オンラインストアの台頭により、いまリアル店舗の存在意義が問われているーー。
そんな中、高級ブランドがひしめき、世界中から観光客が訪れる街、銀座に、良品計画は世界旗艦店となる「無印良品 銀座」を4月4日、オープンした。
B1Fから10Fまで無印良品の思想が詰め込まれたこのビルで、同社が考える「感じ良い暮らし」を、商品だけでなく、店舗やレストラン、ホテルを通して体現することで、その価値観を世界に向けて伝えていく。
ジューススタンドやベーカリーなどの飲食も充実。生活の一部に
「生活の基本となる本当に必要なものを、本当に必要なかたちでつくること」そんな商品開発を基本としてきた無印良品。東京・銀座の並木通りにオープンした「無印良品 銀座」では、その価値観に基づいた様々なサービスを提供する。
店舗の1Fでは、ジューススタンドやベーカリー、オーダーに応じてブレンドするブレンドティー工房など、新しい試みが目立つ。
ほかにも、関東近県の農家を中心に全国から仕入れた野菜やくだものを扱う「マルシェ」や、素材の味を生かし、化学調味料不使用で仕上げた「日替わり弁当」をはじめとした弁当類も揃えた。
ここから無印良品が、毎日立ち寄りたくなるような場所となり、生活の一部として融け込もうとする姿勢が伺える。
「日替わり弁当」に関しては、アプリから朝9時までに注文すれば銀座周辺(中央区、千代田区、港区)エリアに時間指定で届けるサービスも提供する。同店でピックアップできるモーニングコーヒーもアプリで事前に注文することが可能だ。
ほかにも本の仕立てをするサービスや、収納などの暮らしの困りごとの相談に応じるカウンターを設けたほか、似合う服をアドバイスするスタイリングアドバイザーやお気に入りのブレンドレシピをその場で調合してくれる香り工房など、店舗ならではのサービスを提供する。
無印良品の思想が体現されたホテルやレストラン
中国の深圳、北京に続く3か所目として日本で初めてオープンする「MUJI HOTEL GINZA」は、無印良品の思想を体験することができるホテルだ。
「アンチゴージャス」「アンチチープ」のコンセプトのもと、79室、9タイプの部屋を7F〜10Fで展開する。「ちょうどよい価格でよく眠れ、旅先の体と心を整える空間と、宿泊する方と土地を自然とつなげるサービス」を提供するのがこのホテルが目指すものだ。客室にある備品の一部は1F〜6Fの無印良品の店舗で購入することが可能。
ベッドは眠りと姿勢の研究に基づくマットレス。やさしい触り心地のバスタオルや、自然な眠りに導く照明など、安らげる空間にこだわった。
価格は14,900円から。平日や祝日、ハイシーズンやオフシーズンといった繁閑の差で価格を変動させることはなく、部屋のサイズに応じたシンプルな価格設定にした。
食の大切さ、楽しさを伝えることを目指す「MUJI Diner」は、食材の素のおいしさを大切にした料理をゆったりした空間で提供する。朝はおにぎりセット、昼は焼き魚定食、夜は炊き込みご飯を提供するなど、時間によって提供するメニューを変え、7:30〜22:00までオープンする。
上海、深圳、北京に続く4店舗目で、こちらも日本初となる。
無印良品の魅力が自然と伝わってくる店舗に
筆者がこれまで訪れた無印良品の店舗はワンフロアで、シンプルで主張がないイメージ。しかし、銀座の店舗はフロアごとに設けられたテーマが明確であり、ディスプレイにも工夫が感じられるからか、無印良品の価値観が明確な形で伝わってくるようだった。1Fから6Fに続くエスカレーターを登っていくと、様々な商品やコピーが目に飛び込んできて、それだけで思想が伝わってくる。
「ここに来れば無印良品の魅力がわかる」そんな店舗を実現できているのではないだろうか。混雑がしばらくして落ち着いた頃に、この店舗の本当の魅力をゆっくり確かめたくなった。