現代人はインターネットのなかった頃には戻れない。それほどインターネットと切っては切れない生活を送っている。企業もインターネットと消費者が密接に結びついていることを前提に動く必要があり、消費者のインターネット利用環境を把握することは適切な接点づくりのために欠かせない。
以前、XD内でも記事で紹介した総務省の調査からは、インターネットを利用する端末の割合において、スマートフォンがパソコンを初めて上回ったことが分かった。スマートフォンが一層普及したことで、環境もさらに変化してきている。
「スマホのみ」での利用が年々増加傾向
LINEは2016年より、インターネットの利用環境に関する調査を行っている。2018年の12月には、第5回目の調査結果が発表された。
同調査によれば、「スマホ」でのインターネット利用者は全体の90%。構成比として最多なのは「スマホのみ」での利用者で49%だった。
スマホファーストと言われるようになって久しいが、パソコンのみを利用するのはわずか4%と極めて少数派となっている状況が見てとれる。
注目したいのは、女性のほうが男性より「スマホのみ」を利用する割合が高い点だ。このデータから、女性をターゲットにしたビジネスを展開する場合、よりスマートフォンに最適化していかなければならないことがわかる。
女性の方が「スマホのみ」を利用する割合が高い傾向がある理由としては、スマートフォンのみでやりたいことが完結してしまうため、パソコンを利用する必然性がなくなってきていることがあげられるだろう。
今後もこの傾向は強まり、女性向けのサービスを設計する際にはスマートフォンの利用を前提にしていなければ、消費者が離れていってしまうことは容易に想像できる。
女性はスマートフォンからSNSを頻繁に利用する
女性がスマートフォンでどのような行動をとっているのか、もう少し詳しく見てみよう。2016年のデータだが、MMD研究所がインテル セキュリティと共同で行った調査がある。
その調査でスマートフォンを所有する15歳~49歳の女性に、定期的に利用しているアプリ・サイトを聞いたところ、全世代「LINE」が最多回答となったいう。
2位以下の結果を見ると女子高生の「Twitter(74.1%)」、「音楽再生アプリ(53.0%)」、女子大生では「Twitter(77.9%)」、「Instagram(50.7%)」、独身女性が「Facebook(45.2%)」、「Twitter(40.9%)」、既婚女性が「ゲームアプリ(35.6%)」、「ショッピングサイト(30.9%)」という結果だった。
どの対象においても、ソーシャルメディアの利用が多い。総務省 情報通信政策研究所の調査で記載されている休日の男女別、世代別のインターネット利用項目の平均時間を見ても、「ソーシャルメディアを見る・書く」に費やす時間は、男性が25.1分。女性が40.3分。女性は男性に比べソーシャルメディアに費やしている時間が多いようだ(調査結果は平日と休日に分かれているが、より長い時間、個人の意思で時間の使い方を選択できると思われる休日の数字に着目した)。
では、ソーシャルメディアの利用動向はどうなっているのか。「SNSと女性についての意識調査2017」という調査結果を見てみよう(「Skets(スケッツ)」という共創プラットフォームの会員向けに実施されたアンケートであるため、調査対象のリテラシーに偏りがあるとは考えられるが、参考にしたい)。
同調査の中での「使っていて楽しいSNS」という項目の回答では、Instagramの人気ぶりが伺える。Instagramは18~29歳と30代で1位、40代以上でもFacebookと同率で2位にランクインしているという。
Instagramを「使っていて楽しいSNS」に選んだ人々の理由も興味深い。「どうでもいい情報にリアクションしなくていい」「長々と余計な日記がないため嫌味がなく、純粋に楽しい気分になる」など、他のソーシャルメディアと比較しても直感的に楽しみやすい点に惹かれているようだ。
同調査では、SNS利用へのストレスを感じていた女性たちにとって、画像メインのInstagramは気軽に純粋に楽しめるツールだから選ばれるのでは、と仮説を述べていた。ソーシャルメディアの利用が多い一方で、「SNS疲れ」は蔓延していないのだろうか。
女性はSNSを使い分け、SNS疲れを回避
ジャストシステムが2017年に実施した、SNS利用による「疲れ」や「ストレス」に関する実態調査結果を見てみよう。同調査では、「SNS疲れ」が減ったと発表していた。その理由として挙げていたのが、「使い分けの上達」だ。
43.8%が「SNSに慣れて、自分なりの使い分けができるようになった」と回答し、38.4%の人が「SNSに慣れて、一つひとつのSNSに対して自分なりの使い方ができるようになった」と回答したという。この調査は女性に限ったものではないが、それでもソーシャルメディアの利用動向としてはチェックしておくべきだろう。
女性のスマートフォンユーザーは、ソーシャルメディアを最も利用することが多く、その使い分けが上達している。であれば、企業は顧客との接点を持てるソーシャルメディアにおいて、どのように使い分けが行われているのかを理解した上で、文脈に沿った発信を行うべきだろう。
スマホを利用するユーザーの多くが、SNS上に存在している。彼女らの発言について各SNSを横断してソーシャルリスニングし、その使い分けの様子を学ぶことができれば、適切なコミュニケーションが可能になる。
女性の顧客に働きかけたいのなら、まずは手元のスマートフォンでSNSを使いこなすところから始めてみてはどうだろうか。