千葉の幕張メッセで開催されたアジア最大級の規模を誇るIT・エレクトロニクス分野の国際展示会「CEATEC JAPAN 2018」。10月16日より4日間開催された今回は「つながる社会、共創する未来」をテーマに、「日本の成長戦略や未来を世界に向けて発信するSociety5.0の展示会」として開催され、725社が出展した。登録来場者数は15万6,063人で、前年比3,977人増となった。
先進的なテクノロジーに触れることができるCEATEC。ここは未来のCX(顧客体験)が最新のテクノロジーによってどのように変わっていくのかが体験できる場でもある。今回「未来の体験」を予感させる展示を行っていた4社を紹介していきたい。
ローソン
小売業でCEATEC初の出展となったローソンのブースでは、テクノロジーを用いた未来のコンビニへのアプローチがいくつか紹介された。
まず目玉となったのが、レジを通ることなく会計を済ませることができるウォークスルー決済の体験コーナー。
ウォークスルー決済は、RFIDタグを貼り付けた商品をバッグに入れ、QRコードで認証した上でバッグをゲートに通すだけで決済が完了するというもので、体験コーナーではローソンのCEATEC専用アプリか楽天ペイにクレジットカードを登録しておけば、実際に購入することもできた。ゲートは特に意識せずにスムーズに通過できる感じだった。
来訪者とのコミュニケーションをサポートするテクノロジーとしては、SHOWROOMと共同で研究開発しているバーチャルクルーや、AI搭載のキャラクターに音声で質問できるデジタルコンシェルジュ(ピーディーシー提供)などが展示された。
バーチャルクルーに関しては、AIが自動応答する訳ではなく、遠隔操作で利用客とリアルタイムなコミュニケーションを可能とするもの。展示を見た人が「人と話してるみたい」と不思議がるように、キャラクターを通して自然な会話ができる。親しみやすいキャラクターを通すことで、リアルな人よりも気兼ねないコミュニケーションが図れることには、新しい可能性を感じた。
KDDI
体験型の展示で一際目立っていたのがKDDIだ。「5G/IoTの先進性・独自性を訴求する”体験型”の展示」ということで、2020年代に実現される新しい世界観を紹介した。
4K・8Kに対応した半球のスクリーンと可動式の座席によりVRゴーグルをつけずに没入体験ができる「Sphere 5.2」や、12Kの高画質VRによるバーチャル観光案内所、XRグラスによる体感型スタジアムなどを展示。
スポーツを楽しむ、観光地に訪れると行った体験が、場所や時間を選ばずいつでも楽しめる未来を予感させてくれた。
バーチャル観光案内所に関しては、複数人が同時で参加することができ、利用者の視点をガイドが確認しながら説明していくデモが行われた。
不動産店舗での物件案内や施設見学、観光案内、企業の社員教育などの様々な分野での活用を想定しており、今後自治体や企業向けに商用サービスとしての提供を予定しているとのこと。VRゴーグルに関しては「Galaxy Gear VR」を用いており、低コスト化も実現していた。
SHARP
8Kディスプレイの展示が目立ったSHARPブース。もう一つの目玉として展示されていたのが「COCORO+」というサービスブランドだ。
COCORO+は、家電やIT機器を単なる「道具」から、人が愛着を感じられる「パートナー」へとするべく、「人に寄り添うIoT=AIoT」を活用して提供するサービス。
AIoT商品の運転データなどから、住む人の生活パターンや好みをAIが学習し、TV・スマートフォン・家電を通じて最適な家電操作やサービスを提供する。
すべての家電のデータが蓄積されていれば、かなりの精度で住人の生活パータンを把握することができる。そういった意味では、メーカーの壁はありつつも、家電の連携がどのように実現していくかも重要な要素になっていく。
まるで意思を持っているかのようなコミュニケーションを図る姿は、日々製品と触れる際の体験の重要性が増していることも感じさせた。
Japan Digital Design(三菱UFJ フィナンシャル・グループ子会社 )
三菱UFJ銀行内の組織だったイノベーション・ラボをスピン・オフさせ、2017年10月に誕生したJapan Digital Design。
三菱 UFJ フィナンシャル・グループの連結子会社として、次世代の新たな金融UXの創造・提案を担っている。
今回展示されたのは、「社会をちょっと便利に」をコンセプトに次世代の顧客体験の提供を目指す「mini」というプロジェクトだ。
スマートフォンをキャッシュカード代わりにできる「CARD mini」、銀行窓口の手続きで容姿への記入を不要にする「BANK mini」、スマホで事前に取引金額を指定できる「ATM mini」、金融商品の相談が待たずにできる「TALK mini」など、銀行におけるCXを高める取り組みが紹介されていた。
上記のサービスはまだコンセプトを紹介する段階とのことだったが、9月から「ATM mini」のもう一つのサービスとしてすでに稼働を開始しているサービスも展示されていた。車の後部にATMが積まれている移動式ATMだ。
「銀行は行くから。来るへ」というコンセプトのこのサービスは、イベントなどの人が多く訪れる場所に移動式ATMを出張させるというもの。現在は1台のみが稼働しており、イベント主催者などからの要請に応じて出張しているという。
現在の銀行のサービスは、不便に感じることが多いのが実際のところだ。Japan Digital Designの取り組みは1日も早く実現してほしい未来である。
今回のテーマであった、Society 5.0とは「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(引用:内閣府)」を指しており、内閣府が「目指すべき未来社会の姿」として提唱したものだ。
具体的には、「IoTで全ての人とモノがつながり、新たな価値が生まれる社会」「イノベーションにより、様々なニーズに対応できる社会」「AIにより、必要な情報が必要な時に提供される社会」「ロボットや自動走行車などの技術で、人の可能性がひろがる社会」などを指している。
今回特に印象に残った部分としては、ローソンが遠隔によるバーチャルクルーを通しての接客や、医師の問診や専門家によるレクチャーを遠隔で受けられる場を提供する未来を提示していたところだ。この「遠隔による高い水準のサービス提供」は一つのキーになっていくように感じた。局地的に人不足が深刻になっていく未来にとっては、誰でも利用できる場は多くのニーズを満たす貴重な場となっていく可能性がある。今後もこれらの取り組みに注目しつつ、未来の体験を探っていきたい。