道の広いお家で、10匹以上の犬に囲まて育った女性デザイナーの声から生まれたプロジェクトでした。北海道から東京に来た彼女が、犬を飼うのも難しい環境に対して「何か癒やしがほしい」と思ったことが開発のきっかけです。
社内には、商品化まで至らなかった試作が多くあります。その中のひとつにリアルなしっぽの動きをするメカがありました。そこで試しにそのメカをクッションにつけてみたところ、面白いデザインになったんです。動きもリアルで良いなと。また、バイヤーさんにも「これはありかもしれない」とフィードバックをいただいたことから、商品化に至りました。
――フランス語でしっぽという意味の「クラー」とロボットを掛け合わせたのがQoobo。どのようなニーズを満たしているのでしょうか。ユーザーの声などもあったら、教えてください。
Qooboはとても不思議な製品なんです。初見では「何だこのデザインは」とぎょっとすることもあるかもしれません。しかし、しばらくひざの上に置いておくと、何となく馴染んできます。しっぽが自分の意思で動き、肩に当たってくるといった、どこか生き物らしさを感じる部分に中毒性があり、なぜかテレビを見ながらなでてしまうんです。
もともと20代の女性デザイナーが発案したものなので、若い人にウケるのではないかと考えていましたが、実際には高齢者の方からも人気が高い商品です。また、ペットアレルギーの方、ペット不可の物件に住んでいる方も使ってくれています。高齢者の方から「これから犬や猫を飼うのは難しいので、このロボットをかわいがっています」という声もいただきますね。
結果的に幅広い世代に受け入れていただいたことに驚きました。コロナ禍で巣ごもり需要が注目され、ペットに対するニーズも高まっています。ロボットがいることで「ひとりではない」という安心感をつくれる。そういった感覚が受け入れられ始めているのかなと思いますね。
子ども時代に小さな成功体験をつくる。教育ロボット「kurikit」
――プロダクトだけでなく、子ども向けのロボットキットも展開されていますよね。
はい。教育向けとして「kurikit(クリキット)」という製品シリーズを展開しています。コンセプトは「正解もマニュアルもなく、自分の発想でモノをつくり、動かすことができる」というもの。子どもたちに「モノづくりの楽しさを感じてもらおう」という部分がコアのアイデアになっており、年齢層は小学校低学年から高学年までを想定しています。
近年、プログラミング教育などの理系の教育がすごく注目されています。私が小さかった頃はピアノの教室に通わされ、「音楽は楽しいはずなのに、なぜこんなにつまらないんだろう」と思っていました。そのような幼少期のときの苦い思い出を持ってる方、他にもいらっしゃるんじゃないかなと思います。このような過去から、習われるのではなく、プログラミングを楽しみながら学べるキットをつくりたいという思いが強くありました。このキットには正解がないので、失敗もありません。お子さんが自分のアイデアを形にできる商品です。
――kurikitで、これまで子どもたちはどんなロボットを生み出したのでしょうか。
最初に発売した「ユカイな生きものロボットキット」という商品は、NHKエンタープライズが開催する小学生ロボコンの公式キットとして開発されました。そのため、全国からいろんなロボットが集まり、大会では本当に生き物みたいなロボットがたくさん生まれていました。
大会内では「車輪を使わない」というルールの縛りがあったんです。車輪を使わずにどのようにしてロボットを動かすのか。キットに入っている結束バンドを使って、足をじたばたさせて動くようなロボットをつくった方もいれば、たくさんの結束バンドを円形にして、車輪のようなものをつくっている方もいましたね。本格的にロボットをつくるとなると、たくさん勉強を重ねていかなければいけません。その過程の中で、「小さい頃に成功体験があるかどうか」は、彼・彼女らの未来に大きく影響するのではないかと思っています。小さい頃に成功体験を味わってもらい、子どもたちに「自分もやればできるんだ」という自信をつけてもらいたいんです。
ウェルビーイングのために、ロボットを暮らしのそばへ。
――これからのロボットとの豊かな暮らし方について、考えていることを教えてください。
朝は目覚ましの電子音ではなく、ロボットが話しかけてきて目覚める。その方がストレスもなく、ちょっぴり生活がユカイになる気がしています。家庭内にはしっぽを振るQooboのようなロボットもいれば、おしゃべりをするBOCCOのようなロボットもいて。それぞれロボット同士が連携し合い、人間の生活をサポートしてくれればいいなと思っていますね。
そのサポートとはいわゆる「ウェルビーイング」と呼ばれるものだと考えています。たとえば、「平日も週末も、同じ時間帯に起きて生活をすること」がウェルビーイングの向上につながるという研究結果があるんです。金曜日に飲みすぎて土曜日ほとんど寝ていることがないように、夜に飲みすぎていたら「早く寝なよ」と。そんなふうにロボットが人間の生活向上を導びけるようになれば、人間にとってロボットは役に立つ存在になるのではないでしょうか。
――最後に、ユカイ工学が今取り組んでいる新たな試みについて教えてください。
発売したばかりの「BOCCO emo」というロボットには、スマートスピーカーにはないお役立ち機能をどんどん増やしていこうと意気込んでいます。たとえば、お年寄りの方に毎日話しかけ、そのやり取りを通じて「認知機能に問題が出てないかどうか」を診断してくれる機能など。1人暮らしの高齢者の方が安心して暮らせる機能が開発できないかと考えています。
すでに病院の個室では、患者さんの生活をロボットがサポートするような実験もおこなっています。「もうすぐ診察がありますよ」とか、「着替えて準備しておいてください」などを細かく教えてくれるようなイメージです。また、子どもが入院している際、ペットの代わりにQooboを使っていただいていることもあります。ペットのようなロボットがいることで、世話をしようという意欲が湧いて、生活も前向きになるそうです。ずっと続く幸せな暮らしのそばにロボットがいる。私たちはそれがスタンダードとなるニューライフを目指しています。
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