インターネットやSNSの急速な普及により、今では誰もがオープンに意見を述べることができる時代となった。それと連動するかのように、消費者の心理もシフトしている――。
経営コンサルティングファームのA.T. カーニーが2017年5月に行った調査(*)によると、真のデジタルネイティブである「ジェネレーションZ世代」の登場により、今後10年で消費のルールが「人とのつながりや共感を重視する」ように変わると予想されている。
今回は、同レポートを参照しながら、今後の消費の流れを予測していきたい。
※未来の消費者に関するグローバル調査:世界7カ国からそれぞれ約1000人(合計7000人超)の消費者を対象に行われた。対象地域は、インドと中国、日本、ドイツ、アメリカ、イギリス、フランスである。
「ジェネレーションZ世代」が、今後の消費活動を担う
A.T. カーニーの調査によれば、2027年の消費者世代は、主に6つに分けられるという。
「沈黙の世代」(1928~1945年生まれ)、「ベビーブーマー」(1946~1964年生まれ)、「ジェネレーションX」(1965~1980年生まれ)、「ミレニアル世代」(1981~1997年生まれ)、「ジェネレーションZ」(1998~2016年生まれ)、そして「アルファ世代」(2017年以降生まれ)だ。
「沈黙の世代」と「アルファ世代」を除く4つの世代が消費社会のメインを担い、なかでもより高い影響力をもつのは、世界で想定人口の3分の1となる「ジェネレーションZ世代」と想定される。彼らは物心ついた時からSNSなどに触れている真のデジタルネイティブだ。
この世代は、インターネットでより大量の情報に無料で触れているため、信頼に基づいた意思決定を行う傾向が強くなっている。また、SnapchatやInstagramのダイレクトメッセージのようなコミュニティの中で、クローズドに直接メッセージ交換することを好む。
購買活動を支える「世代」が変わり、その「価値観」が変化し始めている。
「ハイパー・コネクティビティ」時代による変化
「ジェネレーションZ」を中心とした若い世代は、インターネットで大量の情報に触れているだけでなく、常に誰かとつながっていることが日常となる。
スマートフォンの保有率も、上の世代と比較して高いことが調査で明らかとなり、調査回答者の半数近い人数が「積極的にソーシャルメディアに参加している」と答えている。
こうした人やモノがインターネットに常につながっている状態を、A.T. カーニーは「ハイパー・コネクティビティ」と呼んでいる。日々の心拍数や活動量をモニタリングできるスマートウォッチや、音声を通して買い物や家電の操作などが可能になるスマートスピーカーといった、インターネットに接続するIoTデバイスなどが生まれている。同様に、人と人もつねにインターネットでつながっている。
これまでの消費者は、商品やサービスに固有の価値を見いだし、所有している物で自分を表現していた。しかし、先述の人口動態・価値観の変化と「ハイパー・コネクティビティ」が結びついていくことで、所有している物ではなく、人と人とのつながりや影響力を重視するようになるという。
インターネットで常につながることで、消費者は特定の個人や、信頼するインフルエンサーの情報発信に影響を受け、信頼に基づき意思決定を行うようになるからだ。
調査結果によると、経済活動において10年後に主流となる「ミレニアル世代」(1981~1997年生まれ)、「ジェネレーションZ世代」(1998~2016年生まれ)の人は、調査をした半数以上がブロガーやインフルエンサーに影響を受けているというデータが出た。
インフルエンサーと聞くと、SNSなどで数百万人のフォロワーを持つような著名人を想像するだろう。しかし、数千人のフォロワーをもつ「マイクロ・インフルエンサー」への注目も忘れてはいけないという。マイクロ・インフルエンサーは、フォロワーとの良好な関係を構築している場合が多いため、より効果的に信頼を構築できるためだ。
モノを買うときの決め手も、「有名なブランドだから」ではなく、「この人がおすすめしていたから」になりつつある。買った人がモノをインターネットを通じて発信すると、それがまた誰かにとっての購買のきっかけになるかもしれない。
常に誰かとつながっている時代は、モノの買い方が変わってきている。その背景には、ハイパー・コネクティビティ以外に、ブランド に対する意識の変容も要素として挙げられる。
品質の良さだけでは、信頼を獲得できない
調査では「大手企業・ブランドへの信頼がほとんど/全くない」と回答した人の割合が、2012年と比較して激増した。
顕著なのがフランスだ。「LOUIS VUITTON」や「CHANEL」など有名ブランド発祥の地にも関わらず、ブランドへの信用がないと答えた人は2倍となった。同様にイギリス・アメリカでも約1.4倍。日本でも1.25倍となっている。
つまり、今後は品質の良さやサプライチェーンの統一性だけでは、消費者の信頼を獲得できないことを意味している。Appleのように厳格な哲学を守り続けることや、環境に優しい製品を提供すること、社会課題に対して行動を起こすことが求められてくるという。
サービスや商品の提供には、顧客との関わりが必須に
こうした調査結果を踏まえて、A.T. カーニーでは「消費者と直接つながる」ことの重要性を説明している。各パーソナリティに合わせた商品の提供が必要となる今後は、顧客と直接つながり、関係構築に積極的な投資をしていくことが不可欠となるだろう。
各顧客がどのような価値観を重視して意思決定しているかを知ることは、真のニーズを探るために重要なアクションとなる。個々とつながるコミュニティが形成できれば、そこで得られたデータをもとに、ニーズに応じた商品開発を行うことも可能だ。
また、そのためにマイクロインフルエンサーとの連携も忘れてはいけない。サービスと相性のいいインフルエンサーと連携することによって、その先にいる顧客への訴求力を高める。
顧客の価値観や懸念点などが浮き彫りになったら、それを理解して動くことで顧客から「信頼」を得ることが必要だ。ソーシャルメディアなどを通して情報の透明性を出し、顧客が常に実績を見られることも信頼を築く1つの方法となる。
コミュニティ内での共感や、自分に合ったものを探求する結果、消費行動が多様化してきてた。それに応えるには、顧客との直接の関わりが避けて通れなくなってくるだろう。
img:https://www.atkearney.co.jp/The-Consumers-of-the-Future,Unsplash