XDを運営するプレイドが、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2020年10月12日から15日の放送では、コピーライターの糸井重里氏が主催するWebサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」から生まれた「ほぼ日手帳」の販売などを手掛ける、ほぼ日が提供する体験価値について紹介した。
1日1ページのレイアウト、180度開きで、持つ人それぞれが自由に使えることから人気をとなっている、ほぼ日手帳。オリジナルサイズを中心に、A5サイズや週刊手帳、インターナショナルバージョンなど、さまざまな種類を展開している。
放送では、ほぼ日手帳の企画デザインを担当している星野槙子氏、ほぼ日が主宰するイベント「生活のたのしみ展」を担当する杉山摩美氏が出演。それぞれから届けたい体験価値、オンラインでの開催で得られたことについてを伺った。
一年を通じて愛着が湧き、かけがえのないものにする手帳
――ほぼ日手帳の特徴の一つは、持つ人それぞれが「自由」に使えることかと思います。ユーザーはどのような使い方をしていることが多いのでしょうか?
星野氏:使い方を定めてないので、同じ手帳なのに、使う人のカラーが色濃く反映されています。綺麗にぎっしり書かれた手帳が、SNSのハッシュタグや画像検索でたくさん見ることができるのですが、こんな使い方もできるんだとびっくりすることが多いですね。
個人的に驚いたのは、とある男性がカレンダーに毎日丸をつけていて、「この丸は何ですか」とお聞きしたら、「よかった日に丸をつけてます」と仰っていて。本当にシンプルなことですけど、すごく素敵な使い方だなと印象に残っているんです。
あと、今は新型コロナウイルスの影響で開催できていませんが、ユーザーさんに会いに行く「ミーティングキャラバン」というイベントを年に数回、全国で開催しています。手帳を持っていることが共通点で、多様な方が集まり、手帳の使い方についてお話してくれます。その場にいるときはすごく幸せで、一つのフォーマットに対して、こんなにも様々な使われ方や、いろんな人の人生があることに、すごく胸が熱くなります。またいつか直接ユーザーさんにお会いして、イベントを開催できたらいいなと思っています。
――ほぼ日手帳を通して、どのような体験を提供したいと考えていますか?
星野氏:ほぼ日手帳では、1年をかけて完成する自分だけの本にして欲しいという思いから、「LIFEのBOOK」をコンセプトに掲げています。そのコンセプトの通り、手帳の特徴の一つが、書き終わったあとに、振り返る方が多いことだと思います。
振り返ったことで、「過去の自分に励まされました」「書いたことでもう一度思い出せた」などと、言っていただくことが多いですね。また、書くスペースが十分にあるのもあり、毎日の一瞬一瞬をよく見つめるようになったという嬉しいお声もいただきました。
このように愛着がどんどん湧くというのは、私たちが届けたい一つの大きな体験かと思います。最初はまっさらな手帳が、使っていくうちに筆圧でボコボコしたり、何かを貼って膨れたり、そういうことを通じて、複製が不可能なかけがえのない日記になっていくこと。これはユーザーさんにとって、大切な体験になっていると思っています。
「手書き」というアナログ体験が海外では求められる?
――スマホやSNSがここ数年で普及する中で、手帳の価値はどのように変化していると考えられていますか?
星野氏:手帳がメディアになっていることを感じますね。自分が書いたことを文章で載せるのではなく、手帳に書いたものを写真に撮ってSNSに載せることが国内外問わず広まっています。1日の出来事を書いたり、写真やチケットを貼ったりした手帳の紙面が、SNSを通して一つの媒体として、ユーザーさんが発信してくれているのが印象的でした。
あとは、ユーザーさん同士がSNS上で「こういう使い方できるよ」「こういうペンがいいよ」という情報交換がされているというのも、今ならではだなと思います。
――国内外問わず、手帳の紙面を発信する方がいるというお話ありましたが、ほぼ日手帳は米国や中国をはじめ、世界中にファンがいるそうですね。
星野氏:はい、インターナショナルバージョンや簡体字版ができたことが一つのきっかけではないでしょうか。あとは、文房具がお好きな方や、ライフログを残したい人にとって、使い勝手が良くて、じわじわと広がっていったというのがあると思います。
例えば、中国の方は、日本と同じように、ライフログを残すことやカバーを選ぶ楽しみを魅力に感じてくれています。あとは、ページの下に載せている「日々の言葉」の内容をおもしろがってくれたりと、手帳を一つのクリエイティブの塊としてみてくれていますね。
中国は、日本以上にものすごいスピードで、あらゆるもののデジタル化が進んでいます。そのなかで、デジタルデトックスの一つとして、「手で書き残す」というアナログな体験が求められているのかなと思います。本能として、「何か書いておきたい」「感触をもって残したい」ということがあるのではないでしょうか。
この場所でしか生まれないお店と出会えるイベントも
――全国各地で、期間限定で開催するお買い物フェスのようなイベント「生活のたのしみ展」も、ほぼ日は主催されています。どのような体験を提供しているのでしょうか。
杉山氏:開催のきっかけは、ここにしかない特別な商店街を作りたいという思いからでした。六本木ヒルズのイベントスペースから始まり、これまで恵比寿や大阪の梅田阪急でも行いました。その都度、「この会場に合った企画って何だろう」「Webメディアではできないことって何だろう」ということを考えています。
Webメディアが二次元の場所だとすると、三次元でほぼ日を体験していただく場所が「生活のたのしみ展」です。Webメディアは、なかなか能動的にお客様にアクションが取れません。リアルだと、ほぼ日を知らない通りすがりの方にも会うことができますよね。
丸の内で開催したときは、ビジネスパーソンや若い方、家族連れ。東京駅では海外の方などが通りかかって、ふらっと入ってもらうことが多くありました。そこで、ふいに買った商品がそのまま、その方の生活の豊かさに寄与するといったように、何か偶然の出会いを作ることが、「生活のたのしみ展」で届けたい体験価値なのかなと思っています。
――“ここにしかない商店街”を作るために、どのような工夫がされているのでしょうか?
杉山氏:毎回お呼びする出展者さんの特徴として、普段お店をやっていない方が多いです。「この人のお店があったら夢みたい!」という方に、“本気のお店ごっこ”をしてもらうつもりでお願いしています。お客様からしても、「こんなすごい方がお店にたって、作品を買えるなんて」と思ってもらえると嬉しいですね。
そのときに、誰が何をやるかというのは、すごく大事な構造だと思っています。例えば、有名なスタイリストの方がオシャレな洋服のショップをやるのは、割とありそうな組み合わせですよね。でも、私たちの場合、買いつけもしてもらい、イベント内でご自身に売ってもらうといった、組み合わせ自体をユニークにするような工夫を心がけています。
自分たちが新鮮に思うモノづくりを続け、お客様に喜びを
――今年の「生活のたのしみ展」は、オンラインでの開催となりました。オンラインだからこそ体験できるについて教えて下さい(出演時は開催中初日)。
杉山氏:今までは空間で勝負していたのを、「時間」で勝負することになると思います。2週間の開催ですが、いろいろな形でコンテンツを出したり、お店を紹介していったりします。あとは、朝市や、夜は1日のお買い物の場所を振り返って、私達がラジオをするなど、いつ来てもちょっと新鮮で、にぎやかな感じをお伝えできばと思います。
今回のイベント名には、「DELIな生活のたのしみ展」というタイトルを付けています。デリカテッセンのデリで、デパ地下などで美味しいお弁当を買って、ワクワクしながら家に帰って開けるという気持ちになってもらえるような試みをしていきたいです。
通販ではありますが、利便性よりは、イベント内で買った物が届くまでワクワクするような気持ちに参加した方々がなれるように、いろいろ企画をしています。
――最後に、ほぼ日手帳が目指す今後について聞かせていただけますか。
星野氏:毎回、自分たちがびっくりすることはしたいと思っているので、そういうものづくりを毎年続けていきたいですね。ただ自分達だけが新鮮に感じるだけでなく、それがお客様にも届き、喜んでもらう取り組みをしていきたいと思っています。
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