XDを運営するプレイドが、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2020年7月27日から30日の放送では、バッグブランド「anello®」を展開するキャロットカンパニーを紹介した。1988年に大阪で設立されたキャロットカンパニーが、anello®を誕生させたのは2005年。デザインと機能性、手頃な価格で若い女性を中心に人気を呼び、現在のリュックブームをけん引する存在となった。
放送では、キャロットカンパニー東京支社長の三浦力也氏に、anello®のブランドが確立するまでのストーリーと、人気商品を生み出す秘密について伺った。
本記事では、放送内容をまとめ紹介していく。
「手頃な価格で多機能」、anello®が確立されるまで
――anello®は開口部がばっと大きく開く、口金タイプのリュックが特徴的ですよね。ブランドとしてはどのように確立していったのでしょうか。
そもそも、「ブランディング」という概念で物事を進めたことはありません。それよりもかばん屋として、良いものを作ることにこだわってきた。ただ、あるときから「商品はよく見るけれど、これが『anello®』とは知らなかった」という声をよく聞くようになって。僕たちがやっている仕事をもっと知ってもらいたいという思いが強くなっていったんです。
ブランドをもっと大きく出すにあたって、まずは名前を知ってもらうためにブランドロゴを商品につけるところから始めました。その後、口金タイプのリュックがヒットしたことで、一気に名前が広がっていきました。ブランドを前面に打ち出したというよりは、ヒット商品から名前が訴求されて、ブランドが確立していったという流れですね。
――先に商品自体が知られていったのですね。人気が出た理由はどこにあるのでしょうか?
一つは、価格設定だと思います。anello®は5,000円前後のものが多く、比較的買いやすいお値段。そのため、10代から60代までの幅広い年代の方が購入してくださっています。
そして、機能性も支持されるポイントの一つかなと。多収納であることを切り口の一つにしており、かばんの中に細かく仕切りが欲しいお客様にお使いいただけます。一方で、ポーチなどで収納はするから仕切りは必要ないというお客様にも、口が大きく開く点が「入れた物がどこにあるのか見分けがつき、使いやすい」とのお声をいただいています。
良い物を作るための試行錯誤をする中で気付いた意外なこと
――anello®のかばんの機能性は、子連れの方が使うマザーズバッグとしても人気を集めたそうですね。その理由は、何だと思われていますか。
実際にanello®のかばんを使った一部のお母様の感想が、SNSなどで拡散されたことがきっかけでした。小さいお子様を連れた状態だとなかなか手が離せないため、かばんに物をとにかく突っ込んでしまう。anello®のかばんだと、何がどこにあるのかすぐにわかりやすいから助かる、というものでした。また、自立し、開口部も大きく開けておくことができる点も、小さいお子様を世話しながらでも非常に使いやすい、との声が多かったです。
その口コミをきっかけに一気にマザーズバッグとして注目されるようになり、妊婦さんや若い子育て世代が行くショップでメイン商材として取り扱ってもらうようになりました。一時期は「子育てにはこのかばん」と言われるほどで、定番のリュックは累計600万個の売上がありましたね。もともと「マザーズバッグを作る」という考えは全くなかったんです。商品開発の段階で意図したものではなかったので、非常に驚きました。
――追求した使いやすさとニーズがうまくマッチしたんですね。人気商品を生み出す秘密は、どこにあるのでしょうか。
商品が人気になるには、メーカーとして「どれだけ良い物を作れるか」に懸かっているという認識を強く持っています。そのために、どのような体制がベストなのか、人材を増やしたり、いろんな施策を進めながら試行錯誤したりしたのですが、どんな時でもデザイナー職の割合が変わらないことに気づいたんです。目標にしているわけでもないのに、必要な人員をそろえると、全体の20%がデザイナーさんになっています。不思議ですが、良い物を作るうえで、社内の中で多くの人がものづくりに関わっていることが大切なのかもしれません。
商品を広げる近道は「いかに多くの方の目に触れさせるか」
――anello®は百貨店ではなく、より専門的なショップやファッション関係の量販店で販売しています。人気となった理由の一つに販売方法もあるのでしょうか。
百貨店さんは、非常に魅力的な販路ではありました。ただ、anello®の価格が、百貨店さんの商品単価と合わなかったのが正直なところです。どうにかして百貨店以外の販路を作ろうと思ったときに、専門店やリーズナブルな商品を扱うファッション関係のショップへの販路が広がりました。それが結果的に、今の客層に対する訴求につながりましたね。
ブランディングをしてこなかった会社が、商品を広げていく最短の道は、やっぱり商品をたくさん世の中に出すことでした。だからこそ、商品をいかに多くの方の目に触れさせるかを考えて、商品を売っていただけるお店との取引を増やしていったということです。
――国内に限らず、現在20カ国で販売されています。海外展開の経緯を教えてください。
実は海外展開も、先に商品が人気になったことがきっかけとなって始まりました。もともと取引していた香港で、anello®の商品がブームになっていたんですね。香港はさまざまな情報発信の場になっているため、東南アジアやヨーロッパのバイヤーさんからの問い合わせが殺到したんです。4~5年前は1日50件を超えるほどでしたね。
ライフスタイルに溶け込むようなカバンになるために
――大阪の心斎橋、梅田に続き、昨年12月には東京・原宿に直営店『anello® TOKYO』をオープンしました。お店のコンセプトや原宿で展開する新しい試みを教えてください。
心斎橋や梅田はユニセックスな店作りを意識しており、男女両方が来店できる品揃えをしています。新しくオープンした原宿店では、20代の男性の方に向けて商品構成やレイアウト、雰囲気などを作り込みました。anello®のメイン客層は女性や30代の男性が多いので、原宿を訪れる若い男性にも商品を使ってもらいたいと思っています。
原宿は、いろいろなカルチャーやファッションの発信地だと認識しているので、そこでanello®の世界観を表現し、世界に向けて力強く発信できるのではないかと考えています。
――最後に、anello®が目指す、今後のブランドの姿について教えてください。
新型コロナウイルスの影響を受け、購買の考え方や生活者の行動パターンも変わってきています。本当に必要なときに、必要な物を買う世界へと変わってくる中で、みなさんのライフスタイルに溶け込むような、生活の中で必須になるかばんとなることを目標にしています。
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