今日もまた、「タピオカミルクティー飲みたいなあ」と思いながら、引きこもりの休日が終わろうとしている。
私は今、歳も気にせず女子高生たちにも大人気なタピオカミルクティーにハマっていて、毎日でも飲みたいのだけれど、職場近くにはあるものの、家の近くにはタピオカ屋さんがなくて、休日になるとそんな欲望にまみれてしまう。
今すぐに手元にタピオカミルクティーがやってきたらいいのに。そんなふうに思う一方で、叶えられない欲求を感じたのも久しぶりな気持ちになってくる。
日々、いろんな煩悩が頭によぎっているけれど、最近は、そのふんわりした煩悩を刈り取る仕組みがどんどん生まれているように思うのだ。
「そろそろ」からアクションまでのハードルがどんどん小さくなる現代
とある男の子が「明日髪切りに行くんだ〜」と言うので、「なんでその美容室に通っているの?」と聞いたら、「LINEで連絡できるから予約するのがラクなんだよね」という回答が返ってきた。
今の美容室に特に不満もないし、「それならば予約しやすいところでいいや」と思い、そのまま数年通っているという。
私も美容室に関しては、美容師さんのLINE@で連絡をとっている。「そろそろ髪切りたいな〜」と思うときに、普段使っているLINEですぐに名前を検索して話しかけているので、何のハードルもなく友だちに話しかける要領で予約できてしまうのだ。通っているお店が良心的な値段なこともあるが、LINEですぐにやりとりできるようにになってから、前よりも高い頻度で美容室に通っているような気がする。
また、最近はInstagramからコスメや洋服を購入したという声をよく聞くようになった。以前は「Instagramでよく紹介されていたから気になっていて買った」という声を多く聞いていたが、最近は「Storiesで見つけてそのまま買った」という声が多い。2018年9月にStoriesがショッピング機能に対応したことで、URLをつけてそのまま購入につなげる導線が一般的になってきたからだろうか。私自身も、Storiesに記載された最新の情報からモノをよく買うようになった。
現代の代表的ブランドのほとんどが、日常的にユーザーが閲覧しているSNSにアカウントを持っている時代だ。それは、初期にはブランドのロイヤリティを高めるコンテンツや、広告としての役割を担っていたことが多かったように思う。しかし、SNSも成熟した現代は、ニーズが発生した際の予約の問い合わせ先や購入サイトへのリンクなど、ユーザーのアクションをシームレスに導く「アクセスしやすい入り口」として機能していることが多くなってきたのではないだろうか。
「そろそろ」を先回りさえしてしまうテクノロジー
そんな、アクセスしやすい「夢が叶うボタン」を語ればすぐに、アマゾンダッシュボタンを思い出す人もいるかもしれない。あれも「ほしい」と思うときにスマホを開くまでもなく「夢を叶える」ボタンである。
しかし、Amazonは顕在化した夢を手助けしてくれるだけではない。わたしは最近、Amazonの公式アカウントからしばしばモノを買わされている。AmazonのLINE公式アカウントを友だち追加し、Amazonと連携させると、おすすめアイテムがLINEのメッセージで来るようになる。おすすめアイテムは過去に買ったアイテムの中で、最後の注文から少し時間が経過されたものをリコメンドしているのか、通知が来るたびに「そういえばそれなくなりそうだったわ〜」と思い、商品を買ってしまっている。
「いいなあ」と思った瞬間に、購入へと移行できる「夢がかなうボタン」がいつでも用意されている、だけでなく、「あなたがもうすぐ抱く『ほしい』ってこれですよね?」という提案まで事前にしてくれる。至れり尽くせりで、「そろそろアレがなくて『寂しい』」と渇望する気持ちはもはや、忘れてしまいそうになる。
「寂しい」に着目したアプローチで、消費者の心を射止めよう
「あなたが今この記事を読みながら飲んでいる“ソレ”。飲んでいる理由はなんですか?」
そんなふうに聞かれたら、あなたはどう答えるだろう。
「これが大好きなブランドだから!」と答える人はおそらく少数だ。「よく知っているブランドだから」という理由や、「安かったから」「好きな女優がCMに出ているから」「近くにお店があったから」など、理由はきっと多岐にわたるのではないかと思う。そして、その「選んだ理由づくり」こそ、長い間議論され続けている広告やプロモーションやブランディングの永遠の議題なのだ。
しかし、そんな「選んだ理由」について、最近わたし自身や、周りで聞いている限り少しずつ増えてきているのが「便利だから」、である。
魔法の便利ツール・スマホを常に手に持ち歩いている今、「『買う』という行為までのアクセスが容易」ということは、何かを選ぶ上での大きなアドバンテージになるのではないだろうか。そしてその手法は様々だ。今や、スマホの中で、決済もクーポン表示も店舗予約も口コミ確認もできる。買うという“行為”も、“意思決定”もサポートする手法はたくさんあるのだ。様々なチャネルと技術がオープンになっている現代だからこそ、どんな人も、そんな「(なにかを買うことで)誰かの夢を叶えてもらう」ためのホスピタリティを発揮することができる。
ユーザーが「そろそろ寂しい」と思うとき、日常の中にすぐに思いをアクションに変えられる導線を持っているか。そして、ユーザー行動のサイクルを把握し、ユーザーが「そろそろ寂しい」と思う時期を予測し、どのようにアプローチできるか。ユーザーをワガママな彼女のように観察し、湧き出るニーズに対して様々なチャネルと技術で対応すれば、どんなブランドよりも強力な「あなたが選ばれる理由」を作り上げられるかもしれない。