周りを見渡してみると、みんなスマートフォンの画面を見ているーー。
そんな光景は、もはや当たり前のものになっている。友人や家族が目の前にいたとしても、それぞれが別々の画面を見ているというのも珍しいことではない。
いつでも、どこからでも欲しい情報を取得できるようにしたスマートフォン。それは多くの恩恵をもたらしてくれていることは間違いない。
しかし、それゆえに目の前にあるものと向き合う機会を奪っていると捉えることもできる。
そんな中、パナソニックで先行開発に特化して活動するデザインスタジオ「FUTURE LIFE FACTORY」は、製品化が未定の1つのコンセプトモデルを発表した。
子どもたちが目の前にある世界にもっと目を向けたくなるスマート知育玩具「PA!GO(パゴ)」だ。
「大人だけでなく、子どもも画面の中にとらわれている」そんなことに問題意識をもち、開発が進められているプロダクトだ。
製品発表に登壇したパナソニック デザイン本部の今枝氏は「テクノロジーが子どもたちの想像力や好奇心に取って代わってしまうのではなく、むしろ伸ばすような未来にしたい。多感な時期に身近にあるリアルなものにもっと関心を持ってもらいたい」と、PA!GOの目指すところを語る。
子どもの好奇心をブーストする
PA!GOプロジェクトは、「子どもが好奇心の赴くままにリアルな世界を楽しみながら、より深く学べるサービスを提供したい」という想いからスタートした。
PA!GOは、目の前にある動物や植物などをキャプチャーすると、それが何かを教えてくれるデバイスだ。未知なものと出会う楽しさを与えることで、子どもたちの「探索する」「遊ぶ」「学習する」といった様々な意欲を育むことを狙う。
まずは動画をみるとどんな製品かよくわかるだろう。
キャプチャーしたものはPA!GOに保存されるので、家に帰ってテレビに繋げて、その日にどんなものと出会ったのかを家族と一緒に振り返ることができる。詳しい情報や関連トピック、関連動画などをみることができるため、より深く学習できるようにもなっている。
将来的には、PA!GOにパナソニック製の高性能カメラやミニプロジェクターを搭載する予定だ。これにより、PA!GOを懐中電灯のように使い、記録したものや動物を壁や天井に投影できるようにし、自分の体験をプレゼンするような機会を作る。
なお、キャプチャーしたものを判断する画像解析には、Googleが開発したプロセッサEdge TPUを搭載し、Googleの機械学習ライブラリTensorFlowで構築したAIが採用されているという。これも素早い製品化を目指すための選択となる。
β版のフィードバックを得ながら製品化を目指す
PA!GOは製品化が未定のコンセプトモデルだが、この日は最適な体験をデザインに落とし込んだデザインモデル(一番右)。市販の部品を組み合わせて作られた実際に稼働するプロトタイプモデル(中央)、実際に発売を予定しているダンボールモデルが披露された(一番左)。
プロトタイプは、数十から数百程度のものや動物などが登録されており、それらをキャプチャーすると、実際に名前と説明を読み上げる段階まで開発されているものだった。
販売が予定されるダンボールモデルは、開発途中であるPA!GOのベータ版の体験キットして販売されるものだ。販売時期は2019年の秋以降を予定しており、まずは英語版で提供される。
製品化となると、どうしても品質面で高いレベルが要求されるため、発売時期が遅くなる。パナソニックは、ベータ版を通して市場の反応を見ながら、実際の製品化を目指すアプローチとして、今回のステップを採用している。
なんでもインターネットから情報を得ることができるようになり、何をするにもインターネットで調べてから行動することが多くなった。それにより、体験したつもりになってしまうことも多い。
しかしインターネットで得た情報は、基本的に誰かのフィルターを経て届けられるもの。実際に自分で体験してみないとわからないことも多く、誰かの評価が自分にとって正しいとも限らない。
子どもたちがリアルの世界にもっと目を向け、自分で感じとること、それを促すプロダクトとしてPA!GOには是非日の目を見て欲しい。