XDを運営するプレイドでは、毎週月曜〜木曜日、J-WAVE(81.3FM)の『TOKYO MORNING RADIO』内で、放送※していた「KARTE CX VOX」。プロダクトやコンテンツ、イベントなどの誕生ストーリーや仕掛け人の思いを紐解き、「顧客体験(CX)」の意義をともに考える番組だ。
2021年12月6日から12月9日の放送では、日比谷の奥にひそむ、通な大人が集う高架下施設「日比谷OKUROJI」のCXを紹介した。2020年9月に有楽町駅から新橋駅間の煉瓦アーチ高架下にオープンした同施設には、ここでしか出会えない飲食、ファッション、雑貨などのショップが集まっている。
放送では、株式会社ジェイアール東日本都市開発の開発事業本部の伊藤友哉氏と大場智子氏に日比谷OKUROJIのコンセプトや場所をつくる際のこだわりや工夫したことについて伺った。
本記事では、放送内容をまとめて紹介していく。
一歩入ればユニークな店舗が並ぶ、通な大人な通り道
──まず日比谷OKUROJIのコンセプトについて教えてください。
伊藤氏:山手線有楽町駅と新橋駅間の鉄道高架下にある日比谷OKUROJIは、それぞれ違う時代につくられた3本の高架橋の下にあり、それが特徴の一つとなっています。日比谷側にある煉瓦アーチ高架橋は100年以上前の明治時代につくられ、今なお現役です。100年の歴史を次の100年につなぐことをコンセプトに日比谷OKUROJIは生まれました。
高架下通路を歩くと異なる高架橋と左右に並ぶ個性豊かな店舗を楽しむことができ、日比谷の奥にひそむ、通な大人の通り道となっています。
──感度の高い大人をターゲットにされているそうですね。なぜ、このような大人が楽しめる空間づくりを手がけたのでしょうか。
大場氏:もともと銀座や新橋は、日本のバーの文化が創られてきた場所です。素晴らしい技術を持ち、歴史ある著名なバーが多く集積していました。ただどこか敷居が高くて、入りにくいというイメージがあったため、高架下にバーをつくることで、少しでも入店しやすいカジュアルな雰囲気をつくれないかと考えました。
また海外のように気軽にバーを楽しむ文化を生み出したい思いもありました。そのため、ウイスキーのスタンディングバーやミクソロジーカクテル専門のバー、アイリッシュパブなど様々な種類のバーが出店しています。
──日比谷の高架下を選んだ理由を教えてください。
大場氏:新型コロナウイルス流行以前となりますが、夜の10時過ぎからもお客様の来店を見込める立地であったこと。そして帝国ホテルなどに宿泊した外国人観光客の「夜の時間を楽しみたい」というニーズがありそうな場所だったからです。
大人なお客様に上質な体験をしていただける場所をつくることで、ナイトタイムエコノミーを活性化できるのではないかと考えました。
──なぜ「日比谷OKUROJI」と名付けたのでしょうか。
大場氏:奥ゆかしさや通な雰囲気、300メートル続く高架下に一歩入った時の“路地裏感”を感じていただきながら新しい店を発見する楽しみや自分の好きな店を見つけ出してほしいという思いから「OKUROJI」とつけました。
歴史あるものを活かしつつ、時代に合わせた建物をつくる
──“大人が楽しめる場所”という雰囲気を演出するため、建物をつくる際にはどのような点にこだわりましたか。
大場氏:建物全体から経てきた歴史の積み重ねを感じていただけるように設計しました。工事に伴い、撤去した煉瓦部分やコンクリートで補強した箇所をあえて剥き出しのままにしています。
歴史あるものを壊して、新しいものを一から建てるスクラップアンドビルドではなく、街の風景にソフト面を合わせて時代とともに変化していけることが高架下の魅力だと感じています。
また照明の当て方にもこだわりました。300メートルの間に連続したアーチひとつひとつに下からライトを当て、空間全体をふわっと明るくし、雰囲気のよさを演出しています。
──気軽に入りやすい雰囲気づくりができているんですね。
大場氏:そうですね。一部の店では外でも飲めるように外に椅子やテーブルを置いて、入店の敷居が高くならないように工夫をしています。
また電車の「ガタン、ゴトン」という音を聞きながら街歩き感覚で楽しみながら店を見つけられるのも、他商業施設とは一味違ったポイントだと思います。
こだわりのある店に声をかけ、ここでしか出会えないモノ・コトをつくる
──日比谷OKUROJIにはどのような店舗が集まっているのでしょうか。
大場氏:大人に向けた施設であること、この場所を100年後も続けていきたいという思いがあるため、ここに来ないと出会えないような飲食、バー、ファッション、雑貨などの36店舗が集まっています。こだわりを語れるような、個人店や1〜2店舗ほどしか展開していない小規模店の方々にお声がけをして、誘致しました。
例えば、日比谷OKUROJIの一角にある京都丹後の手織りネクタイの店「KUSKA & THE TANGO」では、職人が丹精込めて手織りをするハンドメードのネクタイを販売しています。バー「MIXOLOGY HERITAGE」では様々な年代のウイスキーをマスターの感覚と経験で調合。ここでしか飲めないウイスキーを味わうことができます。
──コロナ禍での運営は大変なこともあったと思います。そのなかで得られた気づきはありますか。
大場氏:コロナ禍の影響により外食をしたり買い物に行ったりする機会が減りました。それらの体験がなくても生きていけると気づいた方も多いと思います。
そのなかでリアル店舗を運営する価値とは、店の人との交流やお客様同士の会話、体験を通して商品のよさを知れる点だと思います。その場でのいい体験が「また次来たいな」と思っていただくきっかけになっています。
まだコロナ禍の影響で厳しい状況は続いています。しかしここにはお客様が魅力的に感じる店がたくさんあるので、テナントの方々と一緒に乗り越えていけたらと思っています。
街と街をつなぎ、次の100年への架け橋になるような場所にしたい
──ジェイアール東日本都市開発では秋葉原から御徒町間の高架下に「SEEKBASE AKI-OKA MANUFACTURE(シークベース アキオカ マニュファクチュア)」も展開されています。高架下開発の魅力や難しさはどのようなところにありますか。
伊藤氏:高架下の特徴でもあるのですが電車が通る際の「ガタン、ゴトン」と音が聞こえること。これは難しさでもあるのですが、私たちは魅力と捉えています。電車の音で声がかき消されないよう、話す際にお客様同士の距離が自然と近くなるんです。
また高架下の上には高い建物をつくれません。しかし、街に対して水平方向に開発を展開していけるんですね。高架下だからこそ“街にしみ出るような”開発ができるのではないのかなと思っています。
──今後の展望について教えてください。
伊藤氏:近年、高架下の利活用が増えています。そのなかで私たちは街への広がりを第一に考えていきたい。既存の街づくりにとらわれず、新しい生活様式にも対応しながら、高架下の余白を活かして、サードプレイスや新しいこと、おもしろいことへの挑戦を続けていきたいと思っています。そして、次の100年につながるような街づくりをしていきたいです。
日比谷OKUROJIもその挑戦の一つです。最近では日生劇場で行われたミュージカルとのタイアップも実施しました。近隣のホテル、オフィスなどとの連携を強めて、街を盛り上げていきたいです。
日比谷OKUROJIを実際に利用してくださるお客様のなかには、宝塚劇場や日生劇場での観劇後にご飯を食べにきて、そのまま銀座に買い物に行くというシーンをよく見かけます。日比谷、銀座、有楽町、新橋という四つの街の結節点である日比谷OKUROJIが、街と街をつなぐ、なくてはならない場所になれたらいいなと思っています。
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