XDを運営するプレイドが、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2021年9月27日から9月30日の放送では、浅草のおみそ汁専門店「MISOJYU」が届けるCXを紹介した。おみそ汁は日本の伝統食の一つであり、誰もが思う家庭の味。同店はそんな和食の代表をメインメニューに、2018年におみそ汁専門店としてオープンした。
放送では、「MISOJYU」で総合ディレクターを務めるエドワード・ヘイムス氏に、同店のコンセプトやこだわり、また今後の展望についても語ってもらった。
本記事では、放送内容をまとめ紹介していく。
幼少期から食べ慣れていた“おみそ汁”は体の一部となり、出店も自然な流れ
――MISOJYUのコンセプトについて教えてください。
日本は発酵大国で、すばらしい発酵食品がたくさんあります。がその中でも、人々が身近に感じられるのは「味噌」だと思っています。私たちMISOJYUはそんなおみそ汁を全面的にフィーチャーしています。
私自身は母親が新潟出身なので、気がついたときには手前味噌のおみそ汁飲んでいました。子どもの頃からごく自然に飲んでいたので、おみそ汁は体の一部のような感覚です。何のためらいもなく、おみそ汁を店で出すことに決めました。
おみそ汁は完全食で栄養価も高く、日本の発酵文化の中でもかなり優秀な食べものです。しかし一般的には、普段は添え物のようなポジションですよね。そこで、具材を多めに入れて、おむすびと小皿を何種類かセットにすれば、おみそ汁をメイン料理として提供できるかもしれない。そんな世界観を作りたいと思っていました。
――海外では、日本のおみそ汁はどのような存在なのでしょうか。
海外のおみそ汁はインスタントが主流です。お店でもおみそ汁メーカーから出てくるのが一般的ですね。乾燥わかめと豆腐が入っていて、見た目としては確かにおみそ汁そのものです。
また名前は「おみそ汁」ではなく「ミソスープ」として浸透しています。特にアメリカのウエストコースト、イーストコーストにいる方々など、健康について関心の高い方たちに発酵食品として取り入れられています。
知らない方でも食べられる国際的なおみそ汁を作る
――MISOJYUでは、定番の豆腐のおみそ汁以外にも、みそポタージュやみそポトフといった新しいメニューの提案も行っているんですね。どのような狙いがあるのでしょうか。
店舗がある浅草は、観光客など海外の方がたくさん来る場所です。おみそ汁を食べたことのない方、知らない方もいらっしゃり、おみそ汁が受け入れられない可能性があります。そこでMISOJYUが提案しているのが、海外の方にとって入り口となるようなおみそ汁です。
たとえば、豆乳を使ったクラムチャウダーのような「豆乳とホタテのとろーり みそポタージュ」というおみそ汁にスープの香りを足しているメニューを提供しています。あとは「まるごとトマトとほろほろの牛スネのみそポトフ」という商品もあります。和風だしやフォン(フランス料理において代表的なだしのことで子牛のすね肉など動物性の材料から引いたもの)、牛すねなど二層、三層にもだしを重ねています。
ベースにおいしいみそと和風だしを使用することは変わらないのですが、そこに様々なアレンジを加えることによって、国際的な香りもする料理にしていく。そうすることで一つの日本食だけでなく、発酵食品の料理といったニュアンスがついてくるかなと思います。
――実際はどのような方が食べに来られますか?
若い方や女性の方には多くご来店してもらっています。みそポタージュに関していうと、もともとは海外の方をターゲットにした商品でしたが、クリーミーなスープでヘルシーな側面もあり日本の女性の方が気に入ってくださいました。
ポトフもとても人気です。みそのうまみ成分の包容力のおかげで、トマト丸ごととみそを合わせてもおみそ汁としてしっかり成り立っていて、お客様にもそこを評価していただいていると思います。
こだわりはオーガニックな食材と仕込みの一手間
――MISOJYUを生んだ「TEAM地球」とはどのようなプロジェクトなのでしょうか。
きっかけは私がアメリカに住んでいた時、書道家の武田双雲さんと出会い、ウエストコーストのオーガニック料理を彼に紹介したことです。
その後、武田さんが地球の恵みに感謝し、オーガニックな食材との健康的で美味しい出会いを通じて、心から楽しい食事の場をシェアしていく「地球プロジェクト」を発起しました。このプロジェクトを行うために、オーガニックな食材・食事のスペシャリストを集め「TEAM地球」を結成しました。
プロジェクトにはオーガニックのスペシャリスト、ブランドディレクター、デザイナーなど、年齢や国籍を問わず様々な方が活動しています。日本の古代食などを見直したり、文化の側面から考えてみたりなど、食に関して広義にわたり向き合っています。
今後は海外への出店計画とともに、直営農園を持ち、自分たちで土からしっかり向き合って生産した野菜を調理し、提供していきたいと考えています。
――TEAM地球のプロデュースで生まれたMISOJYUは、どんな部分にこだわっているんでしょうか。
素材は、特にこだわりを持っています。基本的にだしを取るところから行い、昆布の削り節を使用しています。味噌は、最初から有機味噌と決めていて、全国から取り寄せて試した中で、今のものを使っています。手間はかかるのですが、お客様にはその分だしの香りや、良質な食材を感じてもらいたいと思っています。
またみそ汁の構造自体は500年ほど変わっていないそうなんですが、私たちはそこにだしを合わせてみたり、白みそにはクリーム系や練りごまを合わせてみたり。そういう合わせみその提案にも力を入れています。
さらにお米に関しては有機米を使っています。そうすると時間がたっても固くならないおむすびが提供できるんです。このようにおみそ汁とのバランスも考えながら、他の食品も取り寄せていて。一手間かけていますので、一息ついて食材に目を向けてもらえると嬉しいです。
自然を大切にしてきた日本の食文化を世界へ
――MISOJYUの今後について教えてください。
おみそ汁はポテンシャルが高くあり、私はその可能性にとりこになっています。現在全国にあるみそに対して、それぞれに合ったおみそ汁を実験的に作っていて。今後はそれらを徐々に提案できたらと思っています。
おみそ汁の中には地域前提で作られているものや、今は少なくなってきましたが伝統的な方法で作られてるものもあります。私はそれらを作っている方々に直接お会いして話を聞いたり、味わったりすることに強い興味があるんです。またそういった出会いが、何か新しい物が生まれるきっかけになるかもしれない。私も、まさか日本でお店をやるとは想像していなかったので。
――最後にこれからの日本食について考えていることがあれば教えてください。
免疫を高めるなど個々で身体に対して気をつけなければいけない時代なので、今後も食と自然と関わり方は非常に大事になってくると思います。
ただ日本は食材の宝庫で、水もきれい。自然との接し方に関してもとても長い歴史があるので、そこを今後世界に対してどんどん表現し提案していきたいです。日本が一丸となり、「自然を大切にする中での食」をビジョンに見据えると、何か見えてくるものがあるのではと思います。
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