XDを運営するプレイドが、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2021年8月30日から9月2日の放送では、花火市場で業界シェアトップクラスの老舗メーカー株式会社オンダ(以下、オンダ)のCXを紹介した。夏になるとスーパーやコンビニで、同社の手持ち花火セットを目にする方も多いのではないだろうか。手持ち花火と一口に言っても、オンダの花火は長く燃え続ける大ヒットシリーズ「ロング」や煙が少ないシリーズなど様々な花火を展開している。
放送では、常務取締役の恩田郷子氏にコロナ禍の手持ち花火需要や製品づくりのこだわり、「火育」活動について伺った。
本記事では、放送内容をまとめ紹介していく。
時代に合わせて花火による体験を変化させていく
──コロナ禍の影響により家族で楽しむ“おうち花火”の需要が高まっていたそうですね。
子どもたちが学校に行けなくなり、友だち同士で遊べなくなってしまった2020年3月頃、弊社が展開するシャボン玉やバドミントンなどのおもちゃがよく売れました。
あくまでも私たちの憶測ですが、家のなかにずっと閉じこもることにもだんだん飽きてきて、家の前でできる遊びをしたいと思った家庭が増えたのだと思います。
また、花火大会も軒並み中止になるなか、手軽に楽しめる「手持ち花火」を用いて、家の前で「マイ花火大会」をする家庭も多く見られるようになりました。それに伴い、煙や音が少ない花火を集めた商品「おウチ花火」シリーズの売上が好調でした。
──時代の変化に合わせた花火を作るために、どのような工夫をされているのでしょうか。
花火の販売方法は時代の変化とともに移り変わっています。昭和の時は、路面のおもちゃ屋や駄菓子屋などでおじさんおばさんが対面で、子どもたちに花火の説明しながらバラ売りをするのが主流でした。
今は量販店やホームセンター、コンビニエンスに売場が移っています。どの売場に陳列されても、お客様に商品の特徴がわかってもらえるよう、パッケージには「庭で行うのに適している花火」「音が小さい花火」など商品の特徴がわかりやすい文言を入れて製造しています。
最近は「煙少なめスマホでキレイ」シリーズを展開。写真にきれいに映るよう特殊な配合で火薬を作り煙をおさえ、ゆっくり撮影できるよう燃焼時間が長い花火を開発しました。
SNS時代に適した楽しみ方ができる花火を作り出す
──SNSを意識した「煙少なめスマホでキレイ」シリーズは、なにがきっかけで生まれたのでしょうか。
もともと「煙が少ない花火セット」として2011年に販売された商品がありました。子どもは背が低いため、煙を吸い込みやすくむせてしまう。けれど、子どもたちは花火がやりたいがゆえに、煙で涙を流しながら花火をし続けるんです。
そんな姿を見て、子どもでも安心して遊べる花火を作りたいという思いがありました。また、花火を行う際の環境も厳しくなってきていたため、近隣の方に迷惑がかからないような花火を開発しようと考えました。
この煙が少ない花火セットは、2018年のリニューアル時に、煙が少ないことを別の角度から訴求できないかと考え、「煙少なめスマホでキレイ」シリーズとして新たに打ち出すことになりました。発売後、SNSを利用する若年層からの購入も増えて、人気を博しました。
──どのような開発プロセスを経て花火は制作されているのでしょうか。
花火の開発は、火薬類取締法という法律もあり、簡単にできるものではありません。そのため色の火が出るものなどを開発するには時間がかかります。
しかし、SNS等で投稿されるみなさんの写真を見るとメーカー側も感心してしまうような楽しみ方をしている方が多いですね。そのため、既存の花火を使って楽しむ方法も来年に向けて開発しているところです。
花火を通して火の取り扱い方法を学ぶ「火育」にも力をいれる
──花火の販売だけにとどまらず、火についての体験教育「火育」にも取り組んでいるそうですね。
子どもたちが火を見る機会が減っていると思っています。家族のなかでタバコを吸う人がいないかったり、仏壇がなかったりすると、ライターから出る火を見たことがない。またオール電化も進んでいるので、炎を見る機会がない子どももいます。
子どもたちが火に対して恐怖心を持たない状況に危機感をいだき、花火の啓蒙活動の一貫で保育園の園児に正しい花火の遊び方を教える「花火教室」という活動を行っています。
花火で楽しく遊びながらも、火は正しく使わないと危ないことや近づいてきたら離れなきゃいけないことを学んでもらいたいと思っています。消防署の方も、火の怖さを知らない子どもが火事のときにどう行動するのか危惧していることもあって、この火育の活動を広げていきたいとおっしゃっていただいています。
──花火教室での子ども達の反応はいかがですか。
とても真剣に向き合ってくれています。都内で昼間に行うことが多いので、大きな花火はできず、火も見えにくいのですが、花火の匂いを嗅いだり、豊かな色彩を見たり、音を聞いたりと五感が研ぎ澄まされていく部分があると思います。
思い出や体験のひとつとして花火はとてもいいツールなのかなと思います。
花火文化を盛り上げるため、新しい遊び方を模索し続けたい
──日本には線香花火から打ち上げ花火まで数多くの花火がありますが、海外の花火事情とどのような違いがありますか?
実は、365日いつでも花火ができる国は、日本だけなんです。アメリカだと独立記念日の前後何週間かは花火の屋台が街中に出てます。そのとき以外は、一切花火禁止です。ヨーロッパでもクリスマスの前などできる時期が決まっています。
海外だと解禁された時期は一般の方でも大きい花火ができる場合が多く、ダイナミックな花火を求めがちです。一方で日本は、線香花火のはかない火花を大切にするような粋な遊び方をしている国だと思います。夏になると浴衣を着て花火を見たり、花火をしたりしたいという方が本当に多い印象です。
今年はコロナ禍の影響で花火大会をすることは叶わなかったご家族が「子どもたちと浴衣を着て、家でオンダの花火を楽しみました」というお話はよく耳にしました。
──最後に、オンダが目指す今後の展望を教えてください。
私たちが懸念していたことの一つに、花火経験のない方が親になりはじめていることがありました。火の怖さを遊びながら子どもたちに教える機会が少なくなっているなかで、花火教室の取り組みを通して「火育」をしてきました。
コロナ禍がきっかけで花火が注目を集め、存在を身近に感じてもらえるようになったと思います。同時に、お客様の花火の楽しみ方にも変化があり、写真を撮るなど私たちが提案する以外の方法で花火を活用いただけています。
今後は花火の文化を担うメーカーとして、新しい花火の遊び方を考案し、花火文化が衰退しないよう努力をし続けていきたいです。
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