2019年は、あらためて「サステナブル(持続可能)」という言葉が注目を集めた年だった。
博報堂が2019年11月に発表した「生活者のサステナブル購買行動調査」では、生活者が3つの「サステナブル基準」をもとに購買行動をしていることがわかったという。
同調査は世界的にSDGs(持続可能な開発目標)達成に向けた取り組みが活発になる中で、日本の生活者が環境や社会を意識した消費行動にどう取り組んでいるのかを聞いたものだ。
3つのサステナブル基準とは何か。今後どのように消費行動は変化するのか――。調査結果からは、環境や社会に配慮することが企業にとって不可欠になることが見えてきた。
「必要最小限」の量を買って「長く使う」行動が定着
同調査は直近2~3カ月に食品・飲料・日用品を購入した全国20~60代の男女計6000人を対象に、購買の実態と今後の意向をインターネットでアンケート調査したものだ。
購買実態の項目では「買い物をする際に、どのようなことを意識するか」という質問を投げかけている。ここでは「長く使えるものを買う」と答えた人が91.9%と一番高い割合を占めた。
「すぐに新品を買い直さず、まだ使えるものは修理して使う」「物を買うときには必要最小限の量だけを買う」「資源をムダづかいしないように気を付けて買う」も70%を超えている。
「不要になったがまだ使えるものは人にあげたり売ったりする」と答えた人は全体で60.8%となったが、女性20・30代では70%を超え、他年代と比べても10%ほど高い。この結果に対して、博報堂は「この年代は特に、フリマサービスなどで中古品の売買を行う機会が多いことも影響しているのではないか」と分析。また、シェアリングエコノミーといった言葉が普及しつつある一方、「製品を買わずに借りたりシェアしたりする」と答えた人は19.4%とまだ低い。
食品・飲料に関する購買実態では、「賞味期限間近で値引きされたもの」「見た目や形が悪くても味は変わらない野菜・果物」を買うと答えた人が80%超えている。「余らせないように必要最低限の量」を買うと答えた人も、78.8%と高かった。
まだ食べられるのに捨ててしまう食品を指す「食品ロス」が年間600万トンを超え、この課題を解決するための「TABETE」や「Reduce GO」といったサービスも生まれるなど、注目を集めた。廃棄になる食べ物を意識して購入することや必要最低限の量を買うことは、金銭的な面だけでなく、サステナブルという観点でも購買基準になっている。
「環境や社会に配慮した企業」であることが判断基準に
購買について今後の意向を聞いた調査では、次のような結果が見えてきた。
現状の購買実態とは違い、ここで80%を超えた項目として特徴的なのが「環境や社会に悪い影響を与える商品は買わない」「環境や社会に悪い影響を与える企業の商品は買わない」の2つだ。環境や社会に配慮しない企業や商品は生活者の手に取られにくくなるようだ。
購買意向と実態の差が大きくなったのは、「生産・製造時に環境に負荷をかけない商品を買う」「環境・社会貢献活動に積極的な企業の商品を買う」という項目。40ポイント以上にわたって、購買意向の方が高くなっている。「生産・製造に携わる人の生活や人権に配慮した商品を買う」「売上の一部が環境や社会のために寄付される商品を買う」「環境や社会のためになる商品を積極的に買う」についても、40ポイント近い差が生まれた。
これらの調査結果を踏まえて、博報堂は「資源をムダづかいしないよう『必要最小限を買い(ミニマル)』、修理などしながら『長く使い(ロングライフ)』、不要になったものも『人にあげる・売る(サーキュラ―)』という、3つのサステナブル基準で生活者は購買の判断をしている」と分析。また、「『環境や社会に配慮した商品・企業であること』が、今後の購買行動における判断基準となっていくだろう」と記している。
企業が商品やサービスの顧客体験(CX)を考えるうえで、こうした生活者の嗜好の変化を見逃すことはできない。2019年9月、国連気候サミットの開催に先駆けて世界中で行われた「グローバル気候マーチ」では、ラッシュジャパンやバートンジャパンがデモ当日に「1日休業」すると発表した。この取り組みは従業員がデモに参加できるようにするためのものだが、サステナブルという領域に注力するブランドとして強い印象を残した。こうした取り組みは生活者の共感を集め、購買行動にも今後影響してくるのだろう。
持続可能な社会の構築に寄与することが、より良いCXの提供にもつながっていく――。XDでも「サステナブル」というテーマに注目し、継続的に取材を行う予定だ。