XDを運営するプレイドが、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2020年2月24日から27日の放送では、『sweet』『リンネル』『smart』などの人気雑誌を展開する出版社、宝島社を紹介した。1971年に創業した同社は、毎月発売する本格的な付録つきファッション雑誌は女性や若者を中心に絶大な人気を誇る。しかし、もともとは別事業のために設立された会社であり、出版社としては後発組というから驚きだ。
放送では、同社広報課課長の山崎あゆみ氏、『リンネル』『大人のおしゃれ手帖』で編集長を務める西山千香子氏に、付録つきファッション雑誌を扱うようになったきっかけや付録作りのこだわり、雑誌によって提供したい顧客体験などについて伺った。
本記事では、放送内容をまとめ紹介していく。
誌面の内容だけではなく「どんなサービスを提供するか」を
――前半は山崎さんに話を伺います。最初に宝島社が付録つきファッション雑誌を扱うようになった経緯について教えてください。
もともと宝島社は、自治体向けコンサルティング事業を提供するためにスタートしたんです。出版事業を始めたのは設立から数年後で、出版社としては後発です。
出版物を製作する際、一般的には「どのような誌面にするか」を考えますが、当社は「どのようなコンテンツやサービスを提供するか」という観点から企画を考案しています。たとえば、1980年代初頭にはカセットテープ付きの本を他社に先駆けて出版したり、人気アーティストのグッズを本とセットにして販売したりと、新しい取り組みをおこなっていました。
そんな背景がある中で、ファッション雑誌の企画・コンテンツとしても付録を取り扱うことになり、2002年に初めて『sweet』と『smart』に付録をつけて発売。その後も当社独自のキラーコンテンツとして、当社の雑誌全てに毎月付録をつける戦略がスタートしたんです。
――雑誌に毎月付録をつけるのはかなりのチャレンジですよね。
当時は大変だったことが多かったですよ。たとえば、梱包する箱の強度が足りず中身が潰れてしまったり、マニキュアなどの液体製品を付録にできるのか問題になったり。「豆皿のような割れ物はつけられない」と言われたこともあります。しかし、製造業者さんの協力で梱包技術が向上し、現在はさまざまな付録をつけられるようになりました。
潜在的な市場を雑誌で開拓し、読者との出会いを付録で作る
――各雑誌の編集部では、どのような位置づけで付録を作っているのでしょうか。
巻頭特集と並ぶ人気特集として、担当者が読者のニーズやトレンドも踏まえて企画製作しています。18年かけて独自のノウハウやナレッジが蓄積されており、今では読者の予想を良い意味で裏切るような付録が提供できていると自負しています。
――読者には付録を通してどのような体験を提供していますか?
「大人かわいい」というブームを作った『sweet』や、暮らし系雑誌の『リンネル』など、当社はこれまで顕在化されていなかった市場に向けて新しい雑誌を出すことで、その市場を開拓することを得意としてきました。そこに付録というコンテンツを加えることで、その雑誌で提案しているライフスタイルやファッションをすぐに体験できるようにしています。
――最近では電子書籍の取り扱いも増えていますが、デジタルとアナログの違いについてはどのように考えていますか。付録があることによる強みについても教えてください。
「付録がある」ということで、雑誌を買う習慣のない方や当社の雑誌を買ったことのない方にも届けられるようになったのは、アナログならではの強みだと思っています。
実際に読者から寄せられた声には、付録をきっかけに購入して「誌面はこんなにカワイイんだ」「雑誌を誌面で見ることの楽しさを知りました」というものがありました。
付録は誌面の雰囲気やメッセージを込めた大切なコンテンツ
――後半では『リンネル』『大人のおしゃれ手帖』の編集長である西山さんに話を伺います。雑誌の付録作りでいつも意識されていることはありますか?
自分たちが本当に「使いたい!」と思えるものかを常に意識しています。たとえば、ステンレスボトルのように機能的なアイテムにはかわいらしいデザインをプラスする。ファッショナブルなブランドバッグなら、機能性を付け加えるなどの工夫をしています。
付録は誌面の雰囲気や伝えたいメッセージをアイテムに置き換えた大切なコンテンツです。できるだけ読者が生活の中で使えるアイテムを提案し、手に取ったときに「うれしい驚き」を感じてもらえるよう企画しています。そのため、街中で付録を実際に使っているシーンに遭遇すると、「満足してもらえているのかな」とうれしく思っています。
――2019年の『リンネル12月増刊号』では、LISA LARSON(リサ・ラーソン)のステンレスボトルが付録でしたが、発売から4日で完売したそうですね。
はい。雑誌の理想は発売初日に買い求めてもらうことですが、みんなが多忙なこのご時世にそれを求めるのは難しいと感じています。しかし、付録というキャッチーなアイテムがあることで、「そういえば今日が発売日だ」と思い出してもらえるきっかけにもなりましたね。
雑誌の枠を超えて、読者に「体感」を届けたい
――付録の先にある顧客体験として、今後どのようなビジョンを描いていますか?
雑誌が提案する世界観を読者に実感してもらうため、メーカーとコラボした商品を販売したり、ワークショップを開催して読者を招待したりと、実際に「体感」してもらうことを考えています。
――雑誌という枠を越えて、その世界観を読者が体感できる機会を提供すると。
はい。『リンネル』や『大人のおしゃれ手帖』の読者は、暮らしに対する向上心や知的好奇心が旺盛です。だからこそ、その気持ちに応えられることをやりたいですね。スクールを開設したり、女性が好きな飲食系のイベントやプロダクトをプロデュースしたりして、読者同士が触れ合って刺激をもらえるような場を作れたら最高だと思っています。
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