スマートフォンが普及したことにより、多くの消費者が“小型のパソコン”といえるものを携帯する時代になった。消費者は「何かを知りたい」「何かが欲しい」と考えた瞬間に、すぐに調べたり購入したりすることが可能となり、情報の接し方が大きく変わっている。消費者がこの行動に出る瞬間のことを、Googleは「マイクロモーメント」と提唱しており、消費者との接触機会を考えるうえでの重要な変化として捉えられている。
企業が捉えるべき消費者の大きな変化
ここ数年で急激に進んだ「スマホシフト」。これにより消費者は、あらゆる情報にいつでもどこでも接触できるようになった。インテージの調査によれば、1日にスマートフォンに接触する回数は平均約50回で、1日の平均的な利用時間は3時間14分にのぼる。これを1回のアクセス時間に置き換えると3分〜4分程度となり、極めて短いアクセスが多く発生していることがわかる。まさにマイクロモーメントといえるもので、スマートフォンが生み出した新たな接触機会となっている。
どれだけ状況が変化したかを確認するために、それ以前の状況を振り返りたい。インターネットが本格的に普及しはじめる1995年より前は、情報接触機会といえばテレビ・雑誌・新聞といったものが大半を占めており、極めて消費者の選択肢は限られている状況だった。
その後インターネットが登場することにより、消費者自身が検索して情報を取得することが可能になり、情報の接触の仕方が受動的だったものから能動的なものに変化した。これでも大きな変化だが、その時点ではインターネットに接触する機会が自宅や職場などにあるパソコンのみといった具合に限られており、情報の接し方も限定的だったといえる。
そして、スマートフォンが登場したことによりあらゆる制約が取り除かれた。消費者は気になることがあれば、いつでもどこでも検索してすぐに解決することができるようになり、電車を待っている数分の間、飲食店で料理を待っている間など、隙間時間に気になる情報に接することが可能となった。全く場所とタイミングを選ばなくなっているのだ。
このような状況の中、ウェブサイトにとって、消費者が「知りたい」と思ったタイミングに受け皿となる情報をいかに届けることができるかという役割の重要性が増している。
時間があるときにゆっくりと見てくれるだろうという前提をなくし、通り過ぎそうなユーザーに声をかけるようなイメージがサイトには求められるのだ。
Googleが提唱するマイクロモーメント
Googleはスマホ時代に重要な指標として「マイクロモーメント」に関するガイドラインをまとめている。ここではユーザーがマイクロモーメントを起こすタイミングとして「知りたい」「行きたい」「買いたい」などの何かを求めた瞬間が紹介されており、これらの機会に合わせたコンテンツ提供や対策について確認することができる。
マイクロモーメントが発生する5つの動機として以下を挙げており、短時間にいかに消費者のニーズを見極め、求めているものを届けることができるかが重要であると述べている。
- 何かを「知りたい」瞬間
- 不満や問題を「解決したい」瞬間
- どこかに「行きたい」瞬間
- 何かを「買いたい」瞬間
- アイデアやインスピレーションを「得たい」瞬間
消費者が「いつ・どこで・なぜ」アクセスしているかを見極め、それに合わせることがいかにできるかが重要となっているのだ。消費者のニーズを短時間で見極め、それに合わせたコンテンツを提供することが求められる。
上記の5つの動機は、いまの時代に生まれやすいニーズを推測する上での指標になるだろう。
マイクロモーメントがはまったサービス
このマイクロモーメントにはまり急激に利用者数を伸ばしたサービスがある。その代表例と言えるのがスマートフォンでの利用が大多数を占めるフリマアプリだ。毎分新しい商品が出品され、早いケースでは数分で売れてしまうというスピード感が、瞬間的に物事が動く時代のニーズに合致した。
実際売れた商品の約半数が24時間以内に売れているとのことで、出した瞬間に売れたという話はいたるところで聞くことができる。
売りたい場合もスマホがあれば数分で出品できるし、購入する際にもECサイトと同様に簡単に購入することができる。
ECサイトのように複数在庫をかかえているものではなく、1点ものが出品されていることも、マイクロモーメントにマッチしたといえるだろう。
このように、マイクロモーメントは新たなサービスを生み出すほどの変化となっている。この変化を捉えて、しっかりと準備することは、もはや必要不可欠なことであるといえるだろう。今後も具体的な対策などについて紹介していきたい。