2018年9月4日、虎ノ門ヒルズにてCX(顧客体験)について真剣に向き合い、考えるイベント「CX DIVE 2018」が開催される。
今回のイベントでは、各分野におけるCXの新しい取り組みをしている「企業、ブランド、人」にフォーカスをあて、第一線でCXトランスフォーメーションをリードするゲストたちと、CXは今どうなっているのか、これからどうなっていくかを考える機会を創出する。
「XD」では、イベントに先駆けて登壇ゲストのストーリーを紹介していく。今回紹介するのは、「Media × CX」セッションに登壇する株式会社ニューズピックスの小野晶子氏だ。
慶應義塾大学環境情報学部在学中にディー・エヌ・エーでインターンし、新卒第1号社員として入社。その後もヤフー、クラウドワークスでプラットフォームビジネスの経験を積み、出版エージェントのコルクでクリエイター支援に携わる。米国ロサンゼルス在住中の2015年、NewsPicksで「デジタル時代のニュースメディアを悩ますコメント欄問題」にかんする記事を執筆。それをきっかけに、2016年6月よりコミュニティ・マネージャーに就任。コミュニティづくりの世界カンファレンス「CMX」東京支部代表。
ニュースを読んで自分の考えを書くことは人生を豊かにする
日本人は、ニュースに対して受け身。コメントをしたり、シェアをする文化もない。オンラインもオフラインでも意見表明をしないのが顕著だ。このような傾向が、ロイターが発表している「Digital News Report 2018」の統計調査から見てとれる。
株式会社ニューズピックスが提供するソーシャル経済メディア「NewsPicks」は、そんな受け身の姿勢を打破しようとしている。「発見と理解の欲求を満たす」をビジョンに掲げ、2018年6月末時点でユーザー数は約330万人、有料会員数は7万人を超えたという。
提携する100以上のメディアが配信する記事や、編集部独自の特集記事を読むことができ、ユーザーはニュースに対してコメントをつけて投稿することができる。「いいね」や「フォロー」といった機能を通して、ユーザー同士が交流することも可能だ。
「ニュースを読んで自分の考えを書くことは人生を豊かにする」ーー小野氏はそう語った。
彼女がそう考えるに至ったのは、自身の経験がある。小野氏がNewsPicksと出会ったのは2015年のことだ。米国ロサンゼルスに住んでいたころに、NewsPicksから「米国で流行しているアプリやサービスを紹介する連載を書かないか」という依頼があったという。
ライターを経験したことはなかったが、配車サービス「Uber」の運転手を体験してみた記事などを書くことに挑戦してみると、多くの反響が届いた。
小野氏「NewsPicksのコメント欄を見て、ニュースを読んで自分の考えを書くのは、色んなことに興味を持ち、点ではなく線で物事を考えられることにつながるので、人生を豊かにしてくれると思ったんです。また、自分が持つ知見を共有し、この場所に貢献しようというピッカー(ユーザー)の方々が多いことに、素直に感動してしまいました」
2015年から約1年半、小野氏はライターとしての関わり方ではなく、コミュニティ・マネージャーとして株式会社ニューズピックスへの入社を決めた。入社当初はロサンゼルスからリモートで働いていたが、2017年7月から日本に帰国して仕事をしている。
「読む」という体験だけに終わらせない仕掛け
今まで挙げてきたように、様々な媒体から配信された記事を読むことができる「プラットフォーム」、編集部独自の記事を読める「メディア」、コメント機能を通してユーザー同士が交流することができる「コミュニティ」といった3つの側面を持つ。
この「コミュニティ」が、読者の体験を変えるためには重要だと、小野氏は考えている。
小野氏「ただユーザー数やコメント数が多ければ良いというわけではありません。継続的に安心して利用してもらえるように、日々ユーザーの方々と向き合うようにしています」
コミュニティを運営する上で心掛けているのは、安心して意見を投稿できる場所にすることだ。読むという一方通行な関係だけでなく、コメントを通してユーザーがつながり、継続的に安心して利用してもらうためには、特定の人や意見を否定する場とはなってはいけない。
たとえば、コメントをする際のルール「NewsPicksコミュニティ・スタンダード」を決める際は、透明性を出すことを心掛けたという。東京と大阪でユーザーミーティングを開催しただけでなく、そのときの議事録を全てNewsPicks上で公開した。
小野氏「コミュニティはコントロールが効くものではないですし、厳しいお言葉をいただくこともあります。だからこそサービス提供者とユーザーという関係性ではなく、NewsPicksを一緒に作り上げる仲間となってもらい、同じ方向を見てもらうことを意識しました」
また、継続的にコメントをしてくれているユーザーにはインタビューを行い、NewsPicks上で記事を公開。普段はただコメントを読んでいるだけなユーザーの人柄を知り、直接コメントを投げかけられる場を作ることで、ユーザー同士の交流を活性化させたという。
こうした取り組みの成果もあってか、専門的な領域で活躍するユーザー同士が集まって飲み会を開催したり、中にはNewsPicksでの出会い結婚をするといった事例も複数生まれた。
コミュニティという観点で、顧客体験を深掘りするには
今、様々に業界でコミュニティへの注目度は高い。新たな顧客体験を生み出すためにも、コミュニティの形成は重要となる。それは、メディアも同様だ。
業界が抱える課題を打ち破るためにも、メディアはコミュニティと向き合わなければならない。コミュニティマネージャーである小野氏は、どのようにコミュニティと向き合い、メディアの体験を新たなものにしてきたのだろうか。
「CX DIVE 2018」の「Media × CX」セッションでは、コミュニティという観点での顧客体験をより深掘りしていく。気になる人は、ぜひ「CX DIVE 2018」に足を運んでほしい。
CX DIVE 2018
https://cxdive.com/
撮影/加藤甫