XDを運営するプレイドが、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2020年12月7日から10日の放送では、株式会社ビビッドガーデンが提供する、品質にこだわった農家や漁師からの旬な食材を取り寄せできる産直通販サイト「食べチョク」を紹介。生産者と生活者をつなぐ同プラットフォームは、コロナ禍においても急成長を遂げている。
放送では、同社代表取締役社長の秋元里奈氏に、食べチョクを利用するユーザーが得られる体験や人気の生産者による販売の工夫など、産直サービスを通じた体験価値について伺った。
生産者の支援が、食べチョクの急成長につながった
――最初に、食べチョクの特徴について教えてください。
食べチョクは、全国の漁師や農家から直接食材を購入できるオンラインマルシェです。
さまざまな産直サイトがありますが、食べチョクならではの特徴は、単純に農家や漁師が商品を売るだけではないことです。たとえば、食べチョクが消費者の好みに合わせてオススメの農家をマッチングし、野菜の定期便をお届けする「食べチョクコンシェルジュ」を展開しています。その他にも、食べチョクの福袋など、様々な企画や商品作りに取り組んでいます。
また、農家から直接送られてくる野菜の品質について不安に感じる方もいらっしゃるので、品質保証制度も設けています。もし商品に不備があった場合は、必ず食べチョクの運営事務局で対応しています。お写真で送っていただければ、返金の対応をすることもあります。
――コロナ禍においても急成長を遂げているそうですね。
はい。新型コロナの影響が大きくなる中で、生産者から多くのSOSが寄せられるようになりました。たとえば、「給食に出していた食材が余ってしまっている」「飲食店との取り引きが停止してしまい、売上がほとんどなくなってしまった」といった声を多くいただいたんです。
食べチョクは、生産者と消費者を直接つなぎ、なかなか出会えなかった商品を消費者に届けたいという思いがありました。そこで、一部の送料を負担する形でキャンペーンを行ったところ、在宅時間の増加もあるせいか、より多くの方にサービスを使っていただけました。
また、新型コロナの影響を受ける飲食店も多かったので、シェフから食べチョクに出店している商品を使ったレシピを提供いただき、売り上げの一部をレベニューシェアをするモデルも作りましたね。そういった取り組みの成果もあり、流通額は2020年3~5月の3か月間で約35倍に増加。産直サービス業界の中では、最も利用されるようになりました。
「エンタメ」としての食体験が強いニーズとなっている
――食べチョクのサイトを開くと、たくさんの生産者が掲載されています。利用者がお目当ての食材を探せるように、どのような工夫をされているのでしょうか。
利用される方がどのようなニーズを抱えているのか、常にヒアリングをして把握しています。それに合わせて、トップページの作り方や検索の絞り込みを調整しているんです。
トップページの場合、「初めての方はこちら」「大人数の方におすすめ」「ギフトにおすすめ」など、ニーズに合わせた情報をお届けするようにしています。また、現在は登録している生産者が約3000件いるので、お客様の中には「誰から買ったらいいか分からない」という方もいらっしゃいます。そのため、普段どういった商品を買っているか事前に登録していただき、それに合わせて野菜セットを送る「食べチョクコンシェルジュ」も提供していますね。
――購入したお客様は、食べチョクを通してどのような体験をされているのでしょうか。
食を“エンタメ”として楽しまれているように感じます。今までは時短ニーズが強かったのですが、新型コロナの影響で家にいる時間が増えてから、「いかに楽しむか」が重要視されるようになりました。例えば、お魚だと今までは切り身が売れていたのですが、丸ごと1匹の鯛を買って、さばくところから楽しむ方が多くなりました。いちご農家が販売している「いちご大福セット」は、別々になっているいちごと大福を自分で組み合わせる体験を楽しむんです。
こういった体験型の商品を利用者の方は家の中のエンタメとして楽しんでいただいています。食べチョクで生産者が見える商品を購入することで、「この生産者はこういうこだわりを持って作っているんだよ」と、食卓の会話も増えたという嬉しいお声もいただきましたね。
体温を感じる商品の届け方が、より強固なファンをつくる
――食べチョクに登録されている生産者が3000軒いらっしゃる中で、人気の生産者はどのような特徴があるのでしょうか?
掲載する写真がキレイなど、訴求の仕方が上手ですね。しかし、意外なことにも、商品が届いたときの体験の良し悪しで人気が決まりやすいと感じています。
生産者によって商品の届け方はさまざまです。自社専用の段ボールを用意し、ブランディングをしっかりとしている生産者もいたり、無地の段ボールで送られてきて、中を開けたら「ありがとう」と手書きで大きく書かれていたり。一般的なECでは体験できないような、「体温」を感じる届け方をしている生産者の方は自然と人気が出ているような気がします。
――食べチョクを利用することで、生産者はどのような体験をしているのでしょうか。
「消費者の声を聞けること」が一番喜ばれています。今までは、中間の業者に卸して終わりだったため、自分の食材が誰に食べてもらっているのか分からなかった。よくスーパーで「顔が見える野菜」を見かけますが、生産者からは消費者の顔が一切見えなかったんです。
食べチョクは、生産者の野菜を直接消費者とつなげる役割を担っています。例えば、「甘みが強くておいしい」「こういう料理をつくるのにすごく向いている」など、消費者の声をダイレクトに聞くことで強みが分かったり、「こういう食べ方もあるなら、訴求内容を変更してみよう」といった感じで商品に反映できたりすることを喜んでいただいていますね。
初期から食べチョクをご利用いただいている生産者さんは、少量多品種で野菜を作っているのですが、食べチョクを始めたことで売上が約4倍に。他にも、生産者の中には売上の8~9割くらいが食べチョクのお客様で占めているという方もいらっしゃいます。
それだけ売上が伸ばせるということは、変化できる生産者なのだと思います。商品の伝え方だけでなく、レシピを一緒につけてみるなど改善を重ねて、どんどんファンが増えています。「これを食べたい」ではなく、「この生産者が販売する商品を買いたい」と人にファンがつくようになると生産者の売り上げもより安定しますし、励みにもなりますよね。
高齢者を巻き込んだ産直販売で、業界全体を明るくしたい
――これから生産者と消費者の双方に、どのようなことが求められていくでしょうか。
現在、生産者は「変化」が求められていると感じています。今までは言われた通りに作っていれば良かったので、変化することがありませんでした。しかし、今年は新型コロナの影響で、状況が大きく変化しました。その中で生き残れる人は、やはり変化できた人です。これからより一層求められますし、変化することで業界全体も良くなるのではないでしょうか。
一方で、消費者も新型コロナの影響のせいか、食の在り方に意識を向ける方がどんどん増えてきていると思います。単純に「モノ」として食材を見るのではなくて、裏側には生産者がいるというストーリーにも目を向けてくれる方が増えるとうれしいですね。
――ありがとうございます。最後に、食べチョクの今後について教えてください。
私たちは、生産者のこだわりが正当に評価される世界を目指しています。そのためには、高齢の生産者やネット販売の知見がない方をどんどん巻き込んでいかなければいけません。
実際、登録いただいている約3000件の生産者は、比較的若い世代と言われる40~50代の生産者が多いです。一次生産者の平均年齢は68歳と、高齢の方がたくさんいらっしゃいます。どうやったらそういった方々に使ってもらえるか。ネット販売の知見がなくても、生産者の良い商品が評価されてファンがついていく。そんな世界を食べチョクで作っていきたいです。
最近は、その足がけとして1つ目のサービスである『ご近所出品』をスタートしました。食べチョクに登録している生産者が、他の食べチョクに登録していない生産者を巻き込んで、ご近所で共同出荷できる仕組みです。以前から「隣のおじいちゃんがすごくいい物を作っているから一緒に売りたい」という若手生産者からの声があったため、食べチョクで公式にサポートできるようにしました。これにより、徳島では90歳の生産者が食べチョクに登録をしてくれたんです。これからも少しずつ地域を巻き込んだ取り組みも増やしていきたいですね。
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