XDを運営するプレイドが、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2021年1月4日から7日の放送では、パーソナライズド・ヘアケアブランド「CONSTELLA(コンステラ)」を紹介した。CONSTELLAでは、いくつかの質問に答え自己診断ののち、スタイリストによるカウンセリングやAIによって顧客に合った商品を届けている。
放送では、CONSTELLAを展開するアノマリー代表取締役の平澤伸浩氏に、商品のコンセプトや特徴、ユーザーが得られる体験、今後のビジョンなどについて語ってもらった。
本記事では、放送内容をまとめ紹介していく。
スタイリストとAIによる9600通りのオーダーメイド商品
――最初に、CONSTELLAの商品の特徴について教えてください。
オーダーメイド処方を決めるプロセスに、スタイリストとAIがかかわる点が大きな特徴となっています。CONSTELLAでは、お客様の自己診断結果が出たあとに、スタイリストがカウンセリングし、その結果をもとにAIが処方させていただきます。このステップによって、お客様のニーズによりぴったり合った処方を導くことができると考えています。
2つ目は、処方の組み方です。基剤と高濃度のヘアケア美容液、それから香り。この三つを調合してオーダーメイド処方を完成させています。この方法によって、髪の質感の変化を、早ければその日から実感いただけると思っています。
3つ目がブランドのストーリーですね。ブラジル人作家であるパウロ・コエーリョの小説『アルケミスト』から着想を得て、「旅」をコンセプトに作りました。CONSTELLAとは星座を意味するコンステレーションからの造語なんですが、お客様に選んでいただく香りも、旅の途中で出会う風景を思い出していただけるようにしています。
――シャンプーとトリートメントは、組み合わせによって9600通りもあると伺いました。
シャンプーとトリートメントのベースが各1本と、私たちが「インフュージョン」と呼んでいる高濃度のヘアケア美容液が、シャンプー用に2本、トリートメント用に2本入っています。これらをお客様でブレンドいただくことで、CONSTELLAの処方は完成します。
ベースには、ダメージケア、ボリュームアップ、スカルプケア、モイストという4つの処方があり、お客様に合ったものが選ばれます。さらにヘアケア美容液も、ケラチン、キトサン、コラーゲン、シルクという4種類から、お客様にとって最適と思われるものがシャンプー、トリートメント用に2本ずつ選ばれているんです。
処方の共通部分はありながら、一定の範囲をパーソナライズする。ベースの成分をオーダーメイド化するだけでなく、効果成分を外出しにすることで、完成した処方の効果や濃度をより高くできないか、よりお客様に合ったものにできないかと考えました。また、どのようにオーダーメイドしているのか、お客様が見えることも大事にしました。一手間かけることによって効果の実感が高まるのと同時に、安心できるものにしたかったのです。
自分以上に自分の髪を知っている、スタイリストという存在
――スタイリストがカウンセリングをするという新たな体験を提供するCONSTELLA。スタイリストは、ユーザーにとってどのような存在になるのでしょうか。
「私にとって何がいい?」という問いに、貴重なアドバイスをくれる存在だと思います。現在は何でもECで手に入るようになって、いいねの数など数値化された評価で決めることが多い。しかし、スタイリストから得られる情報は、お客様にとって信用できる情報です。
私たちがこの事業を考えたときに注目したのは、お客様とスタイリストとの関係性だったんですね。SNSを通じて人と人がバーチャルにつながっていく時代に、お客様と美容室にいるスタイリストの関係性は、ものすごくアナログな世界で成立している。
お客様がスタイリストに会うのは2~3か月に一度ですが、ものすごくいろんな話をしているんですよね。多くのスタイリストは、大切なお客様には自分が納得できるものしか紹介しないというプライドを持っています。それがわかるから、お客様は安心するんです。
――カウンセリングがあることで、ユーザーはどんな効果が期待できるのでしょうか。
スタイリストはひと言で言うと、自分の髪や頭皮について、自分以上に知っている人です。「何年もあの人に切ってもらっている」というふうに担当のスタイリストが決まっている方もいると思います。その方々の多くは、髪のことをスタイリストに全部任せている方も少なくないですよね。なぜかというと、髪のことは自分でもよくわからないからです。
髪は死んだ細胞が外に押し出されたものなので神経がありません。髪を引っ張るとわかるのは頭皮の神経のおかげですし、ヘアオイルを塗ってしなやかになったと感じるのは、指がそう感じているからなんです。直感的にわかりづらいのが、スキンケアとの大きな違いです。
「髪につやがないのは乾燥が原因だと思っていたけれど、スタイリストさんに聞いてみたら、キューティクルのきめがそろっていなかったことが原因だった」「直毛なのにまとまらないと思っていたら、実は内側にうねりがあった」ということはよくあります。
原因がわからないと、それに対応するシャンプーやトリートメントは処方できません。実際これまでのデータから、お客様の自己診断結果とスタイリストのカウンセリング結果には、必ずズレがあることがわかっています。当社が提供しているユーザー向けアプリ「My CONSTELLA」では、見立ての違いについてもダイアグラムで説明しています。自己診断だけの処方結果と、カウンセリング後の処方結果は当然変わってきます。
商品の開梱から使うときまで「旅」のような体験を提供する
――旅をコンセプトとしたブランドストーリーは、どのように商品に反映していますか?
商品の香りに反映されています。私自身がこれまで旅した場所からいくつかを選び、その記憶をモチーフに香りにして、想像する楽しさについてお伝えできればと考えています。
たとえば、マンハッタンのホテルに1週間滞在して、「昨日の夜は54丁目のジャズクラブでジャズに酔いしれた。でも、もう東京に帰らないといけない。ああ、もう少しだけこの心地よいベッドで寝ていたい」というときの香りを、「レイトチェックアウト」という香りにしました。
ほかにも、夏にフィンランドを旅して、夜の草原で大の字になって寝っ転がり、満天の星を見上げたときの香りをイメージした「草原のプラネタリウム」。南スペインのアンダルシア地方を旅したとき、大きいプールのパラソルの下で、アイスティーを飲みながら本を読んだ「気怠い午後」という香りなどがあります。香りを変えたときに、何となくわかってもらうこと。どこか懐かしく感じていただけることも香りづくりのコンセプトにしています。
同じ処方で違う香りのものを頼みたいという方もたくさんいらっしゃいますね。バスタイムに目をつぶって、少しでも想像の旅を楽しんでいただければ嬉しいと思っています。
――商品が届くまでのアプローチも大切にされていると伺いました。
ボックスの蓋を縦に開けると、まず見えてくるのが北極星を中心としたおおぐま座やこぐま座。星座を銀箔であしらっています。また、ボックスの蓋を縦に開け、中にある包装紙を横に開ける行為も、大切な方に贈り物をする風呂敷のコンセプトから引いています。
ボックスにもこだわりがあります。シャンプーとトリートメントのセットで、重さは500グラム以上になります。本来であれば、安価で強度の高い段ボールで箱を作りたくなりますが、それではなかなかきれいに線が出ません。そのため段ボールの代わりに、厚紙に色紙を貼って、一つずつその紙を折り込んで作っているのです。ボックスを開けることを、開封の儀みたいにおっしゃる方もいますね。わかるところだけを工夫する、とにかく見栄えをよくするという考え方もあると思いますが、仮にお客様が気づかなかったとしても、作り手である我々が「こういう価値を提案したい」と思ったものを作ろうと決めています。
感性を重視し、心地よい時間を提供できる商品へ
――CONSTELLAがモノづくりをするにあたり、大切にしていることは何でしょうか。
わかりやすい、強い刺激よりも、長い目で見たときに満ち足りた気持ちになれるモノやサービスをご提案できないかと、いつも考えています。私たちの心の琴線にふれるものは、時代を超えても変わることがないんじゃないかなと思うんです。
今、広く浅く人とつながる時代です。しかし、身近にいて自分を理解してくれている、信頼する人との関係性を大切にできる商品やサービスを提供したい。長い時間をかけて培ってきた、プロや目利きとしてのノウハウを伝えていくことに、すごく興味があります。
時代に逆行しようということではなく、バックエンドではデジタルのテクノロジーを使いながら、人がそれを活用していくような立ち位置がいいのではないかと思っています。
――ありがとうございます。最後に、今後のビジョンについて教えてください。
文化やアートの世界とコラボできたら楽しいなと思っています。たとえば、地方の職人さんや若手の音楽家、作家さんなど。CONSTELLAというブランドを舞台に、一緒に価値を作っていき、将来は売上の一部をそうした方の活動に還元できるようにしたいと考えています。
今は機能主義の時代なので、「こういうことができます」「こういう成分が入っています」という内容がファーストメッセージになることが多いです。しかし、モノを使うことは機能だけを消費することではありません。使っている空間、時間、使っている自分も、そこに入る。主人公だと思っています。特にシャンプーやトリートメントは、バスタイムに使う物です。あの時間をいかにリラックスした時間にできるか、心地よい時間にできるかと考えたときに、アートや文化は親和性があるのではないかと思っています。
もう一つは、美容室という場をもっと盛り上げられないかと考えています。美容室の数は、実数でも10数万軒あると言われています。デジタルの力を使い、スタイリストとお客様がもっとワクワクするようなサービスを今後展開できたらと考えています。
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