XDを運営するプレイドが、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2020年11月23日から26日の放送では、クリーマが運営するハンドメイドマーケットプレイス「Creema」を紹介。モノづくりや創作活動に取り組んでいる全国のクリエイターと生活者をネットでつなぎ、直接作品を売買できる場所を提供している。
放送では同社代表取締役社長兼クリエイティブディレクターの丸林耕太郎氏に、Creemaの魅力や伝統工芸のデジタル支援についての取り組み、今後の展開などについて伺った。
本記事では、放送内容をまとめ紹介していく。
「クリエイターが正しく評価される世界を実現したい」
――最初に、Creemaがどのようなサービスかを教えていただけますか。
創作活動に取り組むクリエイターと生活者をネットでつなぎ、直接作品を売買できるハンドメイドマーケットプレイスです。「本当にいいものが埋もれてしまうことのない、フェアで新しい巨大経済圏を確立する」ことを目指し、2010年にリリース。現在は20万人のクリエイターが1000万点の作品を出品しています。取引規模としては、アジアで最大級となっていますね。
サービスを作ったのは、プロとして音楽活動をしていたときに、才能や努力と世の中の評価が、必ずしも一致しないことに疑問を感じていたから。僕から見れば、すごい才能がある人なのに、なぜこんなに評価されないんだろうということがよくありました。才能がある人や一生懸命努力する人が正しく評価される世界を作りたい。その一心で、Creemaをつくりました。
――リリースした当初は、クリエイターの作品がなかなか売れなかったそうですね。
当初は、クリエイターの作品を直接ネットで買う消費体験そのものがあまり認知されておらず、購入に至るまでのハードルが高い印象でした。そのなかで、Creemaが提示した音楽業界でいうフェスのようなイベントを開催したのは、大きなインパクトがあったのではないかと思います。
もともと、この業界にはカルチャーの起爆剤になりうる場所を作る必要があると僕は思っていました。そこで、リアルな場所で、素敵なクリエイターの作品を買う体験がいかに素晴らしいことかを知ってもらえるように、とにかく「個人クリエイターの作品を買う」というカルチャーを広めることに注力しました。
――さまざまなクリエイターがリアルに集まる場を提供していったと。
はい。最終的に行き着いた先が、日本のモノづくりを世界に発信していくという大胆なテーマを掲げた、「ハンドメイドインジャパンフェス」というイベントの開催です。Creemaとして最大規模の取り組みで、準備には時間もかかりましたが、初回から2日間で約3万人もの方々にご参加いただくことができ、回を重ねるごとにカルチャーの醸成につながっているという感覚もありました。これらと並行して、Webサービスとして徹底的にプロダクトを磨き込む作業も行いました。
取引規模が拡大したのは、東日本大震災を始めとする社会的変化がある中で、消費に対する価値観の変容もあったと思います。ユーザーの声を聞いていると、何となくの部分もあるのですが「クリエイターから直接作品を購入する消費が豊かで幸せ」という考えが浸透していったような気がします。
オンラインとリアルの両方でクリエイターの発信を支援
――ハンドメイドマーケットの魅力について、丸林さんはどう考えていますか?
現在、月間2000万人以上の方がWebサイトとアプリに来訪していて、その数は継続して拡大しています。Creemaの場合、家具インテリアやキッチン道具などライフスタイル関連、そしてアクセサリーやバッグなどのファッション関連を扱うクリエイターが圧倒的に多いことが特徴です。
その中でも、プロやプロを目指して頑張るクリエイターが非常に多く、そうした方々のオリジナリティ溢れる作品を、一つの場所で宝探しのように探せる場所であることが魅力かと思います。
――クリエイターにとっても、商品を出品できるだけでない魅力があるそうですね。
はい。ハンドメイドインジャパンフェスのようなイベントだけでなく、「Creema Store」というリアル店舗を新宿と札幌で展開しています。オンラインだけではなく、リアルの場で自分の作品を手にとっていただける場所を作ることで、クリエイターの作品を発信、販売していく流通を確保しました。テストマーケティングの段階ではありますが、海外展開も進めています。
また、クリエイターの自己実現を支援する場として、クラウドファンディングサービス「Creema SPRINGS」をスタートしました。「海外で個展を開きたい」「東京から地方に移住して大きなアトリエを持ちたい」など、さまざまな夢や目標を持っている方の自己実現をサポートしたいと考えています。クリエイターとして活動する中での課題や願いを吸い上げ、その一つひとつを応援していけるサービスを今後も開発していきたいです。
伝統工芸のデジタル化支援で、さらなる広がりを展開
――クリーマでは、伝統工芸のデジタル化支援も行っているそうですね。
はい。伝統工芸のデジタル支援が最初にスタートしたのは、京都府さんとの取り組みでした。伝統工芸のメイン販路である観光客の大幅な減少や百貨店への来店者数が減っていることが課題としてあったんです。強制的にデジタルシフトせざるを得ない状況にある中、当社とコラボし、伝統工芸品のEC化を推進する企画に取り組むことになりました
実際に「京都手しごと紀行」という特設ページをCreema内に立ち上げ、Creemaユーザーに向けて各商品を紹介するにコンテンツを届けています。出店する方々には、当社スタッフがオンライン販売についてのコンサルティングも行いました。
「京の染め物・織物」「京の和小物」「京のうつわ」という3つのカテゴリに分け、京友禅を使ったうちわやマスク、七宝焼きや清水焼といった技法を取り入れたアクセサリーやブローチ、オブジェなどが並び、最終的には多くのユーザーさんがお買い求めくださり、伝統工芸士さんに喜んでいただけるような結果になりましたね。
――伝統工芸への支援は現在、京都府以外にも取り組まれているのでしょうか?
はい。伝統工芸品は、作り手のハードルも高く、ネットでは売れないと思われていました。しかし、京都府の取り組みでは参加いただいたすべての事業者で、売上が出ました。多いところでは、7桁の売上を毎月売り上げられる状態になっています。
我々も、Creemaというプラットフォームを活用すれば、もっと色んな伝統工芸士さんたちのお力になれると考えていたところ、全国からお声がけをいただけるようになりました。最近だと「KOUGEI EXPO」という、通常はオフラインで開催されている伝統工芸の大規模イベントとの連携があります。
今年は新型コロナウイルスの影響でオンライン開催となり、そのパートナーとして当社を選んでいただき、「KOUGEI EXPO 2020 ONLINE」が開催されました。コロナでみんなが厳しい状況なので、初めてのオンライン開催をCreema上で開催することにより、少しでも力になれたら嬉しいですね。脈々と受け継がれてきた伝統の技術や文化は非常に大切だと思いますので、自分たちなりにできることを今後もやっていきたいです。
「愛ある事業」で、これからも人や世の中を元気にする
――クリーマは11月27日に東証マザーズ市場に上場されました。あらためて企業としての強みや独自性について教えていただけますか?
ハンドメイトマーケットプレイスのCreemaに限定して話をさせていただくと、その独自性は、クリエイター側とユーザー側の2つに分かれると考えています。
ユーザー側の独自性は、プロやプロを目指して創作活動に情熱を持って取り組むクリエイターが圧倒的に多く集まる場所だということです。質の高い作品が数多く集まっており、ここでしか出会えないような幅広い作品が1000万点という規模で出品されています。
クリエイター側における独自性は、月間2000万人以上のユーザーがCreemaのWebサイトやアプリを見に来てくれているということに尽きると思います。これほど多くの、こだわりのあるものを求める方々が訪れる場は正直、他にあまりないのではないかと思っています。
――ありがとうございます。最後に、クリーマの今後の展開をお伺いさせてください。
2009年に創業し、「愛ある事業で、人を、世の中を、元気にすること」をミッションにこれまで取り組んできました。その第1弾の事業として、Creemaを展開しています。順調にサービス規模は拡大していますが、まだまだクリエイター支援でやるべきことはたくさんあるので、これからも既存サービスに投資し、より良いサービスを作っていきたいです。
あわせて、上場を皮切りに、「愛ある事業」をさまざまな領域に広げていきたいと考えています。せっかく人生をかけてやるのであれば、誰かの人生にプラスの力を与えられる取り組みをしたほうが、自分も幸せであり、当社に集まる仲間たちにとっても幸せだと思っています。そんな真っすぐな思いを持って、人を、世の中を、元気にしたい。かなり臭い言葉ですが、僕は大まじめに言っています。上場して会社が大きくなると、いろんなことがありますが、本質をぶらすことなく、これからも一つひとつ丁寧に、愛ある事業を作りたいです。
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