XDを運営するプレイドが、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2021年8月2日から5日の放送では、世界最大級のミニチュアテーマパーク 「スモールワールズTOKYO」が届けるCXに注目について紹介した。スモールワールズTOKYOは、東京有明にある屋内型テーマパーク。80分の1のスケールで広がるミニチュアの世界が、今若者を中心に多くの注目を集めている。
放送では、運営する株式会社SMALL WORLDS代表取締役社長の近藤正拡氏に、このテーマパークのコンセプトや大切にしている顧客体験、今後の展望などについて語ってもらった。
本記事では、放送内容をまとめ紹介していく。
「ミニチュアに住む」という新しい顧客体験
——「スモールワールズ TOKYOの概要について教えてください。
スモールワールズTOKYOは、2020年6月に開業した世界最大級のミニチュアテーマパークです。総面積は8000平米ほど。宇宙センターエリア、世界の街エリア、美少女戦士セーラームーンエリア、関西国際空港エリア、エヴァンゲリオン格納庫エリア、エヴァンゲリオン第3新東京市エリアという6つに分かれており、それ以外にも季節ごとに特別展示を行っています。
開業から1年間はコロナと共に歩み、来場者のほとんどが10代〜20代のカップルもしくは女性グループでした。ミニチュアそのものについての感想よりも「かわいいものがたくさんあって、それが動いて、初めて見るものばかりだから楽しい」という反響をいただいています。
——スモールワールズTOKYOは、通常のミニチュアのテーマパークとは全く違うそうですね。そのコンセプトを教えてください。
実は比較できるテーマパークがないんです。例えば東武ワールドスクエアさんは、建築模型の精密なミニチュア、アート作品としてのミニチュアです。またヨーロッパや北米にあるミニチュアのテーマパークは、もう少しスケールが小さくて、その世界を楽しむエンターテインメントとして作られています。
そういう類似パークとの違いは、まず動くものが多い点。かつ世界で初めてコンセプトとして持ち込んだのが「ミニチュアの中に住める」ということです。一緒に街を作っていこうという考え方のパークは世界で初めてですね。
さらに「クールジャパンを世界に広めていこう」という考え方で事業計画を立てましたので、日本のアニメをミニチュアとして作っています。アニメの世界をミニチュアエリアとして作ったのも、世界初の試みでした。
「聖地巡礼」だけでなく「思い出を残す」というニーズ
——実際にオープンしてみると、当初想定していたターゲットとは違う年齢層の方が多く来場していたそうですね。
「世界最大級のミニチュアテーマパーク」としてオープンしたので、最初はミニチュアがある程度好きな層や、ものづくりをしている世代の方など、比較的高い年齢層の方がメインの来場者層になると考えていました。しかし実際はこの層の方はほとんど来ていません。コロナ禍なので、感染する不安があるんでしょう。
SNS上で「スモールワールズTOKYOに行きたいよね」と話しているのは、私のような40代。実際に来場されるのはもっと若い世代です。カップルや友人と来場され、3Dスキャンをして一緒にフィギュアを作って持ち帰ったり、ミニチュアエリアに配置して2人の思い出として楽しんだりしています。
もともとは「小さなミニチュアを皆で見て楽しむ」という鑑賞のイメージでしたが、若い方が中心となったことで「一緒に住む」「思い出を残す」というイメージに変わりましたね。
——「住民権付きフィギュアプログラム」という参加型プログラムについても教えてください。
住民権付きフィギュアプログラムとは、最新鋭の3Dスキャナーで全身像を撮影し、自分の80分の1サイズのフィギュアを作って、ミニチュアの世界に住民として1年間置くことができるプログラムです。
オープン当初は、お一人で来られて、自分のミニチュアを人が多いところに置いていかれる方が多かったんです。実はそれ、グループであらかじめ企画したもので、一人ずつ来られて、どんどん仲間を増やしていることが最近判明したんです。こういう遊び方をしている方は増えていますね。
特に上海と香港が混ざったようなエリアは、夜市の世界やきらびやかな異国ムードがカップルや女性に人気で、とても多くの方が住んでいらっしゃいます。
最初私たちがイメージしていたのは、アニメでいう「聖地巡礼」だったんですね。皆さんがコスプレをして集まるように、その世界の中に自分がいられたらというニーズを想定していたんですが、この1年間で世界の街エリアの人口がとても増えたことを思うと、思い出を残すニーズの方が強いと感じます。
子どもの純粋なアイデアをすぐに具現化する「子ども国連」
——スモールワールズTOKYOには、80分の1の「子ども国連」があるそうですね。これはどのような考えからスタートしたのでしょうか。
スモールワールズの正式名称は「リトルアンバサダーズ・スモールワールズ」です。以前から、子どもたちがさまざまな国の親善大使になって、国際理解を深めていこうというプロジェクトがありました。そして子どもたちが議会で議論し、新しい都市計画を考えながらミニチュアを進化させていくという企画につながったんです。
この企画は私たちだけでは実現できないので、「SDGsピースコミュニケーションproject」に合流いただき「子ども国連」を始めました。子ども国連で議論した内容やSDGsを達成している姿を、先にプロトタイプとしてミニチュアで表現してしまおうというわけです。
――子ども国連の議論は、ミニチュアの世界でどんな体験となって表れるのでしょうか。
子どもたちは「自分のアイデアがすぐに形になるというのが楽しい」と話しています。実際に2021年3月に行われた子ども国連を我々で製作中です。展示が始まったら当初企画に参加した子どもたちが修正をくわえにやってくるでしょう。
日本のさまざまな小学校、中学校の子どもたちと繰り返しながら、ミニチュアをどんどん保守・拡張していこうと思っています。
たとえば、「道路が芝生に変わったらもっとエコなのに」という意見が出ています。それをリアルでやるのは大変ですが、ミニチュアならすぐに道路を芝生に変えられますよね。
大人の事情を一旦無視して、子どもたちの純粋な目線で「これだったらいいのに、おもしろいのに」ということをミニチュアで可視化していく。それを見ることで、逆に大人がインスピレーションを得られると考えています。
ディズニーランドを誘致した名プロデューサーの思いが「スモールワールズ」に繋がる
——今後「スモールワールズOKINAWA」の開業を予定しているそうですね。
2022年に沖縄で開業する予定で場所も決まっていますが、コロナ禍の影響で製作を一旦止めているという事情もあり、開業が遅れています。
このミニチュアを作り続けるプロジェクトは、新しいミニチュアができると古いミニチュアを次の拠点に移していく必要があるんです。1年で1拠点分を作る製作能力がありますので、順調にいけば毎年1つずつ拠点が増えていくと。今東京で展示されているミニチュアのいくつかは今後沖縄に移設されて、東京の展示物は新しく変わっていきます。来場者数が戻ったら急ピッチで製作活動を再開させ、なるべく早く沖縄に第2拠点を開業させたいと考えています。
今年の9月20日まで期間限定で、シルバニアファミリーのエリア「Sylvanian families『POP UP PARK』」が登場しています。シルバニアファミリーのドールを自分で作られる方は多いですよね。ワークショップでさまざまな服を作り、自分のドールを作り上げ、それをシルバニアファミリーのエリアに置いて撮影が楽しんでいただきたいです。
——最後に、今後の展望について教えてください。
実はスモールワールズTOKYOのコンセプトの土台となった企画があります。東京ディズニーランドを誘致した総合プロデューサーの堀貞一郎さんが1970年代に書かれていたもので、その企画を私が1990年代後半に発掘し、堀さんに「これをやりたいです」と言って始めました。
堀さんは「日本を海外にPRするエンターテインメントの1つとして、動くミニチュアや住めるミニチュアパークが重要になる」と考えており、私はその考え方に感銘を受けて、どうしても実現させたいと思ったんですね。
実際にミニチュアのテーマパーク作ろうとしてもお金がなかなか集まらなかったのですが、堀さんが書かれた企画書の具体的な内容や分析資料を投資家の方々に説明すると、「確かに新しいエンターテインメントだね」と納得いただけて資金調達できたという経緯があります。
堀さんの企画、想いが繋がって、見るだけではなく体験するエンターテインメントが新しく誕生しました。今後もこのコンセプトを忠実に守りながら、テーマパークを拡張、世界に1つしかないミニチュアのテーマパーク群を作っていきたいと思います。
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