XDを運営するプレイドが、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2020年3月2日から5日の放送では、調布市深大寺に佇む一軒家の薪火料理のレストラン、Maruta(マルタ)を紹介した。ローカルファーストを大切にしたMarutaでは、すべてのお客様が同じ時間に食事を開始し、テーブルを囲んで料理をシェアしながら時間を過ごす。
窯元で一枚ずつ丁寧に作られた唐津焼のテーブルウエアや、独特なオリジナルカトラリーなど、食にまつわるあらゆる体験を提供しているMaruta。放送では、お店のコンセプトやこだわり、調布という地域への思いを、シェフの石松一樹氏に伺った。
本記事では、放送内容をまとめ紹介していく。
食べにいくことで、間接的に地域にも貢献できるレストラン
――Marutaは薪の火で調理するんですよね。どのような特徴が生まれるのでしょうか。
一番特徴的なのが、香りです。ガスやオーブンのほうがきれいに調理できるのですが、食材に香りをつけながら調理できるのは薪火ならではです。木の種類によっても香りが違ってくるんですよ。現在はナラとクヌギの木をメインに使っていますが、食材によっては庭で剪定した枝やサクラをチップにして燻製にし、香りをつけることもありますね。
――薪火以外に大切にされているポイントはありますか?
「ローカルファースト」を掲げていることです。野菜は地元や三鷹や青梅の農家さんから仕入れたり、お店で自家菜園したもの。お肉やお魚類は、志が同じ生産者の方々のものを仕入れています。
サスティナブルであることも大事にしています。生ゴミや薪の灰、コーヒーのかすなどは、庭のコンポストで堆肥として菜園で再利用しています。最近来てくださるお客様は、こういったMarutaの取り組みを知り、賛同したうえでリピートで来てくださる方が多くなったと感じていますね。
おいしいだけじゃなく、「楽しい」レストランであるために
――店舗の空間づくりでは、何かこだわった部分はありますか。
一番心がけたのは、お客様にリラックスしていただける空間にすることです。天井はかなり高く作って、圧迫感を感じないようにしました。素材は主に木を使い、話し声や音が響かないような設計にしています。また、Marutaではお客様同士で料理をシェアしていただくので、そのときにゆったりと寛いでいただけるよう、5.5メートルの長くて大きいテーブルを用意しました。
――お客様同士が料理をシェアするスタイルは珍しいですよね。
友だちになるまでいかなくても、ただおいしい物を食べるだけではなく、同じ時間と空間を共有し、食の体験を通して、お客様にとって一つの思い出になると良いなと思っています。
そういう空間を体験してもらうことで、「楽しかった」と言ってもらえることが一番嬉しいです。「おいしかった」という言葉をいただくことは多いのですが、「ゆっくりできた」とか「子どもが楽しんでくれた」などの声が特に印象に残るので。
――Marutaで過ごす時間自体が楽しい体験になることを目指していると。
はい。ずっと同じ席に座っているよりは、何か興味がある物があったら立ち上がって見にいったり、写真を撮りにいったり、お子様と一緒に庭に出たりと、Marutaでの時間と空間を自由に楽しんでいただきたいです。そのためにも、料理人が調理してる目の前まで、お客様に料理を取りにいっていただくことをコースの最初に取り入れるといった工夫もしています。
また、気軽に来ていただけるようにイベントも定期的に開催しています。たとえば、春と秋に開催する「パワー・オフ・イベント」では電気やガスを全部切って、火を起こすところからお客様と一緒にやったことも。調理はすべて薪の火を使って、和ろうそくの明かりの中でお食事をしていただきました。他にも、農家さんに来ていただいて、オーガニック野菜を生産者さん自ら解説しながら販売しつつ、その野菜を料理するイベントなども開催しています。
菜園のハーブを自由に摘み、ハーブティーにすることも
――食事を提供するだけに留まらない体験といえば、菜園があるのも特徴的ですよね。お子様が遊びに行かれるという話もありましたが、どのように活用されているのでしょうか?
Marutaではお店がお食事がスタートする30分前から「ドアオープン」という形で店内を見ていただける時間を設けているので、その時間に菜園を案内させていただいています。
気になるものがあれば、ガーデナーもいるので説明をしながら菜園を回ったり、自由に摘んでいただいてハーブティーにしたり。珍しいハーブを中心に育てているので、摘んだとき手につく香りを感じること、新しい知識を知ることで体験が豊かになっている気がします。
――菜園があることで、Marutaの食体験は他にない特別なものとなりますね。
はい。輸送コストがかからないのはもちろんですが、何より鮮度がいい野菜が採れるのも魅力だと思っています。今の時期は、アスパラと豆類。採れたてが一番おいしい。今後は「ここで作ってるからおいしい」というのを売りにして、お客様に提供していきたいです。
スタッフや地域とつながることで、より「楽しい体験」を
――これからのMarutaはどのようなお店を目指していきたいですか?
Marutaで働くスタッフ一人ひとりが、自分の強みを生かせる空間にしていきたいと思っています。店内の設計上、キッチンとお客様の間に隔たりがないような造りをしているのですが、それは私も含めたスタッフとお客様との距離をできるだけ近づけたいからなんです。
菜園の世話をするスタッフや育てた植物でノンアルコールドリンクを作るスタッフ、発酵食材やチーズ作りをするスタッフなど、Marutaにはさまざまな人材がそろっています。それぞれがいろんな得意分野を高め合いながら、それをお客様にも感じてもらえる空間にしていきたいです。
――そんなお店になったら、お客様にとっても、働く人たちにとってもうれしいですね。
さらに先を見据えた話だと、この場所にMarutaがあることで地域がより盛り上がってくれたらいいなと思っていますね。ローカルファーストというテーマにあるように、Marutaに食材を卸すことで地域の生産者の方々が潤って、より良い野菜を作ってくれるとか。
東京の郊外って盛り上がっていない印象をずっと持っていたので、その地域の特徴を僕たちみたいな人間やMarutaという店を通して、再発見できるといいなと思っています。
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