XDを運営するプレイドが、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2021年6月14日から6月17日の放送では、おやつカンパニーが製造する麺フライのお菓子「ベビースターラーメン」のCXを紹介した。同スナックは1959年の発売以来、60年以上にわたり今も尚、老若男女に愛され続けている商品だ。
放送では、おやつカンパニー 取締役専務執行役員 マーケティング本部長の髙口裕之氏に、ベビースターラーメン誕生のきっかけや、現在取り組んでいるプロジェクト、さらにおやつカンパニーの今後についても語ってもらった。
本記事では、放送内容をまとめ紹介していく。
捨てられる麺の端っこが「もったいない精神」で人気の駄菓子に
――ベビースターラーメンが、誕生したきっかけを教えてください。
もともと私たちの会社では、鍋で茹でて食べる「即席麺」を作っていたんです。しかし即席麺を作る過程では、どうしても麺の端っこが出てきて、それがぽろぽろ取れてしまうという問題がありました。1日中製造していると麺の端っこもばかにならない量が出てきてしまいます。
創業者がそれをじっと見ていて、「もったいないな」と感じたそうです。本来であればの端っこも商品として出荷できればよいのですが、捨ててしまうということが非常に心苦しかったのではないでしょうか。いつしか麺の端っこに味をつけ、工場で働いていた社員のためにおやつとして配っていました。
こうしているうちに、そのお菓子が近所の人の評判をよび、徐々に多くの人に噂され、人気になっていきました。そこで私たちはある時「即席麺ではなくて、お菓子を売った方がいいのではないか」という発想に切り替わったんです。これがベビースターラーメンの誕生の秘話ですね。
――そんな誕生秘話があったのですね。60年を超えるロングセラー商品となった秘訣はどこにあるのでしょうか?
その秘訣は四つあると思います。現在ベビースターラーメンを買う方で一番多い層は30代、40代の方です。ベビースターラーメンが誕生した時代を考えると、駄菓子屋さんで出会ったという方が圧倒的に多い。子どもの頃の駄菓子屋での出会いがあり、それが原体験として強烈に頭に残っているんだと思います。「幼少期に出会ったもの」であるということは、購入し続けてくれる要因として一つあるのではないでしょうか。
二つ目は、ベビースターラーメンの独特な形状です。駄菓子屋さんのお菓子の中でも、麺フライのお菓子というのは、ベビースターラーメンぐらいしかないんですよ。
そして三つ目は、ベビースターラーメンは時代と共に、商品の種類を増やし、姉妹品などもたくさん販売していることにあるのではないでしょうか。お店によって、味や形が違うベビースターラーメンを販売し、お客様がそれを目にするようになったことも、時代を超えて愛され続けるための大きなポイントになっていると思います。
また最近では、スナック菓子としてだけではなく、料理に使えることを打ち出しています。これが四つ目の秘訣です。もともと麺からできているものなので、お菓子だけでなく、お料理という領域にも親和性があります。その魅力を訴求することで、新しい側面を知ってもらい、楽しんでいただけているのかもしれません。
これらの要因があるからこそ、60年以上を超えるロングセラー商品を生み出せたのだと思っています。
新しい味や形を発売してきたなかで、失敗作だと思ったことは一つもない
――長年食べている方々は、ベビースターラーメンにどんなの思い出を持っているのでしょうか?
公式Twitterや様々なメディアで発信をしている際に、お客様にベビースターラーメンについて聞くと、駄菓子や駄菓子屋と紐付いたエピソードがよくあがってきます。例えば、「子どもの頃にとか、当時は大事な100円玉を何に使うのか悩み、結局いつもベビースターラーメンを選んでいました」という話です。
あとは、「どうしても食べるときにこぼしてしまう。子どものときは、無我夢中で食べているので、単純においしいが、親からはこぼさないで食べなさいとよく叱られました」などです。細かいかけらが入っている特性上、こういう声も非常に多いですね。
――味や形を変えて販売する中で、失敗作はなかったのでしょうか?
私たち作り手からすると、一つひとつ同じように一生懸命、全力を捧げ、集中して作っているので、決して失敗作だと思ったことはありません。ただこのご時世では、さまざまなお客様の評価が耳に入ってきます。忠実に作りすぎてしまったあまり、「えっ、ベビースターラーメンでこの味ってどうなの」など少し驚かれたこともあります。
例えば、ある食品と一緒にコラボレーションして製作した時は、その食品の味を忠実に再現してみたんです。しかし再現度があまりに高かったために、その時は「似ている味をなぜベビースターとして食べるのか」という声をいただきました。当時はやりすぎてしまったという気持ちもありましたが、それも含めて面白いねとも言っていただけました。こういう部分もブランドの一つのイメージ、世界観なのかなと思っています。
もんじゃ焼き屋をきっかけに駄菓子から「食事」の訴求も
――ベビースターラーメンのちょい足しレシピプロジェクトについて、教えてください。
ちょい足しレシピプロジェクトは、2018年から取り組み始めた新しい企画です。始めたきっかけは、実はもんじゃ焼き屋さんにあります。もんじゃ焼き屋さんに行くと、壁にだっとメニューが貼ってありますよね。そのメニューを見渡すと、実はどこに行っても「ベビースターラーメン」というメニューがあるんです。
そこである時、その件について改めて社員と話し合ったんです。そして「これは私たちが仕掛けたわけではなく、もんじゃ焼き屋さんの意向だ。もんじゃ焼きとベビースターの相性がいいと感じてもらい、自然発生的にこんなに広がってきているんだ」と理解しました。
もちろん小腹満たしに食べることもありますが、現代は一般的にもんじゃ焼きは食事です。そうすると、やはりベビースターラーメンは食事とセットで食べていただくことが十分可能なお菓子であると気がつきましたね。そこからいろんな食事のメニューにもベビースターラーメンを使ってもらおうというプロモーションが始まりました。
――そのプロジェクトは、どのように広がっていったのですか?
私たちは自社のWebサイトで発信をするだけではなく、外食や中食の企業さんとコラボレーションする機会をたくさん作りました。お寿司の中身、居酒屋のメニュー、サラダのトッピング、ラーメンの上に乗せる具材、串揚げの衣としてなどです。
あるとき、惣菜メーカーさんと一緒に企画を持ち込んだら、「ベビースターラーメンだったらありかもしれない」と言ってもらい、意外と好感触だったのを覚えています。とんとん拍子で決まり、次々に新しいメニューを企画することができました。
お客様からすると生活している中、ふらっと立ち寄ったお店で、「あっ、本当にベビースターラーメン使っているじゃん」ということに気づく。ベビースターラーメンが料理に合うという情報を知っているだけでなく、実際の店舗で見たり、食べたりすることで「おいしいから、おうちでもやってみようか」という気持ちになる。このように私たちは、顧客体験を通じた新しい価値を、お客様に提案し続けています。
ベビースターラーメンと共に新しい顧客体験を作り続ける
――おやつカンパニーが、次に挑戦してみたいことは何かありますか?
現状ベビースターラーメンを使った「麺文字」という企画が動いています。ベビースターラーメンの袋を開けてみると様々な形があるのですが、麺文字ではその様々な形のベビースターラーメンを用い、字を書いてみたり、絵を描いてみたりするんです。
私たちの公式Twitterで発信していて、じわじわと人気が出てきています。お友だちや親子3代で「麺文字」をコミュニケーションのツールにして楽しんで欲しいです。また、楽しめるという側面を新たに加え、「楽しく遊べて、食べられる」という訴求を押し出していこうと思っています。
――素敵ですね。最後にベビースターラーメンの今後の展開について教えてください。
実は8月2日(月)を「ベビースターの日」と記念日登録しています。そして今年のべビースターラーメンの日には、面白く、おかしな仕掛けをしようと企んでいるんです。
一つは、ベビースターラーメンを使ったアイスクリームを発売しようとかなと。カップに入れた状態で発売をしたことは過去にもあるのですが、今年はバータイプのものを考えています。以前発売した際は賛否両論いただいて。それもあり今回はリベンジも兼ねて企画し、今度はお客様をびっくりさせようと思っています。楽しみにしていただけると嬉しいです。
それに加えて、実は新しいブランドの展開の構想もあります。世の中で「健康」というトピックが非常に注目され、フィットネスブームもあります。これからの時代に則したブランドを築いていくために、「BODY STAR」というブランドを展開しています。そして、これからも引き続き、お客様にとって新しい顧客体験を提供していきたいですね。
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