コンビニにおける「レジ」は、店舗にとって顧客との重要な接点である。しかし、お昼時などの混雑時には長蛇の列ができてしまい、気持ち良い接客をするどころか体験を損ねてしまことにもなりかねない。このような状況に対して、コンビニ各社はセルフレジを導入するなどの試行が続いている。
ローソンが2018年4月から提供を開始したセルフ決済サービス「ローソンスマホレジ(旧:ローソンスマホペイ)」もその一つだ。このサービスは、ユーザーが専用のスマートフォンアプリから自分自身で決済できるというものだが、ローソンはこれを全国に広げようとしている。
これまで都内を中心に58店舗(2019年2月15日時点)を展開していたが、これを2019年9月中に1,000店舗まで拡大させる計画だ。まずは3月中に101店舗まで広げる。
2018年10月に行われた展示会「CEATEC JAPAN 2018」においても、QRコードを活用したシステム「ウォークスルー決済」を発表して話題になった同社(*)。このようなテクノロジーの活用を通して、顧客にどのような体験を届けたいのだろうか。
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通常の買い物だと4分かかるのが「1分」に
ローソンスマホレジの一番の特徴は、“待たなくても買える”点に集約されるだろう。
顧客は、ローソン公式アプリ内で利用店舗を選択後、購入する商品のバーコードを読み取る。購入が終わりアプリ上で決済するとバーコードが表示されるため、そのバーコードを店舗内に設置されている専用リーダーにかざすだけで、決済が完了するという仕組みだ。
ローソンスマホレジの利用イメージ
決済は、クレジットカードと「Apple Pay」に加えて、「楽天ペイ」と「LINE Pay」の利用も可能にした。また、従来はバーコードをスキャンするときに「横のみ」だったが、「各方位可能」にするなど改善し、顧客の利便性向上につなげる取り組みを行ってきた。
こうした取り組みにより、混雑時にレジを待つときのストレス軽減と、レジ対応の省人化につなげることができるという。同社担当者によると、レジで買い物をすると入店から購入までに平均4分の時間を要するが、ローソンスマホレジだと平均1分になったそうだ。
「サービスの提供後、導入店舗の売り上げにおいてローソンスマホレジが占める割合は、朝の時間帯が約30%、お昼時で約40%に。年齢層は、30~40代の男性が60%を占めています。リピート率が高かったのもあり、都市圏を中心とした全国展開を決めました」(ローソン 広報)
キャンペーンで認知度向上と利用ハードルを下げる
全国の店舗に展開するうえで、同社の担当者は2つの課題を挙げた。「認知度」と「利用してもらうまでのハードル」だ。
ローソンスマホレジを利用するには、店舗へ行くまでに複数の準備を済ませなければいけない。具体的には、ローソンの公式アプリをダウンロードして「ローソンID」を登録後、クレジットカードなど支払い手段の情報を登録する必要がある。こうした最初に行わなければいけないフローに、顧客が面倒に感じてしまうことも考えられる。
この課題に対して、同社の担当者は「一度登録したら面倒な作業はなくなり、購買体験が便利になるため、ポイントキャンペーンにより、認知度向上と利用までのハードルを下げたい」と語った。事実、2019年5月31日までにローソンスマホレジで商品を購入すると、100円(税抜)の購入につき、「Pontaポイント」か「dポイント」が3ポイントもらえるキャンペーンを実施している。
私たちは「無人店舗」を作りたいわけではない
同社は、ローソンスマホレジやウォークスルー決済といったテクノロジーを活用した新たな取り組みにより、どのような顧客体験を提供したいと考えているのだろうか。
「私たちは“無人店舗”を作りたいわけではありません。新しいテクノロジーを活用することで省人化を図り、その分これまでよりもお客様とのコミュニケーションを充実させていきたいと考えています。目指しているのは、“人の温かさをより大切にした店舗”の実現です」(ローソン 広報)
気軽に買い物をする場所としてだけではなく、地域を支えるインフラに――。CEATECでの取材で聞いた言葉が印象に残っている。未来のコンビニが、どのように変わるかが楽しみだ。
img:ローソン