XDを運営するプレイドが、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2020年3月16日から19日の放送では、デンマーク出身のフラワーアーティスト、ニコライ・バーグマン氏を紹介した。彼は一つの箱に花を敷き詰めた「フラワーボックス」の考案者。その斬新な発想は贈り物が好きな日本人の心をつかみ、新しいギフトとして定着した。
放送ではバーグマン氏本人に、フラワーボックスを考案したきっかけや、花を通したCX(顧客体験)で大切にしていること、今注力していることについて話を伺った。
花を敷き詰めたフラワーボックス。秘訣は「サプライズ感」
――バーグマンさんが考案された「フラワーボックス」は、2020年で誕生から20周年を迎えました。最初にフラワーボックスが生まれたきっかけについて教えてください。
「イベントの手土産で、会場が狭く、重ねて置けるフラワーギフトを考えてほしい」というお客様の声がきっかけでした。フラワーアレンジメントを作って箱に入れてみましたがコストが合わず、直接箱に花をアレンジすることを思いついたんです。そのイベントでは採用されませんでしたが、店頭に飾ってみたところ、セレクトショップのバイヤーの目に留まり、後に大ヒット商品になりました。
――大ヒットした理由をどのように分析されていますか?
「サプライズ感があること」だと思っています。箱を受け取った瞬間は、中身がお菓子なのか雑貨なのかも分かりません。開けてから初めて“花”だと分かるんです。中には、もらった箱をケーキと勘違いして冷蔵庫に入れてしまい、数日後に開けて驚いたという話も聞きました。箱の蓋を開けた瞬間の第一印象が良い体験となり、人気にもつながったと思います。
――特に印象に残っているエピソードはありましたか?
ある年の繁忙期、たまたま私が店頭にいたら、年配の男性から声をかけられたんです。「あなたが出演するテレビを見て、フラワーボックスを買いに来ました」と言ってくれて。私が「いつも奥さんに花を差し上げているのですか」と聞くと、「いやいや、人生70年の中で、花を買うのは初めてなんです」と。お花を買ったことがなかった70歳の方まで届けられて「うれしい」と思うと同時に、お花が持つ力の可能性を感じた瞬間で、記憶に強く残っています。
今やるべきことをやり抜く、「良い我慢」が成功のカギ
――バーグマンさんは19歳のときに初めてデンマークから日本に来たそうですね。花に対する価値観について、日本とデンマークにはどのような違いがありますか?
デンマークは、花が自分へのご褒美であり週末の楽しみになるほど、身近な存在です。花屋だけでなく、スーパーやガソリンスタンドにも花が売られているほど。一方で、日本は自分に花を買う習慣はそこまで浸透していませんが、ギフトとして贈る習慣が根付いています。
――2020年1月に『いい我慢〜日本で見つけた夢を叶える努力の言葉〜』という本も出版されました。「いい我慢」とはどんな我慢でしょうか。
我慢には良いイメージがないかもしれませんが、私にとっての我慢とは、自分の成長のために今やるべきことをしっかりとやり抜くこと。自分を犠牲にする我慢ではなく、夢につながる我慢をして頑張っていれば、良いことが起こるというイメージを持っているんです。
「花によるサプライズ感」を提供、南青山に生まれたカフェ
――現在、国内外で14店舗を展開されています。どのようなこだわりを詰めていますか?
購入した人もギフトをもらった人もサプライズや喜びを感じられる、そんなトータルエクスペリエンスを意識して店舗設計を進めました。「花をプレゼントする」という体験は、店内に入るところからスタートしています。そのため、モノトーンにカラフルな花がある店内で、ラグジュアリーな空間を体感してもらえるよう、細部までこだわっています。
この空間作りを大切にしているので、購入に至らなくても「お店に入ってみたくて来ました」「インスピレーションをもらいました」と言われるだけで、非常に嬉しいです。
――バーグマンさんはカフェ「Nicolai Bergmann Nomu」も展開されています。このカフェを始めたきっかけについて教えてください。
カフェは約10年前、南青山の本店に併設する形で始めました。私は昔から建物やビルを見ることが好きで、南青山付近でよく物件を探していたんです。この本店ビルはひと目見て「フォーリンラブ」でした。フラワーショップとしてはあり得ないほどの広さで立派だったのですが、どうしてもここでお店をやりたくなったんです。
この広いフラワーショップに多くの人が来店する方法を考えたときに、カフェを思いつきました。カフェがあることで、普段花に触れる機会が少ない方にも、花のすばらしさを体感してもらえる機会になります。カフェ目当てでいらっしゃったお客様がフラワーショップにも来店してくれることがあり、結果的にビジネスとしてもうまくいっていると思います。
――お花もあって、カフェもある流行りの「インスタ映え」な空間が、10年前からあったのは驚きでした。このカフェを通して、どのような体験を提供したいと考えていますか?
ニコライ・バーグマンのフラワーショップにあるカフェなので、「花によるサプライズ感」を提供したいです。そのために、ガラステーブルの中に生花をディスプレイしたり、壁を苔やグリーンを使ってディスプレイしたり、毎日時間と手間をかけて準備しています。
お客様が店を後にしたときに「楽しかった」「リラックスできた」と感じられたらいいですね。食事が美味しいことはもちろん、その空間自体にも満足してもらえたら嬉しいです。
2月にギャラリーをオープン、筆を使わず花で描いた作品など
――フラワースクール「Nicolai Bergmann International School of Floristry」も経営されていますが、そこではどのような体験ができるのでしょうか?
私やトレーナーが講師になり、季節の花を使ったフラワーアレンジメントについて指導しています。初心者、中級者向けなどのコースの他、様々なテーマのワークショップも開催しています。1回から気軽に参加することができます。
スクールの考え方としては、スキルよりも、自分がリラックスしながら楽しく花を制作できることを大切にしています。フラワーアーティストになりたい方やフラワーショップに勤めている方もいますが、ぜひリラックスした自分の時間を楽しんでもらいたいです。男性が比較的少ないので、花が持つリラックスさせてくれる力を体感しに来てほしいです。
――最後に、バーグマンさんが今注力されていることを教えてください。
2020年2月、南青山の本店前にオープンしたギャラリー「GALLERY nicolai bergmann」です。私のアートワークを楽しんでもらえる場で、筆を使わずに花で描いた絵や、植物と異素材を組み合わせたオブジェなどの作品があります。ショップとはまた違う植物から広がる新たな体験を楽しんでもらいたいです。
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