XDを運営するプレイドが、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2020年10月5日から8日の放送では、キングジムの文房具ブランド「HITOTOKI」を紹介した。同社はオフィス用品の文具メーカーだが、2017年に個人向けブランドとしてHITOTOKIを発表。マスキングテープやふせんなどのカテゴリーで商品を展開している。
放送では、キングジム開発本部の戸上みず紀氏に、HITOTOKIを立ち上げた背景やコンセプトに込めた思い、商品開発における工夫、今後の取り組みなどを語ってもらった。
本記事では、放送内容をまとめ紹介していく。
さまざまな人に使ってほしい。暮らしのひとときを楽しむ文具
――オフィス文具メーカーのキングジムが、個人で楽しむ文房具ブランドをリリースした背景には、どういった理由があったのでしょうか。
戸上:立ち上げる数年ほど前から、趣味をサポートするための個人向け文房具を発売していました。当初、それらの文房具は、社内外で「女子文具」と呼ばれていたのですが、その言葉は分かりやすい半面、お客様目線の言葉ではないことに、どこか違和感があったんです。
気に入って選んだ商品が、“女子文具”としてくくられている。人によっては抵抗感や違和感を覚えてしまうのではないかなと。それなら新たなブランドとして一つにまとめ、皆さんの暮らしや価値感にフィットする形で提案しようと思ったのが、新たなブランドを立ち上げるきっかけとなりました。その後、約1年ほどかけてチームメンバーとブランドの構想を練りました。そして、2017年4月にHITOTOKIが誕生。ブランド名は、暮らしの中のひととき、その一つひとつを楽しんでいただきたいという思いを込めてつけています。
――もともと発売していた個人向け文具を、お客様に届けやすくするためにHITOTOKIというブランドが生まれたのですね。
戸上:当初、“女子文具”と呼ばれていたものは、自分たちが文房具を使っている中で、個人の趣味をサポートする文房具があったらいいなという思いから生まれました。ただ、社内の中でも「さまざまな世代のあらゆる方に使っていただきたい」という思いがあったんです
当初は新しいブランドとして立ち上げることに、上層部からは抵抗がありました。しかし、趣味をサポートするような文具を求める客様の声や、生活スタイルの変化などを提示して説得し、ようやく理解してもらえたという経緯があります。
日ごろの不満を解消し、暮らしを有意義にする文房具に
――HITOTOKIが大事にする「日々をたのしむ文房具」に込めた思いを教えてください。
戸上:HITOTOKIは、「ほんの一手間加えるだけで、暮らしの中のひとときがちょっと楽しくなる文房具」というコンセプトに掲げて、さまざまな商品を開発しています。ブランド立ち上げ時、どんな文房具を自分たちが今使いたいかを考えたときに、「ほんの少しの時間でも楽しめる」「持っているだけで嬉しい」「使うほどに愛着が持てるもの」というアイデアが出てきました。
文房具は日々の暮らしや日常につながっていると考えています。良い日も悪い日もありますが、人生はその積み重ねでできている。もちろん機能性や使い勝手、品質がいいモノを作ることは、どの商品でも心がけています。そのうえで、文房具という日常的に使うモノを通して、その先の暮らしまでも有意義にできる存在になれたらいいなと考えています。
――商品を開発するうえで、特に大事にされている点はどこになりますか?
戸上:学校やオフィスで使う文具も、個人向けも、当社の商品は日ごろの「不満点」に着目して開発しています。例えば、マスキングテープの「KITTA」は、あらかじめ一定の長さにカットされた剥離紙つきのマスキングテープがメモ帳のように束になっています。4種類の柄を1冊にまとめており、使用シーンに合わせてテープを選べることも特徴です。
これまで一般的だったロール形状のマスキングテープは、ペンケースに入れるとかさばってしまったり、複数のテープを同時に持ち歩きづらかったりといった不満の声がありました。そのため、コンパクトなカードサイズにして持ち歩けるようにしています。
SNSを活用して生の声を聞き、商品開発に生かすことも
――Instagramを活用したイメージ展開も、HITOTOKIの人気が生まれた一つの理由になっています。現在11万人ものフォロワーを抱える人気アカウントだそうですね。
戸上:ブランドを立ち上げた当初より、認知度を上げる施策としてInstagramのアカウントを開設し、商品の情報を配信していたのですが、初期の投稿画像は生活の中で商品を使っているイメージがしづらいものでした。そこで、途中からは暮らしの中に置いたときに「こういう使い方もできる」「こういう見せ方もできる」など、使っているときの様子を想像できるような画像を投稿するようになりました。
投稿する内容のアイデアは、チームメンバーで毎月考えています。出たアイデアをもとに、どのようなシーンで撮影するのかを話し合い、テーマに合ったスタジオを選び、カメラマンさんにも細かく要望をお伝えし、1枚1枚丁寧に作り上げていますね。
――フォロワーの反応はいかがでしょうか。広報室の井辺亜沙美さんにお聞きします。
井辺:新製品の投稿では、その日のうちにコメントやダイレクトメールをいただくことが多いです。例えば、KITTAを例に挙げると、商品の投稿をしたときに「待ってました」「かわいい、絶対買います!」といった、生の声がダイレクトに届きます。
また「こういう柄も欲しい」などお客様の意見も吸い上げられるので、開発チームに共有して、日々のアイデアに生かしてもらっています。HITOTOKI専用のWebサイトもあり、新商品が出るとサイトの中に新たなページを作って、案内をしています。皆さん新商品を心待ちにしてくださっているようで、そのときはPV(閲覧数)もかなり伸びますね。
新しい工夫を取り入れ、生活を彩る商品を提案したい
――商品を通して、お客様にどのように価値や体験を提供しているのでしょうか。
戸上:当社は商品ごとにアンケートを設けており、定期的にチェックをしています。そこに集まった要望や感想を日々参考にしながら商品を生み出しています。
マスキングテープのKITTAだと現在は第9弾まで発売しているのですが、単純にデザインを毎回増やすだけでなく、もっと楽しんでいただきたいと考えていて。例えば、テープ幅を通常のものより少し細めにしたり、KITTAを収納できるファイルや缶を出したり、新商品を出すたびに今までとは違うことを取り入れ、お客様に楽しんでいただける工夫をしています。
――最後に、今後の取り組みについて教えてください。
戸上:現在、文房具ブームにより各社から多くの商品が登場しています。これまで文具に興味がなかった方や、特にこだわりがなかった方にも文房具を選ぶ楽しさや使ったときの喜びを知っていただけるきっかけとなっており、一文具メーカーの社員として嬉しいことです。
その中でも、HITOTOKIは生活に彩りを添え、使っている時間も楽しんでいただける商品をご提案し続けることで、長く皆さんの生活に寄り添える存在でありたいと思っています。
日々、SNSなどを拝見していると、私たちが想定していた使い方以上にお客様が楽しんでくださっています。自分の気に入った使い方やアレンジ方法を見つけていただくことで、「こういう時間の過ごし方もありだな」「こういう使い方をすれば、もっと日常が便利になる」など、そういった新しい価値感が生まれることにつながればいいなと考えています。
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