XDを運営するプレイドが、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2020年8月24日から27日の放送では、保育施設併設のシェアオフィス「マフィス」を手掛けるオクシイを紹介。子育てをしながら働く方々をサポートするために、2014年に立ち上げられた同社。マフィスは現在、東京と神奈川、名古屋で展開されている。
放送では、オクシイ代表の高田麻衣子氏にマフィス誕生のきっかけや空間づくりの工夫、保育園が併設されていることで届けられる体験、今後の展開を語ってもらった。
本記事では、放送内容をまとめ紹介していく。
生き方の改善に。子育てと仕事の両立をマフィスで実現
――最初に、マフィスがどのような背景から生まれたのか教えてください。
構想の始まりは、私個人の働き方と生活を改善したいという思いからでした。
独立する以前は不動産業界で15年間働いており、当時は非常に男性中心の業界の中で、子どもを預けて働くことにやりづらさを感じていました。
毎朝、保育所に立ち寄り子どもを預け、満員電車で都心に通い、仕事が終わるとまた保育所へ向かい、家に直行するといった生活を繰り返していました。どんなに一生懸命頑張ってもすごく大変な毎日でした。調子を維持することも難しく、へとへとに疲れて気持ちも上がったり下がったりする中で、当然ながら子どもたちが病気になることもあり、「なんでこんなに毎日つらいんだろう」と思うようになっていました。
何とかして生活を改善したいと思ったのと同時に、同じような境遇で働く方々の生活も良くできないかと考えました。そこで、仕事場と保育所と家という3つのトライアングルの距離を、できる限り小さくすることを考えたのです。そして、2014年に保育施設とシェアオフィスを併設したマフィスを作りました。
――スタートしてから6年がたち、現在はどのような方が利用されていますか?
現利用者の半数近くが会社員の方で、個人契約だけではなく、法人契約も増えてきました。リモートワークという働き方が世の中で一気に浸透してきたのを感じています。
開業当初は9割くらいがフリーランスの女性でした。育休中の女性が、仕事復帰のための準備をお子さんを預けながら行う方が多かったんです。この6年で様相が変わりましたね。個人の働きやすさや子育てと仕事の両立のしやすさが、法人にとって優秀な人材を確保し続けるための重要な施策だと理解していただけるようになったと思っています。
併設はしても分離、仕事と子育て各々が集中できる空間
――空間づくりという観点で、工夫されていることはありますか。
保育施設とシェアオフィスそれぞれが区切られていて、お子さんはきちんと保育という形でお預かりしていることですね。施設によって広さやコンセプトは違いますが、シェアオフィスには子どもたちは入ることはできず仕事に集中いただける空間になっています。
たとえば、3階建ての北参道のマフィスだと、3階に保育施設があり、2階にシェアオフィスがあります。「オフィスだけ使いたい」というお客様でも、気持ちよく使えることを意識しながら空間を構成しました。
練馬では、アフタースクール併設のシェアオフィス「エミフィス」を運営しています。同じフロア内がガラス張りの窓で仕切られていて、オフィスの中から子どもたちの様子を見渡せます。子どもたちの元気そうな様子を見て息抜きもできる空間としました。
――マフィスの人気サービスの一つに、給食サービスがあると伺いました。
はい。子どもたちの「味覚を育てること」をコンセプトに給食を提供しています。これにはこだわりがあって、必ず五つの味、甘み、塩み、うまみ、苦み、酸みという「五味」を意識したメニュー構成にしているんです。苦みと酸味は子どもがあまり好きでない味ですが、小さいときから味を知ってもらおうと、必ず給食の中に入れるようにしています。
働いている親御さんが、家で離乳食を進めようと思っても、子どもたちが嫌がるものをメニューに取り入れるのは、結構疲れちゃうじゃないですか。苦みや酸味など、新たな味を知ってもらうという仕事はマフィスで引き受け、ご自宅では気楽に構えていただきたい。そんなスタンスで給食を提供しています。あとは、家での食事の介助がなかなか上手に進まない方には、離乳食介助に関する指導をするといったご要望にも応えています。
利用者同士の、新たな関係性も生まれる場所
――サービス開始から6年が経つ中で、新たに生まれた変化などはありましたか?
サービスを気に入ってくださっている方が多く、一度利用してくださった方が、次のお子さんが産まれたときも利用していただくケースが最近は増えていますね。
また、開業当初の利用者にはお子さんがもう小学校に入学されている方もいる中で、お母さまがそのまま継続してシェアオフィスを利用いただいくというケースも複数あります。私たちとしても、お子さんの成長や、利用者の方が親として、仕事面でどのように進化しているのかをずっと見させてもらえるというのは嬉しいことだなと思っています。
――保育施設併設のシェアオフィスだからこそ生まれる体験について教えてください。
保育園のママ友以上の、大人同士の付き合いもできることが、マフィスの魅力と思って見ています。たとえば、仕事内容が近い方や親和性のある仕事をされている方が、コラボレーションをすることがあるんです。これまでだと自社製品を販売されているお客様とデザイナーさんとの間で、Webサイト製作の取引がおこなわれるケースがありました。
あとはコミュニティを作ろうとしていないのですが、同い年のお子さんがいる方同士だと悩みを共有できるので、ママさん同士で仲良くなることが頻繁に起こっていますね。
子育てをしながら働きたい人が、自分らしく働ける環境を
――マフィスの事業では、新型コロナウイルスの影響はありましたでしょうか。
例年どおりの場所もあれば、ゼロ歳児は昨年より少ないところもありました。
マフィスでも、緊急事態宣言中はエッセンシャルワーカー以外の登園自粛をお願いしていました。6月以降に戻ってきていただけるよう対応していた一方で、どの施設もシェアオフィスへの問い合わせや利用がすごく増えたんです。ご夫婦で使っていらっしゃる方もいます。
みなさん緊急事態宣言中は、自宅にお子さんも、パートナーもいる中で働かれていたと思います。しかし、解除されたあとも、政府がリモートワーク推奨を呼びかけていたので、在宅勤務を継続される方が多かった。しかし、家の中では長時間集中できる環境がなかったり、仕事をする環境とは全然違ったりする中で、これまでと同じようなクオリティーをなかなか発揮するのは難しい。その中で、マフィスへの問い合わせが増えたようです。
――ありがとうございます。最後に、オクシイの今後について教えてください。
子育てをしながら、自分らしい仕事をするという考え方に全くぶれはありません。今後も施設を増やし、働きたい人たちが働ける環境をどんどん創出していきたいです。
そのためにマフィスを増やすのはもちろん、既存の保育園にもアプロ―チできたらと思っています。少子化の世の中なので、将来的には保育園の中でも、経営が厳しくなるところが出てくるのではないかと思っています。そんな保育園に対して、新しいコンセプトとして、マフィスのようなエッセンスを取り入れてもらう提案ができたらいいですね。
また、これまでなかなか進まなかったリモートワークが劇的に進んでいるので、郊外にももっと集中して働ける環境を生み出していきたいと思っております。
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